ときおり、『智恵子抄』を読みたくなります。
何かに疲れたとき、
何もかもいやになったとき、
光が見えないとき、
そんなとき、『智恵子抄』を読むと、
なんだか力が湧いてくる。
もう少しやってみようか、なんて気になる。
なんだか明日を見たくなる。
そして、逢いたくなる・・・
「あなたはだんだんきれいになる」
をんなが附属品をだんだん棄てると
どうしてこんなにきれいになるのか。
年で洗はれたあなたのからだは
無辺際を飛ぶ天の金属。
見えも外聞もてんで歯のたたない
中身ばかりの清冽な生きものが
生きて動いてさつさつと意慾する。
をんながをんなを取りもどすのは
かうした世紀の修業によるのか。
あなたが黙つて立つてゐると
まことに神の造りしものだ。
時時内心おどろくほど
あなたはだんだんきれいになる。
『智恵子抄』(高村光太郎)より