114.帰宮~お帰りなさいませ チェギョン様 | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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韓国初めての方は是非 はじめまして から順に読み進めて下さい
前のお話→113.50周年の芸高祭Ⅲ~お仕置きだ…
このお話は前話に引き続きチェギョ目線です*星*


「ザマーミロ」
唇を離して あたしをそっと抱き締める仕草とは反対に シンくんはヒドイ事を言った…

鳴り止まない拍手と「ヒューヒュー」という嬉々とした男子達のヤジ
女子達の悲観する叫び声のなか 一礼し あたしの手を引いてズンズン歩くシンくんに引っ張られるように講堂を出た
「なんだよ…泣いてるのか?」
やっと振り返ったシンくんがあたしを見下ろして言った
泣いてる?泣いてなんか…
でも反論しようと シンくんを見上げたあたしの頬には 涙が流れてた…
何の涙なんだろ… あたしはこの人が好きなんだから…
三度目のキスに喜びの涙? 胸は重く苦しい 違うみたい…
愛情のないキスがショックで? そうなのかな…
だって…最初のキスだって二度目だって 愛情なんか無かったじゃない… なのに何を今更…
でも 今回はたくさんの人が見てた…
今までのとは…違う意味があった…
「ザマーミロ」って言葉が…その意味を物語ってる
そう
今のを見ていた人達には あたしはもうすっかり彼の物なんだと 決定的印象を与えた
誰も近付けなくなる…
彼の目的はそれだ…
新しいオモチャを誰にも盗られないように自分の物だと見せ付ける やっぱり彼は王子病
「泣くこと無いだろ…今更…
お前俺と結婚するんダロ?
随分前に やっぱりやめるの締め切ったダロ?」
なんだろう…妙に軽薄な言い方…らしくない感じ…呆気に取られるくらい…
そんなこと言わなくても こんなふうに扱われても…
あたしはもうあなたに囚われてるのに…
コクンと頷く… でも涙が止まらない
気まずい妙な間… 困ってる…?

「しょうがないな…今日はもう帰れ
ほら イギサが見てる…」
あたしはシンくんに手を引かれるままに昇降口に向かって歩き始めた
歩きながらシンくんが電話で手配した車はもう来てた
「彼女を送ってくれ」イギサさんと運転手さんに向けてそう言いながら開かれた後部座席のドアからあたしを押し込んだ
「家には誰か居るか?居なきゃ東宮殿に帰ってろ荷物は後で届けさせる」
あたしがコクンと頷くとドアを閉めた
東宮殿に行く気分じゃない…でもそっか…カギは教室で待ってるアルフが持ってる…
アッパは仕事だし…オンマとチェジュンは来てるはず…もしかして何処かからさっきの見てたかも…だったら電話しにくいな…
あたしは渋々掠れる声で「東宮殿に行ってください」と告げた…

イギサさんの連絡を受けたチェ尚宮お姉さんが 車寄せまで迎えに来てくれていた
「お帰りなさいませ チェギョン様」
今 お帰りなさいませ…って言った…
そっか…あたしは本当に もうほとんど ココの住人なんだな…
「ご入浴なさいますか?」
皇太子妃の部屋に通され 普通にお風呂を薦められる…
「はい…そうします…」
カウチに腰掛けてぼんやりと部屋を見回す どこもかしこも芸術的な皇太子妃の為のこの部屋
バスルームの準備が整うとチェ尚宮お姉さんが呼びに来てくれて 浴槽にたっぷり張られた芳い香りの温かなお湯に身を沈める
なんて贅沢なんだろう…こんなこと…うちでは毎日できないのに… 皇子は普通に毎日してるんだね…
また涙が浮かんできた… 色んな思いが頭の中をぐるぐる巡って…もう何も考えられなくなって…

気が付いたらまたあの ふかふかのベッドの上だった
「あれ?」
「気が付いたのか?」
ベッドサイドのスタンドを点けて…カウチに座って脚を組んだシンくんが 本を読んでいた
「あれ?あたし…お風呂に入ってたのに…」
本をパタンと閉じてカウチに置き 立ち上がったシンくんがベッドの中程に腰を下ろす
「心配するな…俺じゃ無い チェ尚宮と女官達が運んだんだ」
「?」
「覚えて居ないか… 風呂が長いからチェ尚宮が声を掛けたら返事が無くて… のぼせてたらしい 俺が帰った時にはもうベッドの中 診察も済んでたよ」
「あ…そうなんだ…ご迷惑掛けちゃったんだね…」
わ~ 恥ずかしいし…申し訳ない…
「気にするな…無事だったからもういい…
まあ…大事に至れば彼女達はクビにも成りかねないから…以後気を付けるんだな…」
あ… そうなんだ… そんな大事に…?
「腹が減ってれば粥を持たせるが…」
「今…何時?」
「もう間もなく日付が変わる頃だ」
「じゃあいい…」
暫く沈黙の間にシンくんは
あたしを観察するかのように じっと見つめた…
「?」
疑問符を送るあたしを見て ふぅと小さくため息をついてから立ち上がった
「明日は休みだ ゆっくり眠れ
俺ももう寝る…」
立ち去るシンくんの背中に 急いで言った
「ごめんなさい」
「何がだ?」
「えと…心配掛けて…」
振り返らずに彼はこう言った
「それだったら俺じゃ無くてチェ尚宮達に言うんだな…」
それだったら…?
もしかして何か怒ってて…あたしに謝らせたいの…かな…?
もしかして…
「それと…泣いたりしてごめんなさい…」
「ふん…どんなに悲しかろうが 皆の前では泣くなよ…皇室の仕来たりで 俺たちは感情的になったり 其れを露にしてはならないんだ」
シンくんは背を向けたままそう言うと 返事を待たずに部屋を出ていった

ドンナニカナシカロウガ…
彼は今までもこれからも ずっとそうしてきて そうして行くんだね…
あたしはやっぱり 悲しくて泣いたのかな… 少なくとも皇子はそう感じたって事よね…

あたしはスヒョンさんの言った言葉を思い出す
「僕は皇太子殿下の事 結構好きなんだけどな…放って置けない
チェギョンが守ってあげて欲しいな
家族と幸せな日々を過ごしてきた君なら 彼の救いになれるんじゃないかな…
この国の皇太子殿下だと意識せずに 幼馴染として 結婚のこと 前向きに考えてみたら?」

彼は…本当に歪んでる…
好きでも無いあたしに あんなたくさんの人の前で平然とキスなんかして しかも その直後「ザマーミロ」なんて無神経な事 言えるんだもの…
あたしは 胸に重くのしかかる彼の言葉を振り払いたかった
彼にとってキスに意味が無いのと同様 「ザマーミロ」にも 深い意味なんてナイんだ…
悪気なんて無いから 謝ってもくれないでしょう?
彼のジョークは超ブラックジョークで笑えないんだ
あたしくらい彼に囚われてないと…無理だよ…やっていけない…
あたしは ふかふかのベッドの柔らかな布団に包まれて 「彼の冷たい言葉を許す」と 呪文のように何度も呟いた


今日もお読み頂き ありがとうございます好
うるる…うるる皇子のばかぁ…なんであんなこと言ったのさ?
ですよね?
ごめんなさい…わけがありまして…

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