186.静かな秋の土曜の午後~ふん…やっぱりお前馬鹿だな | かおり流 もうひとつの「宮」

かおり流 もうひとつの「宮」

「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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芸高祭を終え 10月末 茗禪堂の解体工事が始まった
「解体が始まったと聞いて 様子を見に来たついでに寄ったんだ」
ユルが久しぶりに俺の部屋を訪れた
「此処へ来たの 随分久しぶりだよな?」
「大学生は色々忙しいんだよ」
なんて言って 年上ぶって得意げに笑った

コン内官が運んできた紅茶を一口飲んだユルが
「ねえシン 僕ブログを始めようと思うんだ
もうすぐ描きあがる絵…良い感じでさ
描きあがったらそれを最初にUPするつもりなんだ
シンとチェギョンの絵なんだけど…
いいよね?」
楽しそうに 唐突にそう言った
「は?なんで…」
「なんでもないよ いいだろう? すごく良く描けてると思うんだよね」
「…それ…載せる前に見せてくれないのか?」
「ダメダメ!楽しみにしててよ」
「…どうしてもか?」
「いいだろう?」
何か思うことがるのか 妙に上機嫌で…
結局理由は明らかにしないまま ユルは殆どムリヤリ俺にうんと言わせた
なんだよ…茗禪堂の解体…反対だったんじゃないのか?
全く…俺を凹ませといてなんなんだよユル!


俺達三人の微妙な関係は 相変わらず面白おかしくネットに取り上げられた
驚いたことに
芸高祭で チェギョンの肩を抱くユルの姿までもが アンチ皇室サイトに上がり
泥沼の末離婚かと騒がれた
いったいどこで誰があの時写真を撮っていたんだ? まさか…イ・ミノ…
そんなわけないな…
アイツ…あの日以来 勝手に俺に親近感でも持ったのか やけに俺に絡んでくるんだ…
校内で遭う度 「よう イ・シン殿下 元気?」なんて 馴れ馴れしく肩に触れたり…
あんなのに懐かれるなんて 俺も地に落ちたな…

当然 捜査はするが…
俺はもうチェギョンの気持ちを疑ったりはしなかった
それには…ちゃんとワケが有った…


11月半ばに控えた 大学修学能力試験(スヌン)のために 公務も妃教育も最小限に控え 試験勉強に専念していた俺とチェギョンの休日 静かな秋の土曜の午後
試験勉強の合間に パビリオンの硝子の扉に背を凭せ 木枯らしに舞うように落葉の踊るテラスを横目で眺めている東宮妃シン・チェギョン
カシャリ…俺はまたひとつ脳内でシャッターを切った
銀杏の黄色い絨毯の上で昼寝していたチェギョンは綺麗だったし 落葉を眺め憂いを漂わす姿もまた良いが…
お前が哀愁を纏っていると つい 誰を想っているのかと 気に病んでしまう自分にはうんざりする
だから敢えて
「妃宮媽媽 ご機嫌はいかがかな?」と冗談めかして訊ねた
俺に視線を移し 大きく瞬きをするチェギョンは 本当に愛らしくて… ゴクリと息を吞む
邪な想いを打ち消すために 何か言わなくてはと考えを巡らせている俺にとって それは本当に唐突で 驚きだった

なんの前触れもなく彼女は
「あたし …殿下のこと…好きになっちゃったみたい」
そう言った
「え?」
「信じられないでしょう?あたしも信じられないんだよね」
ふわっと笑った

「다시말해/タシマレ」
聞き間違いかと思って なんとかそう呟いたのに もう一度同じことを言った
「んもう… 殿下のことが好きみたい です」
「사실인가?/サシリンガ?」
事実かと問えば…
「예…/イェ…」
と照れたように俯く

高鳴る胸に 落ち着け 落ち着け!早合点してはいけない この女の好きは俺の好きとは違うんだ!と言い聞かせる
第一今更だろう?今更俺を好きになったなんて言うのか?俺はずっとお前が好きなのに…
「ふん…やっぱりお前馬鹿だな」
それでも俺は さっきからずっと俯いたままの 馬鹿呼ばわりしたその女を腕に抱き寄せ 髪に頬ずりする
「くすぐったいよ」
その女が 俺の疼く胸に顔をうずめたりするから たまらず髪に口付ける
こっち向けよ
顔を見せろよ…

