継承したもの革新したもの(2) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

(承前)

ではBABYMETALがメタルを継承したといえるのはどんなところなのか。

パンテラ風リフが聴けるデビュー曲「ドキドキ☆モーニング」、Sonata Arctica風のメロスピ/パワーメタルの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」、EDMを取り入れたNuメタル風「いいね!」や「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」、X-Japan風味の「紅月-アカツキ-」、Metallica「One」の影響を感じる「BABYMETAL DEATH」、ハードコアパンクスタイルの「ギミチョコ‼」などなど、言い尽くされてはいるが、BABYMETALの楽曲には、メタルの歴史への“オマージュ”があふれている。

だが、BABYMETALがメタルの継承者であると、最もぼくが強く思うのは、キツネ様の降臨、キツネサイン、ゴスロリ戦士風のコスチュームといった、アイドルでいえば「設定」、メタルでいえば「ギミック」なのである。

ハードロックとメタルの境界線は、ダウンチューニングとかツインギターとかダブルバスドラとかの技術面もさることながら、「ギミック」の有無、つまり笑えるような「設定」があるかどうかではないかと、マジで思う。

中断している妄想アニメの第7話で、KOBAのセリフとして次のようなものを考えた。

「メタルのギミックは正直くだらない。極悪を気取ったつもりがギャグになってたりする。ジャケットなんて情けないほど馬鹿っぽい。そういうフリーキーな奴らが大音量、超絶技巧でガンガンやる。だからこそカッコいい。だからこそ楽しめる。そんなことのできるジャンルって他にあるか?笑顔のないメタルはつまらないメタル。メタルのない社会は余裕のない社会だよ。」

70年代末、KISSが出てきたとき、ハードロック=カッコいいと思い込んでいたぼくは、「これはギャグバンドじゃないか」と思った。当時はレッドツェッペリン、ディープパープル~レインボウ、イエス、ピンクフロイドなどのブリティッシュハードロック/プログレハードが本流で、一方にはアメリカンロックがあって、オールマンブラザースバンド、ドゥービーブラザース、イーグルスなんかがちょっと大人のカッコよさを醸し出していた。

そんな中、ツインギターながらテクニック的にはイージーで、悪魔のペインティングとコスチュームをしているキッスは、売らんかなのパロディバンドにしか見えなかった。それでもなんか心惹かれて2枚組LPを買ってしまったのだが。

ギタリストとしてのぼくは、リッチー・ブラックモアズレインボウのアメリカでの大ヒット連発=ポップ化にちょっと嫌気がさして、ジャズ、フュージョンに惹かれていったのだが、そのうちに、日本のブルースバンド、ウシャコダを発見し、惚れてしまった。

知らない人もいるだろうけど、ウシャコダは、マディ・ウオータースとか、BBキングとか、ブルース系の超絶テクを追求するツインギター(使用ギターはセミアコのギブソンES335)のブルースバンドである。地元は千葉県松戸市で、代表曲は「いつもパワーのウシャコダ、ウシャウシャウシャウシャ」とか、「千葉県、よいとこ、一度はおいでよ、花も実もあるコメもある!」とか「サラ金ブルース」とか、曲の途中でギターを空中に投げて交換するとか、とにかくショーマンシップ=ギャグ満載の抱腹絶倒ライブを展開するのだ。これがめっちゃカッコいいんですね。おバカを演じているからこそ、俺たちにはこれしかない!という男気を感じて、超絶テクニックが引き立つのである。

覚えているだろうか。7月のAPMA’sでロブ・ハルフォードと共演したとき、YUIとMOAが演奏したのは、ジューダスプリーストの「Breaking the Law」であったが、このMVはメンバーがなぜかフライングVを持って銀行強盗に入るストーリー。中川家礼二に激似の警備員が最後にはボール紙のフライングVを持って踊りだしてしまうというギャグ満載のMVであった。

ブラックサバス、ジューダスプリースト、アイアンメイデン…。NWOBHMのバンドは、みんな笑えるほどのギミックを持っている。社会派で生真面目なMetallica、スレイヤー、アンスラックス、メガデスのいわゆる4大スラッシュメタルバンドを基準にするから、メタル=へヴィで猛スピードのテクニック集団という公式が生まれてしまうのかもしれないが、実は、メタルとはギミック満載の「おバカな奴ら」なのである。マソソソ・マソソソだって、スリップノットだってそうでしょ。バカっぽいスタイル、奇怪な世界観なのに超絶技巧だから、カッコいいのである。

やがて日本のメタルバンドでもおバカを演じるのが出てきた。ご存知、聖飢魔Ⅱである。

初めて彼らがTVに出たのは、早稲田大学在学中で、ソニーからデビューが決まっていたが創設者のリーダー、ギタリストのダミアン浜田殿下が教職につくため脱退し、大学卒業とともに解散するかもしれなかった頃。深夜番組の「タモリの今夜は最高」であった。ぼくはリアルタイムで見ていたが、今でも鮮明に覚えている。デーモン小暮閣下が「吾輩は…」という口調で、実年齢に10万をつけたり、「地球征服」をするために地獄から来た悪魔の教団であると言い張り、学業は「世を忍ぶ仮の姿」、コンサートを「黒ミサ」と呼んだりする「設定」を次々と開陳し、そのたびにタモリがウケていた。演奏そのものは超絶テクのギターに、デーモン閣下の日本人離れした歌唱力。やはりカッコよかった。番組の最後に、聖飢魔Ⅱをタモリに紹介した泉麻人が、「日本一のお笑いバンド、聖飢魔Ⅱでした」と締めくくってさらに笑いをとった。

これを小学6年生だったKOBAMETALが見ていた。ついこの間のインタビューで明らかにされた事実である。そして衝撃を受け、人生を決めた。

「卒業とともに解散」「地球征服」「世を忍ぶ仮の姿」「黒ミサ」…。

明らかにこれがBABYMETALに伝承されたのである。間違いない。

もちろん、超絶テクの神バンド、そして日本人離れしたSU-METALの歌唱力こそ、正統メタルの証である。と同時に、キツネ様が降臨して「ライブ中の記憶がない」とか、メロイックサインをキツネサインにしてしまう「ギャグ」もまた、メタルの正統な継承者の証なのだということをぜひともメタルメイトのみなさんにわかってもらいたい。

何度も書いたから繰り返しは避けるが、X-Japanだって、最初は「元気が出るテレビ」で笑いをとっていた。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でのXジャンプは彼らへのオマージュである。

日本人は真面目だから、社会派のMetallicaを基準にしてしまうが、そうではないのだ。

アイアンメイデンのマスコット、エディはガイコツ男だし、Riotのジョニーはアザラシ男、パンテラだって豹男なのだ。BABYMETALが選んだキツネ様(設定上はキツネ様が三人を選び、BABYMETALと名づけた)は、メタルバンドとして相当クールだ。

X-Japanの解散(一時)はSU-が生まれた1997年。聖飢魔Ⅱの解散はYUI&MOAが生まれた1999年。これは偶然なのか?

Kawaii女の子たちがメタル伝承のギミックを演じながら、飛び切りの歌唱力、卓越したダンス・パフォーマンス、超絶テクの演奏を見せつける。だからBABYMETALはカッコいいのだ。

(つづく)