職能給の必要性
職能給は職務遂行能力により金額が決まるということであり、能力開発に基づいた人事制度には合致しますが、基本的に能力は経験により上昇するということを考えれば、職能給も上がり続けることになってしまいます。
また、同じ仕事をしている限り能力は低下しないということ、また、仕事が変わった場合、新しい仕事での能力がないにもかかわらず、高賃金を支払うということにより、整合性を欠く恐れがあります。
そして、一番の問題は同じ仕事をしても、担当する人によってコストが違ってくるということです。これは企業経営としては大きな矛盾が発生し、海外との価格競争に勝てないことになってしまいます。
営業や開発など職務遂行能力により職務価値(成果)が決まるような仕事であれば問題ありませんが、製造や一般事務のように本人の職務遂行能力ではなく組織の役割によって職務価値(成果)が決まるような仕事では大きな問題になってしまいます。
また、昇給や昇格は評価によって決まるのですが、職能給の場合、その評価の中心は職務遂行能力になると考えられ、その測定のための基準作りに大きな労力は使ってしまうことになります。
そのような矛盾やムダを避けるために、職能給という言葉を使用しない方が、都合が良いよいようです。
職能給という言葉のイメージから、同じ仕事をしていれば能力は下がらないので、賃金も下がらない、と判断されます。
また、能力の基準は「~できる」というようになりますが、実際にしていなくても、「できる」からよい評価になってしまうということがあります。
人事考課の方も、能力ではなくて行動や成果を中心に評価するようになっていますので、賃金の方も職能給というのはあまり、好ましいことではありません。