ケルン大勝利! | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

前回、オランダのFORTAROCKフェスでのセットリストを、「ギミチョコ!!」から「メタ太郎」と書いてしまったのだが、「メタ太郎」は「Catch Me If You Can」の後でした。お詫びして訂正いたします。コメントで指摘してくれたチビメタルさんありがとうございました。

ケルン(Cologne)。

ドイツ中部、蛮族ゲルマン人の領内に突き出したローマ帝国の橋頭保があったところで、風呂に入れない前線の兵士たちのむさい体臭を消すために、花のエッセンスをアルコールに溶かした香水が発達した。これは「ケルンの水」=Au de Cologneと呼ばれ、今ある「オーデコロン」の語源となっている。

臭いのか、いい匂いなのかわからない街だが、菊地最愛=MOAMETALにとっては、第二の故郷と言っても過言ではない。2014年7月3日(日本時間7月4日)、初めてのワールドツアー2日目、ケルン、ライブ・ミュージック・ホールにて、その日誕生日を迎え15歳となったMOAMETALは、「ヘドバンギャー!!」の2番を歌い、前日のパリ、シガールでのYUIMETALに続き、「15(イチゴ)の夜」の洗礼を受けたのだった。

2012年末から2013年初頭にかけて、BABYMETALは解散の危機に瀕していた。当時中三だった中元すず香は、2013年3月にさくら学院を「卒業」する。部活であった重音部(=BABYMETAL)をも卒業しなければならないという決まりを守るか(つまり、BABYMETAL解散)、なんらかの方法でBABYMETALを継続するか、KOBAMETALは三人に意思を確認した。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」リリース前だから、当然、継続を説得したのだろうが、さくら学院のオフィシャルブログで、菊地最愛は「(継続するかどうか)先生方と相談がありました」と書いている。中元すず香と水野由結がすぐに継続することを決断したのに、菊地最愛は最後まで迷った。一人っ子で生真面目な性格の彼女は、ツアー生活が続くことで、家族に心配をかけてしまうことや、BABYMETALとさくら学院の両立ができるかどうかを深く思い悩んだという。だが、最終的に彼女はBABYMETAL継続を決め、2015年3月までさくら学院に在籍し続ける水野由結と菊地最愛にとっては「課外活動」という位置づけになった。いまさらながらだけど、つい1年3か月前まで、YUIとMOAは中三で、BABYMETALは「課外活動」だったのですよ。

ともあれ、菊地最愛の決断がなければ、2013年以降の神バンドを帯同して国内フェスを席巻したBABYMETALはない。菊地最愛こそ、世界のBABYMETAL誕生のキーマンだったのだ。その菊地最愛にとって、2014年のワールドツアーは、アイドルを超えたスーパーレディを目指すさくら学院生徒会長として初めて乗り出した世界の舞台だった。とはいえ、いきなり「ヘドバンギャー!!」の2番を、パリでは6月20日に15歳になったYUIが、ケルンでは当日の日本時間では誕生日となるMOAが歌うことになったとき、少女たちの気持ちはいかばかりだったであろうか。タコばかりかもしれない。(Copyright(C)東海林さだお)

二人が「ヘドバンギャー!!」の2番を歌っている(ということはSU-がYUIとMOAのダンスパートをやっている)歴史的ファンカム映像は、YouTubeに残っている。

さて、長々と前置きをしてしまったが、これだけの歴史性を踏まえてみると、今回のケルン公演の重みがひしひしと感じられるのだ。会場は、2014年と同じ、ライブ・ミュージック・ホール。キャパは同じなのに、動画で見る限り、観客の「密度」が違う。

セトリは、1.BABYMETAL DEATH、2.ギミチョコ!!、3.いいね!、4.Amore - 蒼星 -、5.META!メタ太郎、6.Sis.Anger、7.Catch me if you can、8.メギツネ、9.KARATE、10.Road of Resistance、11. THE ONEの順。

2014年は、

1.BABYMETAL DEATH、2.いいね!、3.ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト、4.悪夢の輪舞曲、5.おねだり大作戦、6.Catch me if you can、7.紅月‐アカツキ‐、8.4の歌、9.メギツネ、10.ド・キ・ド・キ☆モーニング、11.ギミチョコ!!、12.ヘドバンギャー!!、13.イジメ、ダメ、ゼッタイ

の順だった。

BMDは不動のオープニング。2014‐15シーズンはここから「いいね!」をつなげることが多かったし、今年もアメリカツアー後半のデトロイト、シカゴ、スイス・プラッテルンではBMD→「いいね!」だった。

