国家がデフォルトすると、いったい何が起きるのだろうか?

今回の米国債務上限引き上げ問題をみた時、一般的には、
・米国の格付け評価が下がる
・米国債の利回りが上昇
・世界金融危機が再来する
と考えられている。

しかし企業の破綻と違って、国家の場合はすぐに国がなくなるということはない。

過去の歴史を振り返ると、ロシア、アルゼンチン、韓国、ギリシャなどが実質的なデフォルト(債務不履行)に陥り、IMFが支援に乗り出している。

ロシアでは、1997年のアジア金融危機の余波を受けて財政が悪化、1998年8月17日にキリエンコ政府並びにロシア中央銀行が対外債務を90日間支払停止とし、ロシア国債はデフォルト(債務不履行)に。

これに起因してルーブルは下落、その後、年率7,000%ものハイパーインフレを経験し、新1ルーブル=旧1,000ルーブルとするデノミ(通貨の呼称単位切り下げ)を行っている。※100万円の預金が実質1,000円に下がる。

ロシア財政は逼迫し、債務支払い停止を経て資本が流出、ルーブルの下落を見たロシア国内の経済混乱、並びに、金融不安に伴う株価下落、投資方針を量から質へ転換した資本の移動、ヘッジファンドLTCMの倒産など、世界恐慌に繋がりかねない深刻な影響を経済に与えた。

しかしロシアの場合は原油高の影響もあり、10年以内に経済は順調に回復。産業構造自体が壊れた訳ではなかったのが救いだったといえる。


アルゼンチンの場合、ロシアの金融危機の余波を受けて輸出不振から極度の経済不振に陥り、カバロ財相は一気に緊縮経済へ逆転。

政府は、財政建て直しのために、増税、公務員給与カットなど歳出削減策を打ち出したが、2001年12月17日、さらに前年比19%減という超緊縮予算を提出したことで、空前の失業と社会不安の中、耐乏生活の国民の不満が爆発し、略奪、暴動に発展した。

これで前大統領の汚職疑惑から1999年に就任したばかりのデラルア大統領は辞職、ロドリゲス暫定大統領が、対外債務支払い一時停止を宣言し、「デフォルト」状態に至っている。

国内では、
・失業率が過去最高の21.5%に
・ハイパーインフレによる食料品、物資、医療品の不足(手術が延期)
・株価の急激な下落
・銀行の預金封鎖(週に引き出せる額は上限250ドル)
・年金支払いの滞り
・治安の悪化
・国民の海外流出(スペイン、イタリア、イスラエルへ)
などの事態が発生した。

貧困層は馬やカエル、ネズミを食べて飢えをしのいだり、物乞いをする人が多く、社会秩序が崩壊し、略奪、デモ、暴動、強盗、殺人事件が増加している。

韓国は1997年末、アジア通貨危機を背景にデフォルト寸前の状況にまで追い込まれた。通貨安で食料の輸入ができなくなり、世界が緊急食糧支援するまでに到り、IMFが韓国の経済政策に介入。現代グループなどに対して財閥解体が行われている。

ギリシャの財政問題に対しては、一時期ドイツの財相が「借金を返済できないなら、島をよこせ」と発言して物議を醸したが、国土資産の売却(国土の切り売り)は現実的な債務返済手段として検討されている。


過去の事例を元にイメージして観ると、仮に日本がデフォルト(債務不履行)に陥り、国家破綻、財政破綻となった際には、次のようなことが想像されよう。

①格付けの低下→国債の下落(国家としての信用喪失)
法人でも同様だが、国として債務を返済する能力を疑われれば、その分、お金を貸す側は高金利を求めるようになる。赤字国債発行などによる資金調達は難しくなり、緊縮財政が求められるようになるだろう。国債を大量保有していた大手銀行は想定外の特別損失を計上し、破綻に追い込まれるケースも続出することと思われる。日経平均も7,000円台を割り込み、さらに下回る恐れがある。

②円安
自国の信用失墜と同時に円が売られ始め、1ドル=200円代に突入、輸入産業は甚大なダメージを被るだろう。かい離が激しい場合にはデノミも想定され得る。デノミによって過去の借金をチャラにしようと画策する政治家が出て来てもおかしくない。

