先日、バイト先でブチ切れた。


私がブチ切れたのは何年振りだろう。

前回キレた時から、恐らく10年は超えている。


ブチ切れた相手は、高倉健とくしゃオジサンを足して2で割ったような、ちょっと強面のオッサン。

まあ、オッサンと言っても私より年下だ。


その人は、誰からも嫌われているオッサンだが、どれだけ怒鳴られようと私は今まで苦にした事は無かった。


私が怒鳴られた理由は、私にとっては常識的な事が、その人には非常識と感じるらしい。


まあ、そんな事は「所変われば品変わる」で、今の会社では不向きなのだろうと「すみません」と誤り、その人の指示に従ってきた。


その人は、自分の思うとおりになれば機嫌が治まるので、機嫌が治まればまた普通に話をして、コミュニケーションを測るようにしていた。


この日にしていた私にとって常識的な事とは、例えば。クレーンの吊荷の下には絶対に入らない。

しかしその人は、吊荷の下で平気で作業をする。

私が吊荷を見て安全を確認していると「何をボケ~と見とるんだ!」と怒鳴る。

職人時代に上方確認を徹底して叩き込まれて来た私からすれば、上方確認もしないで作業するなと言う所だ。


水中ポンプとサニーホースの締め方でも、職人時代に叩き込まれて来た締め方をすると「番線の締め方も知らんのか!」と怒鳴られ、職人時代に「絶対やるな」と教え込まれた締め方を教えられる。

・・・その締め方をすると、ホースが抜けたり水漏れするんだけど・・・

そのくせ、水が漏れると大変だからそんな縛り方では・・・と延々と説教が続くがポイントがずれてる。


ホースやワイヤーの巻き方一つでも違う。

私が教え込まれたのは「ヨリ」が入らないようにする巻き方。

時計回りに一回巻いたら、次はひねって反対周りに輪を作って裏返しにするようにして巻き、次はまた時計回りに、それを繰り返して蛇腹の様に巻いていく。

こうして巻くと、ワイヤーやホースに「ヨリ」が入らずに伸ばす事が出来るからだ。


この巻き方をしていたら「ワイヤー一つ満足に巻けんのか!」と怒鳴られ、「絶対にやるな」と教えられて来た「クルクル巻き」を始める。


クルクル巻きをすると伸ばす時にワイヤーにヨリが入り、伸ばす時にヨリがキンクになり損傷してしまう。


私が、会社でその事を言えない理由もある。

そうした事を知っているのは私しかいない。


知らない人にはどちらでも良い事である。


まあそれも、所変われば品変わる。

職長さんがそれでやれと言うのであれば、ハイハイと言ってやって来た。


そんな事で怒鳴られても、気にもならない。


しかし、先日そのオッサンは私にとっての一線を越えた。

仕事の指示も一切無しで上記内容で朝から怒りまくり、「お前、前の仕事で何を教わって来たんだ!」


はっきり言って、何にも知らない素人に言われたくない一言だ。

今の仕事の事で怒鳴られたり怒られたりするのは一向に構わない。

それは「教えられている」と言う事であり、腹を立てる様な事ではない。

しかし、前の仕事の現場に来たら何の役にも立たない奴が、前の仕事での事をどうこう言うのは許せない。


気付いた時には「じゃかあしい!このくそボケ!気に入らんのなら帰るわ!一人でやっとれ!」と怒鳴り、持っていた資材をオッサンに投げつけ、車から荷物を降ろして駅に向かっていた。


