終わりよければ全てよし。 (前編)
12月某日、万事屋にて。
ジャンプを読みながら寝転がる銀時に、掃除中の新八。
そして、TVを食い入るようにみつめる神楽。
TVでは、間近に迫ったクリスマスの特集が流れていた。
「銀ちゃ~ん。今年もサンタさん来てくれるアルか?」
「あ?サンタ?・・・お~お~、いい子にしてたら来てやるってよ。」
「マジでか!私今年もいい子にしてたネ!川で溺れてる子猫を助けたり、道に迷ってたおばあさんを冥土に案内してあげたり!」
「神楽ちゃん・・・サラっとヒドイ事してない?」
「まぁ、来てくれるんじゃねぇの?」
「きゃっほーい!」
この時、サンタが来てくれると言う事に浮かれて喜んでいる神楽は気付いていなかった。
銀時と新八がアイコンタクトしていたことに・・・
銀時は新八と視線を合わせたまま小さく頷き、こう切り出した。
「んで、今年は何お願いしたんだ?」
「秘密アル!」
その言葉に、2人は少し焦る。
「ど、どーせ、酢こんぶ1年分とか肉まんだろ?」
「いつまでもそんなガキじゃないネ!今年はちょっと大人な物をお願いしたアル!」
「大人な物・・・?・・・ぐはっ!(殴)」
「何想像してんだこのエロメガネェェェ!これだから思春期のチェリーボーイは嫌アル!」
「ちょ、神楽ちゃん!?僕何も言ってないでしょ!別に変な事とか想像してないからね!?」
「顔がニヤついてたネ!キモイアル!しばらく私に話しかけないで。」
「だから違うって言ってるでしょ!」
「あ~あ~、もう、うっせーよお前ら。騒ぐんなら外でやれ外で!」
「嫌アル。寒いアル。」
「じゃあ大人しくしやがれ!そんなに騒いでたらサンタも来ねぇぞ!」
「・・・来なかったらお前のせいだからな、ダメガネ。」
「何さりげなく僕のせいにしてるの・・・」
ゴタゴタが収まり、再びアイコンタクトをとる2人。
そして、また切り出した。
「で?結局、何お願いしたんだ?」
「秘密って言ってんだろ、この天パ。」
「あ゙ぁん?お前に天パの何がわかるんだよ!ストレートのお前に何がわかるんだよ!」
「ちょ、銀さん落ち着いてください!」
「こんなダメガネと天パと一緒にいたらうつってしまうネ!定春~、散歩行くアルよ~。」
「わんっ!」
(ガラガラ・・・ピシャッ)
神楽が出て行った後の万事屋には、疲労と落胆の空気が漂う。
「はぁぁ・・・どうする、ぱっつぁんよォ。」
「どうしましょうね、銀さん。」
そもそも・・・何故2人がこんな事になっているかと言うと・・・
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11月25日・・・クリスマスのちょうど1ヶ月前。
銀時と新八は、ある人からの電話でファミレスに呼び出されていた。
「何の用事なんですかね?」
「さぁな。一応依頼らしいんだけどよォ。」
「依頼・・・やっぱり神楽ちゃ・・・」
「待たせてすまない。公国軍での仕事が長引いてしまってな。」
現れたのは・・・神楽の父、星海坊主。
「こんにちは、星海坊主さん。」
「お~ハゲ、久しぶりだな。」
「オイ、若造。俺のどこがハゲてるって?フサフサじゃねぇか!」
「ヅラなんだろ、それ。つーか、この前までウスラだった奴がフサフサになる訳ねぇじゃねぇか!」
「てめぇ!今のうちだけだぞ、強気でいられるのは!30過ぎ・・・」
「まぁまぁ、落ち着いてください、2人とも!それより、坊主さん!依頼って何なんですか?」
「だから、坊主さんって何?大の大人に坊主さんって・・・まぁ、いい。お前らに頼むのも癪なんだが・・・来月はクリスマスがあるだろ?神楽ちゃんが欲しい物を聞き出して、プレゼントしてやってほしいんだ。もちろん、サンタからのプレゼントとしてな。」
