33.国際ブックフェア~本当に自由の無い身だな… | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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星初めての方はかならず はじめまして を お読みください 
前のお話→32.窓際の席から見えたもの~俺は所在無く 窓から視線を逸…


良く晴れた11月半ばの日曜の午後 俺は公務のために 江南にあるインペリアルパレスホテルへ向かった
今日の公務はホテルのコンベンションセンターで開かれる “国際ブックフェア”のオープニングセレモニーへの出席だ
昨年日本で大きな賞を受賞した作品の韓国語版が 先週発刊されたばかりの 俺の好きな日本人作家 江國香織女史も来韓し 出席されていた
俺の好む内容の公務なんていうのも久しぶりだった上に 好きな作家に会えるとは本当に驚きだった

「はじめまして お会いできて光栄です 皇太子殿下」
俺に握手を求め 彼女は綺麗な韓国語の挨拶をする
「とんでもない 僕の方こそ お会いできて光栄です
僕は あなたのファンなんです 本をたくさん読ませていただきました」
通訳を通して 俺の話を理解すると 軽くうなずいて
「ありがとうございます 光栄です」と
日本語で応えてくれ 韓国語に通訳されて俺の耳に届いたが… どうだろう?本当に伝わったのか? 第二外国語…日本語を専攻しておけばよかったかな…
「『きらきらひかる』『落下する夕方』『神様のボート』どれも好きです」
本のタイトルは全部日本語で覚えていたから 特に好きないくつかを日本語で言ってみた
「あら… よく御存じなんですね… 本当に読んでくださっていたとは…」
先程とは明らかに表情が変わった やはり社交辞令だと思っていたのか…
本当にファンなのだと理解してくれ 新刊にサインをいれてプレゼントしてくださった

「公務で こうやってお会いできるなんて 思ってもみなかったので とても嬉しい
自由の無い身故 新刊もまだ入手できてなくて 本当にありがとうございます」
通訳から俺の話を聞きとると 彼女は気の毒そうに眉をひそめた
「あら…お若いのに…自由が無い身ですか… そうかもしれませんね…
私の本くらいでしたら いつでも差し上げます 押しつけがましくなければ 新刊をお届けしますが?」
「本当に?! 嬉しいな 日本語も学びたいので 次の作品を日本語のまま送っていただけませんか?」
「うふふ じゃあ そうさせていただきます 早速帰ったら送りますね」
俺は皇太子らしい振る舞いうんぬんをつい忘れ 皇太子の面をはずし 一高校生イ・シンに戻っていたかも…
興奮気味の高校生皇太子が幼く見えてしまったかもしれないな…まずいな…
だけど今日はもう 高揚した気持ちを押さえられない…

満ち足りた気持ちで インペリアルパレスホテルを後にして景福宮への道すがら 公用車の窓から外を眺める と…

ハラリ… ハラリ… ハラリ… ん? これは… 雪?
随分冷えるとは思っていたが…そうか… 今年最初の雪だ
ふいに ギョンが俺の机の上に開いた雑誌の写真を思い出す
初雪デートスポット特集…だったか?
「キム内官 少し…漢江を眺めて帰る時間は無いか?」
俺は腕時計を見る17時40分
クリスマスイルミネーションは初雪の日の18時に点灯するとか言ってたな…

「はい このあとは宮に戻り大殿の皇帝陛下へ本日のご公務の報告をされた後 東宮殿に戻って夕水刺となりますので お時間は特には…」
「そうか じゃあ少し 聖水大橋付近を 廻って行こう」
漢江には二十七の橋が架かっていて ソウル市内には二十一の橋が有る
ギョンの雑誌のクリスマスイルミネーションがどの橋付近のものかはっきりはしないが
別に初雪デートでも無いんだし どこだってかまわない
聖水大橋は 普段からライトアップされる 美しい橋だ

公用車から眺める街並みは 良く見ると既にクリスマス商戦のディスプレイで溢れていた
ふっ いつからこんな風に街がクリスマスカラーで彩られていたんだろう
全然気付きもしないんだな俺…
今頃インはヒョリンとデートか? そうだ ファンもきっとデートだな…

俺は少し雪に触れてみたくなった
「少し降りても構わないか?」
「殿下…それは為りません… 混乱を招きます…」 渋るキム内官
「周りを良く見ろ…恋人達ばかりだ…独り者の僕など誰も見やしない…少しでいい…ちょっと風に当たりたいんだ」
「しかし…雪も降ってまいりました…」 そうさ だから降りると言ってる
「キム内官…五分で良い」
「…では… 公園の駐車場に車を止め イギサを先に降ろします 車から遠く離れないとお約束下さいますか?」
「ああ…そうする…」いちいちうるさいな…そんなこと当たり前だろう…
俺はさっき自ら 日本人作家の江國香織女史に言った言葉を思い出した
「まったく… 本当に自由の無い身だな…」


駐車場にイギサが配置され 俺は車を降りた
公園の入り口が見える その奥には 大きなモミの木がにぎやかに装飾されたクリスマスツリーが聳えている だが俺は入ることを許されない身…
ハラリハラリと舞う粉雪が…頬に触れる…
シクリと…ほろ苦いような侘しさが俺の胸に広がっていくのを感じる…

手をつないだ恋人達がみな一堂に 間もなくライトアップされるであろうツリーを目指して歩いていく細い小道を 一組のカップルが逆流してきた
なぜ反対向きに? 俺は何気なくその二人へ視線を送る


今日も読んで下さって ありがとうございました
お話には以前からちょくちょく 実在するホテルのや橋の名前を用いてますが 地図や検索でイメージしながら書いています 漢江の橋の数なども 彼らが高校一年生の頃の韓国の情報ではないので 若干食い違いもあるかと思いますが
AホテルとかB美術館と書くより印象が良く 韓国ドラマ感やお話の雰囲気を損なわない目的のためです 方向は一応すり合わせたつもりですが… 違ってもどうか 大目にみてください
ちなみに
江國香織さんも実在する日本の作家さんで色々な賞を取っています
読書家のうりチュ・ジフンssiの愛読作家のひとりで… ありえないようなストーリーの中に妙にリアルな表現を感じるところが好きだと いつかのインタビューでも答えていましたね…
彼を知るより前から 私も江國香織さんの本はとても好きでたくさん読んでいましたから
彼の感想にすごく共感出来て嬉しかったです
それから
インペリアルパレスホテルには 実際に誇大なイベントや国際会議などが開催される コンベンションセンターという広い空間が実在します
公園はどこにしようか迷った末に決められなかったので お暇があれば地図でもご覧になって 橋の名前から近くの公園を想像してくださいネでは

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★ 次のお話は明日30日
朝8時18分→34.まさかのWデート?!~実は俺 チェギョンが好きなんだ
ええっっ!ビックリ!