やっちまった~!・・・まあ良いか~!と思いつつ歩いていると、そのオッサンが引き止めに来た。

そこで、大きく深呼吸。

頭は冷静な状態に戻っていた。


冷静になると、私の悪い癖が出始めた。


この人の精神分析をして、この人が嫌われる理由が知りたくなってしまった。

とりあえず「指示も無く怒りまくるとは何事だ!」とだけ文句を良い、指示を出させる様に仕向けた。


そして分かった事がある。


この人には伝える能力が欠けていると言うか、認知力に問題がある。

上手く人に伝わらないから怒る訳だ。


それを確信したのは、水中ポンプの設置の指示だ。

私としては、言われた通りの設置をしたつもりなのだが、「本当に何も聞いていないな!」とまた怒り出した。


そして図面を書いて説明を始めたのだが、その図面が違う。



探偵が見た心の問題-図面


私は初日だが、オッサンは2週間通っている現場だ。


なるほど、認知している世界が違っている。

認知している世界が違えば、伝わる筈が無い。


この認知の違いでは、指示を受けた人は、真ん中の2台の置き方に苦慮する事になる。


この時に受けた指示は、この図面のように水中ポンプを置いていく事。

設置はオッサンがやる。


そこで、一つテストを兼ねて置いてみる事にした。

これは職人時代に培った一つの技術でもある。

「仕事は常にリカバリーを視野に入れてする、リカバリーを視野に入れて仕事をすれば、失敗出来ない所も見えてくる」


この図の縦と横の帯は鉄筋である。

その鉄筋の途中には開口部がある。


置き場に迷うのは、右から2つ目のポンプ。

鉄筋の右側に置くべきか左側に置くべきか・・・

そこで、オッサンの図面のように左側に、但し開口部の横に置いた。

その配置なら、例え右側だとしても30センチ手を伸ばせば容易に取れる位置である。


そして、オッサンの反応を見ることにした。


するとオッサンは、また怒りだして「何を聞いとるんだ!」と怒鳴りだした。


このテストで解かる事は、鉄筋の右でも左でも、手を伸ばす距離は同じであり、作業は変わらない、そうした客観的な視点を持っていない事。

これは空間認識である。

どちらでも変わらない事が分かれば怒る必要も無い。

それも認知である。


仕事が終わった後、図面の違いを指摘してみたが、現場を見ながら指摘しても、理解できなかった。


帰りの車の中でこの人が言った言葉。

「どいつもこいつも、話を聞かない奴ばかりで、皆俺の言った様に仕事をしない」

恐らく、皆この人の言った通りの仕事をしていたのだろう。

言われた通りの仕事をしたから、この人の思う通りの仕事にならなかったのだろう。



つまり、この人と共に仕事をするという事は、認知症の老人の介護と同じと言う事である。

恐らく、この人と仕事をした人は「理不尽」を感じていたと思う。


社長は、朝礼で大人だから好き嫌いなど言うなと言う。


しかし、これは好き嫌いと言うレベルの話ではない。

家族であっても、老人介護は介護疲れで鬱病を引き起こす事も多い。

それが他人で、しかも上司となれば、この人と共に仕事をする人の精神的ストレスは尋常ではない。

皆が、この人との仕事を嫌がるのは、自分の精神を守る為の防衛反応なのだろう。


この人の認知が疑われる事は他にもある。

この日は雨。


この人は「カッパは持ってきたか」とたずねて来た。

私はカッパは動きにくいので、雨具として防水ヤッケを使っている。

それが気に食わない。

この人にとって、雨具はカッパしかなく、他の雨具は許せないらしい。


サンダーのコマにしても同様の傾向が見られる。

サンダー(グラインダー)は、ダイヤ刃を使ったり、砥石を使ったり、刃を交換して使う。

ダイヤ刃と砥石ではセンターの穴の大きさが違うので、回転軸に取り付けられているコマを裏返して穴の大きさが違う刃を取り付けられるようになっている。


そのコマを裏返して使うと、サンダーが壊れると言って怒る。


この人にはコマは裏返して使う物と言う認識がない。


ポンプの件でも、一台が型枠を置いた為見えなくなっていた。

その時にも激怒していた。


物が置いてあれば、「その陰に隠れているかもしれない」と言う認識を持つ事が出来ないらしい。

物陰に隠れている事を教えるまで怒りは収まらない。


実にユニークな人だが、今後この人と組むのは願い下げだ。


ちなみにこの人、数店のパチンコ屋で入店禁止になっている。











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