「坊主さん・・・」
「今まで親らしいことは何一つしてやれなかった。今年はやっと余裕が出来たんでな。俺がしてやれればいいんだが、忙しくてそうもいかない。一緒にいるお前らなら、どうにかできるだろ?」
「ったく、しゃあぇねな。ま、アイツも喜ぶだろうし、引き受けてやるよ。」
「ふっ・・・じゃあ、これで買ってやってくれ。それじゃあ俺は仕事があるんでな。くれぐれも変な気起こして、神楽ちゃんに手ぇだすんじゃねぇぞ?」
「俺ァそんなマニアじゃねぇよ。ガキには興味ねぇ。でもま・・・せいぜいアンタの代わりくらいにはなってやるさ。」
「若造が言うじゃねぇか。」
「坊主さん!神楽ちゃんに会っていかなくていいんですか?」
「あぁ・・・今日会った事も秘密にしておいてくれ。じゃあ、頼んだぞ。」
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銀時と新八は再び顔を見合わせ、ため息をついた。
「どうにかうまく聞きだす方法はないですかね?」
「んなもんあったらとっくに・・・ああ!」
「何か思いついたんですか!?」
「今日、ジャンプの発売日じゃねぇか!ちょっとコンビニ行ってくらァ。」
「ちょっと、銀さん!真面目に考えてくださいよ!」
「あ゙ぁ゙?考えてるよ、俺ァ。アレだアレ。お前の姉ちゃんにでも頼めばいいじゃねぇか。女同士なら神楽も教えんじゃねぇの?」
「そっか!姉上に頼めばいいんですよね!まだ家にいるだろうから・・・今から行きましょう!」
「俺も?嫌だよ、面倒くせェ。俺はジャンプ買いに行くの!今週はハンガー×ハンガー載ってんだよ。続き気になって仕方なかったんだよ!」
「そんなの帰りにでも買えばいいじゃないですか!ほら、行きますよ銀さん!」
「オ、オイ・・・!」
新八にひっぱられ、仕方なく2人揃って恒道館へ向かった。
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「あら、新ちゃん。それに銀さんまで。どうしたの?2人揃ってこんな時間に。」
「ちょっと姉上に頼みたい事があるんです。」
「なぁに?私に出来る事なら引き受けるわよ?」
「神楽ちゃんの事なんですが・・・」
「神楽ちゃん?どうしかしたの?」
「実はよォ・・・」
銀時は事の経緯を話した。
「なるほど。そうだったの・・・」
「で、悪いんだけど頼まれてくんねぇか?」
「神楽ちゃんは私にとって妹みたいなものだもの、役に立てるなら喜んで引き受けるわ!」
「姉上!ありがとうございます!」
「すまねぇな。」
「じゃあ、神楽ちゃんに家に遊びに来るように伝えてもらえるかしら?」
「わかりました。」
「おし、じゃあやる事やったし、俺は万事屋に戻んぜ。」
「あ、じゃあ僕も戻ります。」
「あら、もっとゆっくりしていけばいいのに。最近、お菓子作りにハマっててね。プリン作ったんだけど、よかったら食べていかない?」
「え゙っ・・・いやいやいや、俺ちょっとこの後仕事入ってんだわ。折角だけど、また今度にするわ・・・はは・・・」
「ぼ、僕も予定入ってるんですぐ行かなきゃいけないんです・・・あはは・・・」
「そうなの・・・残念ね。でもプリンだから持って帰れるわね。神楽ちゃんの分も持って行ってくれるかしら?ちょっと待ってて!」
「い、いや!俺達ほんと急いでるから!すぐ行かなきゃなんねぇからさ!」
「そ、そうなんですよ!忙しいんでまた今度・・・」
慌てて帰ろうとする2人の目の前に・・・
(ダンッ!)