ドンッ!! おわぁっ!
突然 俺の胸を強く押し返したその女 シン・チェギョンが 俺を見上げる
いや…見せろと念じたのは確かだが…
俺を見つめるその目が これでもかと見開かれている…
髪に口付けたくらいで そんなに… 驚かなくてもいいだろう?
「なんだよ?なにも突き飛ばす事無いだろう?
好きになったってのは勘違いだったとでも言うつもりなのか?」
「ち…ちが…う… けど…」
けど?…けどなんだって言うんだ?
しきりに首を傾げるチェギョン… なんなんだよ全く… キスなんて今まで何度もしたじゃないか
お前が気付いて無いものも入れたら何度目だ?ふん…

でもまあ やっとほんの少し 前進か…?

 

 


その夜 星を観に行きたいと言い出したチェギョンを連れて 景福宮の裏山へ出かけた
俺がハンドルを握り チェギョンの膝には バスケット
バスケットの中には チェギョンがチェ尚宮と一緒に作ったキムパプ(海苔巻き)
温かいお茶の入ったポットも有る

広げたクッションシートの上に膝を抱えて座り 大きめのブランケットを二人で膝の上に掛けた
「えへへ」
空を見上げるチェギョンが笑った
「なんだよ」
「夜のピクニック 嬉しいな」
温かいお茶を啜る
胸のあたりにじわりと広がるのはお茶の熱とは違う熱…
「景福宮のすぐ裏なのにか?」
「それだって充分嬉しいよ~ こんなの 初めてだもん」
チェギョンは ずっと空を見上げたまま…
「そっか…悪かったな」
俺も空を見上げたまま言った
「え?なんで 悪くないよ 良かったんだよ?」
空を見上げたまま お前の顔を見れない俺を そんなに大きな瞳で覗き込むなよ…
「違うよ… 今まで 連れて来なくて悪かったなって言っているんだ
たったこれくらいの事で お前が喜ぶんなら もっと早く連れて来れば良かった」
目だけでチラリと様子を覗えば… 空に顔を戻してコクコクと頷いている
「…あ~…そうだね あたしももっと早く お願いすれば良かった」
いつからだろう いつ頃お前は 俺を好きになってくれた?
「これからは なんでも腹に溜めずに 素直に言えよ?」
意地悪く言って ツンと額を突く
「ちっ そっちこそね!」
ふっ
「…タメ口が自然になってきたな」
「え!?あ…その…ご…」
急に慌てて謝ろうとするから 遮るように言った
「いいよ そのままでいい… 普通に 思いついたままのお前の言葉で俺に何でも話せばいい」
「えっと…その…」
「いいって言ってるだろう?」
「うん…そうする…」
ブランケットを掛け直してやると ふわりと笑った
その顔があまりにも可愛くて 愛しくて 抱きしめたかったから…
そうした

「きゃぁ」
俺の腕の中で 小さく丸まったまま俯いてるチェギョンの頬に 口付けた
「で…殿下…」
困ったような声 顔も上げない…やれやれ…
「俺の事好きになったって言ったのは…嘘だった? それとも…気が変わったか?」
「そんなこと…!」
慌てて反論しようと顔を上げたチェギョンの唇に さっと 唇を重ねた
だけど… 彼女が益々身を堅くするのが感じられたから… すぐに放した
「ダメなのか?」
うん?と瞳を覗き込めば 頬をヒクつかせる
「ダメじゃないけど…////」
ダメじゃないけどなんだよ?
…くそっ…俺はこのままシートの上に押し倒したいくらいなのに…
好きになったなんて言ったって 結局 俺の想いには程遠いんだな… まあいいさ
もう二度とお前に嫌われたくはないからな…
気長に待つよ…
俺達は黙って肩を寄せ合い星を眺めた

 

 

 

今日もお読み頂き ありがとうございます
きゃぁ~っシンくん良かったね
でもまたなんで急にSideチェギョンをお楽しみに
…ちなみに くすっと笑える小話をひとつ
―アイツ…あの日以来やけに俺に絡んでくるんだ…
校内で遭う度 「よう イ・シン殿下 元気?」なんて…―
ここで
あれ“遭う”じゃなくて“会う”じゃないのと思うかもしれませんが
遭う=事故など好ましく無い事に遭遇するときに使う漢字です(笑)
だから敢えて“遭う”
チェギョンと同じクラスのイケ好かないあの男に
馴れ馴れしくされる事に心からムッとしてる王子病シンくんを感じて頂けるかと(笑)

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