あの日の夏 | 宇都宮イサト

あの日の夏

お盆の青森は一面りんご畑が広がっている

愛犬ジュリの最後に見た風景はきっと

青い空と眩しい太陽と果てしなく広がる津軽のりんご畑

そこででジュリは死んだ。

その日は女房と二人でホームセンターに買い物に行く予定だった。

もちろんジュリも一緒に。車を出して出かける時だった。

そこに向こうの両親と兄貴が一緒に行くと言い出した。今から思えば

そこで気を使ったのがまずかった。車の中が狭くなる上

犬も一緒ではと思い、ジュリに留守番をさせることにした。

いつもならジュリの目を見つめ「すぐに帰るからね!お留守番頼んだよ」って声をかける筈だった。

犬は十分理解出来るから。

しかし親戚が車に乗り込み急がされた感じの私は

その声もかけられずに、リードを繋いで水を置いて出かけてしまった。

なんか胸騒ぎがして早く戻りたかった。

2時間ほどで戻るとリードから外れたジュリが居ない。水の皿もひっくり返っていた。

きっとご主人様が急に居なくなり、不安になり見知らぬ土地でパニックになったのだろう。

後を追うとしたのかもしれない。

それからみんなで探し回った。近くには幹線道路が走ってる。よもやと思いながらも

無事でいて欲しい、ジュリージュリーと叫びながら探した。

胸の奥では言いようのない重苦しい、いやな予感がしていた。