しかし前回のオランダでは、フェスだからということもあったのか、疾走感を持続する「ギミチョコ!!」が2曲目だった。今回のケルンもそうだ。

2014年は、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」がフィニッシュ曲だから、その前は「ヘドバンギャー!!」、YouTubeで話題になっている名刺代わりの「ギミチョコ!!」はその前。中盤にBBMの「おねだり大作戦」と「4の歌」を配し、SU-ソロの「紅月-アカツキ-」と「悪夢の輪舞曲」でサンドイッチ、その間に神バンドのソロがつなぐ「CMIYC」が入るという構成は、基本的に変えようがない。あとは、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」「メギツネ」の位置を工夫してマンネリにならないようにする。だってこれ、ファーストアルバム「BABYMETAL」全曲ですよ。いかに最初のワールドツアーで全力を出し切っていたかが、感動とともに了解される。

今年は、バリエーションが倍になった。「GJ!」と「Sis. Anger」はBBMだから「おねだり大作戦」と「4の歌」の代わりのような配置だが、両方やることはなく、まったり感を出すためには「メタ太郎」が使われている。「Amore‐蒼星‐」は当然「紅月‐アカツキ‐」代わり。「KARATE」は米プロレス団体のテーマ曲になったほどのシングルヒットなので、必ず入るし、「ギミチョコ」「メギツネ」は外せない。「あわ玉フィーバー」「ヤバッ!」という2015年中に日本で初披露されたヨーロッパの観客には初めて見る曲もある。フィニッシュ曲は、前回復活して感激した「ヘドバンギャー!!」「イジメ、ダメ、ゼッタイ」という2014‐15シーズンの黄金パターンに加えて、「ROR」、「The One」が堂々と控えている。「Tales of Destiny」(国内盤)「From Dusk Till Dawn」(US盤、EU盤)は、まだライブで披露されていない。何とも贅沢だ。

今回は、「The One」をフィニッシュに持ってきた。ウェンブリーでもフィニッシュは「ROR」だった。「The One」終わりは、横浜アリーナ2日目以来ではないか。

2回とも観たというファンはどのくらいいたのだろうか。

「BABYMETAL DEATH」から「ギミチョコ!!」の流れは、オランダに続き、疾走感がすごい。SU-がギターソロパートで「Crap Your Hands!」と言っているらしいのだが、マイクに入っていない。そのあとは煽りなし。続く「いいね!」も早いスピードだから、疾走感が持続する。ようやく「Yo! Yo!」のところで、おなじみの「ケルン!」の煽りがあって、会場が一体化したところで、「Amore‐蒼星‐」で、SU-のボーカリストとしての実力を披露。昨年までは「紅月‐アカツキ‐」で、SU-のピッチが大丈夫か、喉が涸れていないか、ファンカムを見ながら心配したものだが、今年はもう安心してみていられる。そして「メタ太郎」。いよいよ本場のドイツだが、YUI、MOAはニコニコ顔で踊っている。「ナチス式敬礼」に見えるダンスをしたとたん、拘禁される、というようなことはなかった。そんな、戦前の特高が見張っている時局講演会のような状況が、現代のメタルのライブであるわけがないのだ。続いて、BBMによる「Sis. Anger」。ぼくが持っているのはUS盤だが、日本で海外アーティストのLPやCDを買うとついてくる歌詞対訳のようなものは、当然ついてない。というか、歌詞カード自体ついてない。これでどうやって日本語を「学ぶ」というのか。だから、前からぼくが言っているようにBABYMETALの歌詞の“メタル性”を、欧米の評論家たちは理解できず、容姿と声のペドっぽさ=Kawaiiと、歌、ダンスの凄さ、演奏の凄さ、楽曲のオマージュぶりだけが評価されることになるのだ。「Sis. Anger」でYUI、MOAが何と言っているのか、ネットで英訳されているサイトがあるかどうかもわからないが、もしあったとしても、それを読んで理解している観客がどれだけいるのだろう。ぼくに時間があったら、このブログを全部英語で書きたい。

「CMIYC」は、言葉関係なく神バンドのソロとダンスを楽しむ曲。やっぱり超絶テクはBABYMETALの重要な要素。続いてオリエンタルな「メギツネ」から「KARATE」の流れ。ヨーロッパ人は、特に日本文化に特別な価値を見出しているから、「日本から来た少女メタル」の収まりどころとして、こういう曲が腑に落ちるのだろう。

フィニッシュは「ROR」から「The One」。ぼくは「The One」で、万国旗が振られ、音楽を通じた世界平和が現出するウェンブリーの光景もしっかり見れてない。7月31日のWOWOWまで、お預けになっている。ウェンブリーに続き、ドイツの観客もその恩恵に浴したわけだ。いいなあ。これで、2014年以来、この地にBABYMETALの記憶は、永遠に刻まれることになろう。

ちょっと違うかもしれないが、英語以外の言語で歌い、新しいジャンルを開拓して歴史に残るアーティストといえば、例えばABBAなんかどうでしょう。最後は全部英語になってしまいましたが、初期はスウェーデン語でしたよね。で、ユーロビートという、当時は耳新しいスタイルの「象徴」になったABBA。航空会社の社員で、普段は音楽など聴かない、几帳面な性格だった父は、なぜかこのABBAが好きで、LPやらカセットやらをせっせと買っていた。今気づいたが、ぼくはその血を引いているのか?