思い出作りに…1回限りのデート作戦 | 生きているだけで十分 宍倉清則のいまのキモチ

思い出作りに…1回限りのデート作戦

ベースボール・マガジン社に入って、15年ぐらいたったころ。後輩A君がこんな話をしてくれた。


会社の「マドンナ」的存在がいて、その彼女がやめることになった。「ボク、ずっと、あの人が好きで」「うん、彼女はいいよね」と私。


A君「そのまま別れるのは寂しいので、1回だけでいいからデートしてください、って頼んだんです。1回だけでいいんです、って」。そしたら「1回なら」とOKしてくれたそうだ。


可能性がある、なしは突っ込まないでね。自分に置き換えて、考えてみよう。まったく興味のない女性から、同じようにお願いされたら、どうするか。


OKすると思うんだよね。それで喜んでくれるならって。1回だけ作戦。万が一、お互いに気に入って、続きがあれば、万々歳だし。


逆に、ずっといいと思っていても、会ってみたら、がっかりということもあるわけだし。


で、その時点で、私も社内に「あこがれの女性」Bさんがいたんです。いいなあ、と思って、10年ぐらいたつけど、部署が違うから、1度も話したことがない。


Bさんは女性としては非常に大柄で、アスリート。どう見ても、自分とは釣り合わない。


だから、1回だけ作戦を実行しよう、と思ったんです。幸い、私とBさんには共通の友人、女性のCさんがいました。


Cさんに事情を話したら「いいですよ。聞いてみます」「1回とはいえ、ダメなら、ダメでいいから。ダメなら、あきらめるから」と私。


OKでした! デートといっても、お互い忙しいので、夜、隣の「御茶ノ水」駅でお酒を飲んだだけ。Bさんは、私の名前も部署も、存在じたいを知らなかった。これだけ長くいるのに…。


そういう意味では作戦を実行して、よかったと思った。存在だけでも知ってもらえたので。


Cさんは数年前、異動に次ぐ異動となり「こりゃあ、やめるな」と思ったら、案の定、やめました。私より先に。


辞令を見たときは、ああ、もう、これで一生、彼女の顔を見ることもないなって。だから、お互いに若かったころ、1度とはいえ、デートできて、よかった、と、いま思う。いい思い出として、残っているので。


気のきいた「オチ」はないが、ちょっと続く。