薙刀がとんできた。
「ちょっと待てって言ってんだろ、コラ・・・!」
「す、すいません・・・」
「す、すいません・・・」
2人は大人しく、プリン(・・・いや、アメーバのようなドロドロとした黒い物体)を持ち帰る事にした。
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万事屋への帰り道・・・
「銀さん、どうしましょう・・・これ・・・」
「知らねぇよ。お前が食えよ。慣れてんだろ?そういう物体には。」
「嫌ですよ!これ以上目が悪くなったらどうするんですか!銀さんこそ、甘いもの好きでしょ!?」
「俺はプリンは好きだが、それはプリンじゃねぇ!毒物だ!まだ死にたくなんてねぇよ!」
2人がプリン(・・・お妙曰く)を押し付けあっていると・・・
「お?旦那じゃねぇですかィ。」
「こんにちは~!」
「あ、沖田さんに山崎さん。見回り中ですか?」
「まぁ、そんなとこでィ。それより・・・どうかしたんですかィ?」
「いえ、実は・・・」
話し始めた新八の言葉を遮る様に、銀時が言う。
「・・・なぁ、お前らプリン食わねぇか?」
「ちょ、銀さん!?」
「プリンですかィ?俺は甘い物食わねぇんで、遠慮しときやす。」
総悟の言葉を聞き、銀時は山崎に視線を移す。
「僕、プリン好きなんです!くれるなら貰いますけど・・・旦那が甘い物食べないなんて珍しいですね?」
「ん?・・・ま、まぁな・・・じゃ、遠慮しないで貰ってくれや。」
新八の手から箱をとり、山崎へ渡す。
「ありがとうございます!」
そう言って、おもむろに箱を覗く山崎。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・だ、旦那?コレ・・・は?」
「プリン・・・だそうだ。」
「もしかして・・・」
「すいません山崎さん・・・それ、姉上が作ったんです・・・」
「えェェェ!?お妙さんの手作りですかァァァ!?」
「へぇ~。こんなプリン初めて見ましたぜィ。人一人ぐらい、容易に殺せそうな代物ですねィ。」
「旦那!僕やっぱり遠慮します!受け取れません!死にたくないんで!」
「まぁまぁ・・・大丈夫だって!見た目ちょっとアレだけど、味はイケるかもしんねぇよ?」
「いや、無理です!そんなに言うなら旦那が食べればいいじゃないですか!」
「俺は・・・アレだ。医者から止められてんだよ。甘い物控えろって言われてんだよ。」
またしても始まる、プリン(・・・名ばかりの)の押し付け合い。
そこに総悟が口を挟む。
「みんな食わねぇんなら、俺が貰ってもいいですかィ?」
3人は一斉に総悟の方を向いた。
「お、沖田さん・・・!?」
「え、マジで?」
「沖田隊長!?」
「そのプリン、食わせてやりたい奴がいるんでさァ。」
「た、隊長!ダメですって!さすがにコレは本気でヤバイですって!」
「心配いらねぇよ。ちょっと・・・試すだけでィ・・・」
黒い笑みを浮かべる総悟を止められる者などいるはずもなく・・・
プリン(・・・劇薬)は真選組へと行き先を変えた。
「大丈夫ですかね?・・・土方さん。」
「はは・・・マヨネーズかけりゃ、大丈夫なんじゃねぇの?」
2人は無言で万事屋へと歩を進めた。
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後日、山崎に聞かされた話によると・・・
真選組に持ち込まれたプリン(・・・ダークマター)は、総悟の手によって土方に出されたものの、うっかり口を滑らせて『お妙が作ったプリン』であるをバラしてしまった山崎のせい(お蔭?)で、土方毒殺計画は失敗に終わったらしい。
だが・・・その山崎のせいで、被害にあった者が1名。
『お妙が作ったプリン』に反応する者と言えば・・・真選組局長 近藤勲。
