マンチェスター初日 | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

12月14日19:30(日本時間12月15日4:30)、マンチェスターでのレッチリサポートアクト初日。

セットリストは、

1.BABYMETAL DEATH、2.META!メタ太郎、3.Catch Me If You Can、4.メギツネ、5.KARATE、6.ギミチョコ!!

なんと、2曲目に「ド・キ・ド・キ☆モーニング」に代わって「メタ太郎」!

まだインスタ動画しか見ていないので詳細はわからないが、パンパンに観客が入った大会場に、三人の澄み切った「メ~タ~たろ~メ~タ~たろ~」という声が響き渡っている。

閉塞状況の資本主義発祥の地に、水戸黄門か、甲子園か、はたまたウルトラマンかという「メタ太郎」。

やっぱり全体主義は嫌だぜ、ニコニコしながら、メタルのパワーで生まれ変わるのさー。

さすがBABYMETAL、斜め45度上ですな。

 

マンチェスター・アリーナは収容人員21,000人の、イギリス最大の室内競技・イベント会場。

東京ドームのような屋根付き野球場がないヨーロッパでは、例えばマンチェスター・ユナイテッドのホーム、オールド・トラッフォード(75,000人収容)や、FAカップが行われるサッカーの聖地ウェンブリー・スタジアム(90,000人収容)のように、大人数を収容するのは野外スタジアムになる。だから、BABYMETALがウェンブリーでやったといっても、スタジアムじゃなくてアリーナでしょ、みたいな揶揄をする奴が出てくる。

そうはいっても、室内会場としては今回、イギリス1位のマンチェスター・アリーナ(2万1,000人収容)、2位のロンドン・The O2アリーナ(2万人収容)、バーミンガム・Gentingアリーナ(1万5,100人収容)、グラスゴーSSE Hydro(1万3,000人収容)、そしてウェンブリー・アリーナ(1万2,500人収容)というイギリスの名だたる屋内イベント会場のすべてにBABYMETALは出演したわけだから、日本人のロックバンドとして、とんでもない金字塔を打ち立てたことになるのは間違いない。

ちょっと下世話な話になるが、1月11日のMETALLICA韓国・ソウル高尺スカイドームは2万2,258人収容。日本に戻って、Guns ’N Rosesの1月21日京セラドームは5万5,000人、1月22日神戸ポートアイランド記念ホールは8,000人、1月25日横浜アリーナは1万7,000人、1月29日さいたまスーパーアリーナは3万7,000人収容。

もちろんすべて大物バンドのサポートアクトではあるが、すべてSold Outだとすれば、12月、1月の2か月間だけで、3カ国13公演、のべ28万人以上の観客がBABYMETALを見ることになる。しかも、渡航費や広告宣伝費は主催者持ち、かつ1ステージ3,000万円といわれる出演料が文字通りギャランティされていることになる。3億9,000万円だ。

ようやく、9月の東京ドームで、いまさらサポートアクトかよ、まあ、大物バンドのレッチリだけどさ…なんだかなあ…と思ったぼくらの疑問が氷解しつつある。ものすごい効率的な稼ぎ方、かつメインストリームのロックファン層への効果的な訴求の仕方なのである。

わずか40分といえども、あのライブを直接見て、BABYMETALが好きになれないならば、それはしょうがない。だが、これまでのところ、BABYMETAL初見だったレッチリファンのほとんどが、会場では地蔵状態であるにも関わらず、家に帰ってからツイッターやFBで、BABYMETALを「凄い!」「楽しめた!」と高評価していることを考えると、大物バンドのサポートアクトの狙いは、ズバリハマったと言わざるを得ない。

これで、BABYMETALが取りうるファンベース拡大戦術は、昨年までに比べ倍増した。

単独ライブは最もリスクが高い。会場費も、渡航費も、宣伝費もすべてアミューズ持ち。チケットの高い日本の大会場ならば実入りも大きいが、海外の小規模会場ではたいして儲からない。

フェスは、オファーの段階で渡航費とギャランティが保証されている。従来はこれと海外での単独ライブを組み合わせていた。

それに今回から、大物バンドのサポートアクトという戦術が加わった。40分程度のパフォーマンスだから、フェスと同程度の労力で、かつ帯同の形になるのでセトリの変化でプロレス興行のような「ストーリー性」が生まれるし、リハーサルの時間もきっちりとれ、何より大物バンドのファンにBABYMETALの存在をアピールできる。

加えて来年は、ライブ映像付きのアニメ放映である。従来はWOWOWによるライブ放送がメインだったが、海外の子どもにもアニメという形で、キャラクター化されたBABYMETALが訴求されていく。これは大きい。「Power Puff Girls」は、アメリカだけじゃなく、アジア各国のケーブルテレビのアニメチャンネル(たいていは朝か、夕方の時間帯)に必ず入っており、子どもたちがケラケラ笑って見ていた。BABYMETALの場合、ストーリーの中に、ライブ映像が入ることが予告されているから、たんなるコミックストーリーではない。キャラクターの活躍に夢中になり、かつ彼らが実在するバンドなのだということになれば、子どもたちは「コンサートに行きたい!」と思うだろう。なんのことはない海外メタル版可憐Girlsである。BABYMETALに「任務完了」はないから、将来的には、この子たちがBABYMETALのコアなファン層になっていくのであろう。

こうして、2017年のBABYMETALは、海外の高齢メインストリーム・ロックファン層とBABYMETALに憧れるキッズ層をがっちりつかむという訴求をして、日本での単独ライブにみられるようなお父さんが娘たちを連れていく「ファミリーメタル」として、新しいメタルの楽しみ方を海外ファンに提起していくような気がする。もちろん、海外のロック/メタルフェスは、基本的に15歳以下入場禁止になっているので、メタルファンが「ガキ連れてくんじゃねーよ」とかいってモメる可能性はあるが、1万~2万人規模の単独ライブなら可能であろう。

KOBAMETALは、かつて日本でアイドルファンとメタルファンをBABYMETALファンに育てていったように、海外でも長期的にファン層を育てていくということを本気で考えているのだろう。

そのための布石としての「METAメタ太郎」だったら、すごいことですよ、これは。