新賃金制度への移行 | 人事評価のQ&A

新賃金制度への移行

 成果主義導入をめぐる判例「ノイズ研究所事件」では、会社が賃金原資総額を減少させなかったことで合理性が認められたようですが、賃金体系を変えるにあっては、社員ごとに、「現行の月額固定給-新手当=新基本給」とし、新基本給を仮設定(あとで微調整)すれば問題ないでしょうか。

 

 仕事内容が変わらないのに、賃金制度が変わったからといって、賃金が上がったり下がったりすることは好ましいことではありません。

おっしゃるように移行前の所定内賃金の金額と移行後の金額が同じになるように設定することが必要です。

 
 その場合、手当などを差し引いて残った分を基本給と設定すると、確かに大きな問題は出ませんが、結局、移行前と何も変わらない(賃金の明細が変わっただけ)ことになります。もちろん、移行後の運用によって今後変わっていくので、「これでよし」ということでもよいと思います。

 

 もっと早く、新制度として機能させる場合は、手当などを差し引いて残った分をそのまま基本給とせず、基本給はあるべき姿で設定して、その差額を調整給でプラスマイナスして、移行時の賃金に合わせるという方法があります。この場合、その調整給を数年後には廃止します。

 

 例えば、新制度移行前、能力や職務価値が低いのに高賃金の人は、移行後、低い等級に格付けになり基本給が下がります。調整給を加算して一定期間保障しますが、いずれ調整給はなくなり減額になります。その逆で増額になる人も発生します。

 

 ご指摘の判例は、これらのプラスマイナスがあっても、賃金総額で減額にならず、また、調整給がはずれて賃金が下がる人に対しても、その期間中の努力により、減額にならない方法を示すこと、により合理性を認められた判決と記憶しています。もちろん、当事者によく説明して納得してもらうことが大事です。

 
 私は、このような方法で、より早く新制度の趣旨に合うようにしていくことが必要だと思います。いつまでも、調整給をつけたままで、既得権益を残していると結局は不公平になります。