「ノルウェイの森」永沢さんとの出会いー村上春樹も驚く豪胆さと頭のよさ | 日本ファミリーオフィス協会

「ノルウェイの森」永沢さんとの出会いー村上春樹も驚く豪胆さと頭のよさ

小説「ノルウェイの森」というと、私には永沢さん(Sさん)ということになるのだが、村上春樹とSさんは確かにこの小説の舞台となった目白の「和敬塾」で知り合った。同じ神戸出身なので、よく話をしたことは容易に想像できる。但し、あくまで小説なのでかなりの脚色がある。例えば永沢はプレイボーイだったこととかだ。


実際のSさんは極めて堅物だ。しかし、かなりの茶目っ気がある人だ。1993年夏に私が北京でSさんに会ったときに、当然どこかで待ち合わせをしなければならない。顔もわからないのに困ったものだ。私はその日の朝に北京のホテルから大使館に電話をして、Sさんに伺った。午後6時に北京飯店のロビーはいいのだが、目印は何もない。私は、「やはりノルウェイの森に描かれているように相当なハンサムな人ですか」、とおそるおそる聞いた。Sさんは、「その通りで身長は180センチ」というのだ。


まあそこまで分かれば、いくら往来の激しい北京飯店でも恐れることはない。必ず会えると思って、午後5時55分に北京飯店のロビーについた。そこにはいくら待ってもSさんらしき人はいなかった。ところが、やはり身長180センチでかなり体格のいい日本人はいたのだ。まさかと思ったが、一応お声をかけたらSさん本人だった。私はかなり動揺したものの、ハーバードの先輩でもあるので「さすがに村上春樹が認めたようにハンサムですね」と申し上げた。


まあ小説は小説で、容姿は主観が入るものだ。人によって見方が分かれることは言うまでもない。しかし、できる人は豪胆だなと改めて認識し、自分自身のふがいなさを反省することしきりの一日となってしまったのだ。