どこかからその話を聞きつけて、冷蔵庫に入っていた残りのプリンを食べてしまったようで・・・
暮れの忙しい時期に、数日間入院する羽目になったことは言うまでもない。
だが、本人的には幸せなクリスマスが過ごせたんじゃないだろうか・・・と、その話を知る誰もが思うのであった。
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2人が万事屋に戻ると、神楽は既に部屋にいた。
「あ、神楽ちゃん。帰ってきてたんだ。」
「お前ら2人してどこ行ってたネ?」
「え・・・えっと・・・ちょっと仕事だよ。ね、銀さん?」
「お、おう・・・」
「ふーん。しっかり稼いでくるヨロシ。」
「お前も働けよ・・・。あ、そうだ!神楽ちゃん、姉上がね?家に遊びにおいでって言ってたよ。」
「姉御が?なら、今から行って来るアル!夜ご飯の準備しとけよ、新八ー。」
(ガラガラ・・・パタン)
「上手く聞き出してもらえるといいですけどね。」
「大丈夫なんじゃねぇの?懐いてるみてぇだしよ。」
「そうですよね。」
「あ゙!」
「どうしたんですか?」
「ジャンプ買ってくんの忘れた!ちょっと出かけてくるわ。後よろしくなー。」
(ガラガラ・・・パタン)
「アイツらほんとに仕事する気あんの?」
深くため息をつきながら、洗濯物を取り込む新八だった。
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翌日。
銀時がジャンプを読んでいるところに、新八が出勤してきた。
「おはようございまーす。」
「おー、新八か。」
「神楽ちゃんはいないんですか?」
「定春いねぇし、散歩じゃねぇか?」
「そうですか。じゃあ、今のうちに・・・。あの、昨日の事なんですけど・・・」
「おォ。何欲しがってるって?」
「それがですね・・・姉上も教えてもらえなかったらしいんです。」
「あ゙ぁ?」
「何か、よほど秘密らしくて・・・“大人な物”って事だけしか言わなかったみたいです。」
「おいおい、どうすんだよ新八?」
「そんなこと僕に聞かれても・・・。他に方法探さないとダメですね・・・」
「・・・ったく、何だよ“大人な物”って。」
「神楽ちゃんにとって“大人な物”・・・」
「あ、アレか?ブラジャーか?いや、でもアイツにはまだ必要ねぇだろ。」
「でも神楽ちゃんも女の子ですからね。ブ・・・ブラジャー・・・」
「ぱっつぁ~ん。鼻の下のびてんぞ。何想像してんだ、このエロメガネ。」
「だっ・・・誰も想像なんてしてませんよ!銀さんこそ変なこと想像してたんじゃないんですか!?」
「俺はガキの体なんかに興味ねぇよ。・・・はぁぁ・・・どうすっかなぁ・・・」
「また振り出しに戻っちゃいましたね・・・」
アテにしていたお妙でも聞きだすことが出来ず、頭を抱えて悩んでいると・・・
「ただいまヨ~。」
神楽が定春の散歩から帰ってきた。
「あ、神楽ちゃん。おはよう。」
「やっと来たアルか、新八。早く朝ごはん作るヨロシ。」
「何で僕が!?神楽ちゃんの当番じゃないの!?」
「ガタガタうるさいアル。私これからやることあるネ。」
「やることって・・・」
「絶対覗くんじゃねぇぞ。」
そう言って、神楽は隣の部屋に篭ってしまった。
「とりあえず・・・飯作れや、ぱっつぁん。」
「ちょ、銀さんまで!?・・・ああもう、わかりましたよ!」
文句を言いながら台所へ向かう新八を横目に、銀時は神楽が篭っている部屋の襖を少し開けて覗いてみた。
すると・・・どうやら神楽は誰かに手紙を書いているようだった。
父親に向けての手紙だと思い、襖を閉めようとした銀時の目に映ったのは・・・
『サンタさんえ。』の文字だった。
(サンタに宛てた手紙書いてんのか・・・。つーことは、あの手紙を読めば何が欲しいのかもわかるんだな!)