金融市場は崩壊に近い様相を示し、金融業界では大量のリストラが実施され、破綻する企業も続出。外資系が地方銀行、信用金庫を底値で買収し、危機がひと段落した後に商売を始める可能性もある。

③ハイパーインフレ(物価上昇)
食糧価格は国際的に上昇傾向にあるが、最悪の場合、価格が1,000倍になるケースも想定される。資産が幾らあろうが、貧富の格差は相対的に薄まり、物々交換の闇市場が賑わうだろう。海外に移転してない資産は価値を失い、多くの人が食料品、物資、衣料品、日常用品の不足に悩まされ、食べるモノがない日が2,3日続く可能性も想定されうる。

福祉・医療サービスなどを享受することも難しくなり、水道光熱費、通信費、交通費などあらゆる生活インフラコストも、信じられないぐらいの値上がりを見せる。

④治安の悪化
普通に働いても日常生活を送れない状態になれば、暴動、略奪、強盗、殺人などの事件が頻発。治安は劇的に悪化する可能性が高い。都市部ではコンビニ、スーパーを個人が襲い、警備の薄い地方では野菜畑や果樹園が組織的な略奪のターゲットになりうる。

⑤失業率、倒産・破産件数、自殺者数の増加
商売が成り立たなくなることに伴い、失業率は過去最悪の20%台を突破。中小企業や個人事業主の倒産・破産と、借金を苦にした自殺者数の増加が予想される。最悪、年間5-10万人の自殺者が発生する事態も考えておかねばならない。

⑥預金封鎖、公共サービス・政府機関の一部停止
銀行からは毎月10万円しか引き出せなくなり、公共サービスの一部が停止、政府機関の一部が閉鎖される恐れもある。政府(或いはIMF)が歳出削減する際に、一番に切り捨てられる分野は不要・不急のサービス(防衛産業、ODA、宇宙開発、福利厚生施設など)。

公務員は2割削減、給料も2割カット。消費税20%、所得税他あらゆる分野でも増税、保険料はUP、支払いは減額、電気、水道などは値上がりし、日本で暮らすこと自体が苦しみに。

⑦国民の海外流出
国外に資産を有する者、英語が話せ、海外人脈がある人から先に、国外退避を始めるだろう。在日外国人の帰国も含めれば、最悪2,000万人近くの人口が日本から消失する可能性もある。

以上のような事態に陥った場合、
・IMFと各国政府の支援により
・強制的に財政再建策を策定され
・日本人は苦渋の10年を耐え忍ぶ生活を強いられ
・それも自業自得だと教育される
時代が待っている。

そして、借金返済のかたとして
・ロシアは北方領土を
・韓国は竹島を
・中国は尖閣諸島などを
接収する外交を始めるはずだ。(それだけで済めばいい方だが)

日本企業の殆どが元気の良い中国などに買収され、
日本人はさらに自身を失い、
借金返済の為、奴隷のように働かざるを得ない危機後がイメージできる。

戦後より酷い、精神的苦痛を味わいながら、生き長らえる世界。


しかし、日本だけでなく、連鎖的な国家破綻が起こればどうなるか?

仮に米国がデフォルトし、先に財政破綻をきたした場合、連鎖的に日本も財政破綻し、EUに飛び火した世界金融恐慌は、瞬く間にPIIGS諸国をなぎ倒し、ユーロ圏も崩壊。かつて先進国と呼ばれた国々は、連鎖的な資本主義体制の終わりを目にすることになるだろう。

ロシア、中国、インド、ブラジルが保護貿易によって、なんとか自国だけは守り切った後、新興国の連合体を作り、世界秩序は10年もしないうちに様変わりするかも知れない。

経済的に繋がってしまったこの時代、もはや地球上に逃げ場はない。

現在の世界秩序の崩壊を望む勢力もあるが、仮に日米欧が連鎖的に破綻する場合、想像もつかないような地獄絵図が展開されるだろう。

この時代の危機を、どのように突破してゆけば良いのか?


その代案が、新しい産業(雇用)を創出できる「認識革命」にある。