2月14日に、栃木県那須塩原市のアジア学院に行ってきました。
訪問の目的は、ASC2008(アカウンタビリティ・セルフ・チェック2008)の立会いのためです。ASC2008の立会い人としての出張とはいえ、私にとって以前から一度訪問したいと思っていたアジア学院をやっと訪れることができました。

国際協力NGOセンター(JANIC)事務局長ブログ
(建設中の農業研修棟)

アジア学院は、1973年に設立された日本で最も歴史の古いNGOの一つです。
NGOの多くは、アジア・アフリカなどの発展途上国に出かけて行って、現地の人々といっしょに貧困削減や教育などに取り組むことを事業の中心にしています。それに対して、アジア学院は、途上国の農村からNGOのワーカーや地域のリーダーを招き、9か月間に及ぶ体験型の研修を通じて人材育成に取り組んでいます。現在までに、55ヵ国から約1200人の研修生を受け入れ、地元に戻った卒業生のフォローアップを通じて、それらの国の農村開発の手伝いをしています。
アジア学院のように、途上国のNGOスタッフや農村のリーダーを招いて研修するという方法で国際協力活動を行っているNGOには、他に愛知県のアジア保健研修所(AHI)や兵庫県のPHD協会などがあります。

実は、昨年3月15日にASCの立会いで訪問することになっていたのですが、直前の東日本大震災の発災によりアジア学院自体が被災して、延期となっていました。
今回アジア学院を訪問して、改めて震災被害の大きさに驚きました。震度6強の地震に襲われたアジア学院の施設は、建物に亀裂が入ったり建物自体が傾いたりといった被害を受けて、敷地内には大きな地割れも起きたそうです。本部棟は既に更地になっていて、現在は農業研修棟を仮の事務所として使いながら、学院内の施設の再建に取り組んでいます。

3.11の影響は、建物だけに留まっていません。
福島第1原発からは約100kmの距離があるそうですが、風の通り道だったことも影響して、学院内の農地や牧草地が放射線の影響を受けたそうです。このため、自主事業として順調に収入を伸ばしてきた野菜や米の出荷が、震災直後は大きく落ち込んでしまいました。現在は、世界で最も厳しいと言われるベラルーシに準ずる基準をクリアしたものだけを販売しているそうです。家畜については、牧草が放射線の影響を受けたために牛は手放しましたが、豚100頭と鶏500羽の飼育は継続しています。特に卵は放射線の影響を受けないこともあって積極的に出荷しており、この日も職員の方々が箱詰めの作業を行っていました。

ASC2008については、元々この仕組みが途上国の現場で開発協力を行うNGOを想定していることもあり、学校法人であるアジア学院にとって適用が難しい項目もありました。とはいえほとんどの項目をパスし、その後JANICの常任理事会でASC2008のプロセスが問題無く終了したこととASCマークの発行が承認されました。

地震による施設の破壊と原発による放射能被害を受けましたが、職員の方々の士気は高く、復興に必要な資金については支援者からの寄付が集まり目途が立ってきたそうです。
1日でも早い復興と新たな挑戦に期待したいと思います。

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(ASC2008を受けていただいた丹羽理事長、大津校長、荒川事務局長と、JANICの伊藤、山口)