そう思った銀時は、気づかれないようにそっと襖を閉めて台所へ向かった。
「新八!」
「何ですか?ご飯ならまだ出来ませんよ?」
「違ぇよ!大人な物の正体がわかるかもしんねぇんだって!」
「え!?ほんとですか!?」
「今な、ちょっと覗いてみたら、神楽がサンタに手紙書いてたんだよ!だからそれを読めば・・・」
「なるほど!それなら何とかなりそうですね!」
「とりあえず、お前は神楽を連れ出せ。その隙に俺が探しとっから。」
「わかりました!」
そこへ、神楽の声が届く。
「新八~。飯まだアルか~?」
「えっ!あっ・・・い、今出来るから・・・もう少し待ってて!」
「これだからお前はいつまでたっても新八アル。私もうお腹ペコペコネ!」
「いや、名前関係ないから・・・」
「飯食い終わったら、実行するぞ。」
「はい!」
新しい方法が見つかり、気合いの入る2人だった。
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朝ご飯の片付けも終わり・・・早速行動にうつる新八。
「ねぇ、神楽ちゃん。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
「何アルか?」
「実はね、きららちゃんにクリスマスプレゼントあげたいと思ってるんだ。でも、どんなものが良いのかわからなくて・・・神楽ちゃん、よかったら見立ててくれないかな?」
「下心見え見えアルな。」
「い、いや・・・下心とかないから!純粋に友達としてプレゼントしたいと思ってるだけだから!ね、お願い!」
「嫌アル。キモイアル。」
「なっ・・・!だから違うって言ってんだろうがァァァ!どこがキモイんだよ!」
「まぁまぁ、ぱっつぁん。落ち着けって。神楽も協力してやれよ。アイドルオタクが男になれるチャンスかもしれねぇんだからよ。」
「ちょ、銀さんまで何言ってるんですか!僕は別に・・・」
「しょうがないアルなァ。これだから男はダメネ。ほら、さっさと行くアルよ~。」
玄関に向かう神楽を見て、顔を見合わせる2人。
「頼みましたよ、銀さん。」
「おう、任せとけって。」
「じゃあ、行ってきます。」
(ガラガラ・・・パタン)
玄関が閉まると同時に、銀時は神楽の寝室・・・押入れを明けた。
そして、布団をめくり手紙を探す。
だが・・・手紙らしきものは見当たらない。
枕の下や、敷布団の下も探してみたが・・・やはり見つからず。
(っかしいなァ。どこに隠したんだアイツ・・・)
その後も、家中隅々まで探してみたが、結局見つけることは出来なかった。
「ヤベェなァ、オイ。最後の望みだってのによォ・・・。しかもそろそろ帰ってくんじゃねぇか?」
焦りだした銀時に近づく大きな影。
「わんっ。」
「何だよ!今はお前と遊んでる暇なんてねぇんだよ。アッチで大人しくしてろ!」
「わんわんっ。」
「るせーなァ!大人しくしてろって・・・」
そう言いながら見た定春の口には、一通の手紙が銜えられていた。
「お前コレ、もしかして・・・」
「わんっ。」
「フッ・・・お前も神楽の喜ぶ顔が見てぇんだな。」
「わんっ!」
定春から手紙を受け取り、銀時は封を開けた。
サンタさんえ。 ことしもわたしはイイコにしてました。 だからプレゼントください。 きょねんは肉まんだったけど、ことしは刀×ヲがほしいです。 こなかったら、ひげむしります。
かぐらより
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手紙を見つけたのはいいが・・・ちょうど欲しがっているもののところだけ、解読不能になっていた。
「・・・え?刀×ヲって何?何でここだけ暗号みたいになってんの、ねぇ?」
そしてそこに運悪く、新八と神楽が帰ってきた。
「ただいま~。」
「ただいまヨ~。」
「うわっ!定春!これ元の場所に戻して来い!」
急いで手紙を封筒にしまい、定春に渡す。
そして、何事もなかったかのようにジャンプを読み始める銀時。
「お~、随分遅かったな。いいもん見つかったか?」
「はい。綺麗な写真立てがあったので、それにしました。」
「何だよ。指輪とかネックレスとかの方が良かったんじゃねぇの?」
「そ、そんな・・・!恋人でもないのに・・・。それに、僕の所持金じゃ足りませんよ!」
「女はなァ、キラキラしたモンが好きなんだよ。そんなんガキでも喜ばねぇぞ?」
「写真立ての方が絶対いいアル!私が選んだんだから間違いないネ!」
「あ?神楽が選んだのか?お前にしちゃあ、普通なモン選んだじゃねぇか?」
「これだからおっさんはダメネ!女の子の気持ちをまったく理解できてないアル!」
「当たり前だろ。おっさんと女の子なんて対角線上にあるようなモンなんだぞ?つーか、俺ァまだおっさんじゃねぇから!」
「おっさんになるほど、自分のおっさん具合に気付かないアル。銀ちゃんももう末期ネ。」
「んだと!俺のどこがおっさんなんだよ!言ってみろよ!」
「・・・全部。」
「神楽、てめぇ!」
「もう2人とも!いい加減にしてくださいよ!神楽ちゃん、言い過ぎだよ!銀さんも大人気ないです!ほら、お茶でも飲んで落ち着いてください。」
新八のお蔭で言い争いも終息に向った・・・かのように見えたが・・・
「・・・新八のクセに。」
「・・・新八のクセに。」
と言った2人の言葉で、今度は新八も含めた3人での言い争いが始まるのだった。
━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━
そして翌日の夜。
神楽が新八の家に泊まることになっていたので、新八は万事屋に泊まっていた。
もちろんこれは作戦会議を開くためのもので、お妙にも協力してもらっている。
「・・・で、コレが問題のサンタ宛ての手紙なんだけどよ・・・」
「ほんとだ。ちょうどここだけ何て書いてあるのか読めませんね・・・」
「これじゃあサンタも来れねぇよ。何だよ“刀×ヲ”って。何の暗号だ?」
「うーん・・・漢字ではなさそうだし・・・平仮名か片仮名ですよね、きっと?」
「ヲって、片仮名のヲか?だとしたらオと間違って使ってんじゃねぇか?」
「片仮名なら・・・刀は・・・カですかね?×は・・・」
「コレってアレじゃねぇか?よく見んだろ?沖×土とか、坂×高とか・・・」
「見ませんよ!ってか、銀さん何でそんなの知ってるんですか!?」
「い、いや・・・違うよ?別に銀さんがそういう趣味とかじゃないからね?違うからね?ほんとに。ほら、新聞とかによく書いてあるんだよ・・・」
「・・・どんな新聞だよそれ。」
「そ、そうだとしたら、“カ×オ”って事じゃねぇか?カは神楽のカで、オは・・・お父さんのオ?」
「銀さん、何気にその話放送コードギリギリですよ・・・。それに、神楽ちゃんは坊主さんのことパピーって呼ぶじゃないですか。」
「だよなァ・・・オの付く奴、オの付く奴・・・」
「オ・・・沖田さん!?」
「あぁ、それだそれ!大人な物って彼氏のことだったんじゃねぇか?」
「でも、神楽ちゃんと沖田さんって犬猿の仲ですよ?顔合わせればいっつも喧嘩してるし。」
「喧嘩するほど仲がいいって言うだろ。案外似合ってるんじゃねぇか?あの2人。」
「そうですけど・・・どうやってプレゼントするんですか?沖田さんにその気がなかったらどうにもなりませんよ?」
「大丈夫だよ。アイツも案外神楽のこと好きだって。」
「そうなんですか?」
「ああ。銀さんに任せなさいって。」
不安気な顔の新八をよそに、銀時は満面の笑みを浮かべていた。
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