JANIC退職のご挨拶

2010年3月にJANIC事務局長として入局して以来、ちょうど5年が経ちました。この間、会員や支援者、ボランティア、理事、スタッフの皆さんに支えられてなんとか務めることができました。
みなさまのご協力に深く感謝いたします。

5年間を振り返ると、やはり東日本大震災が最も大きな出来事でした
この未曽有の大災害に際して、多くのNGOが素早く現地に駆け付けて様々な救援活動をされ、それをJANICとしても支援させていただいたことが、一番印象に残っています。
途上国での活動が中心であるNGOが、日本国内でも大規模災害においてもその力を発揮して多くの被災者を支援できたことは、日本のNGOの歴史にとって画期的なことでした。将来起こることが懸念されている国内大規模災害や、地球温暖化の影響もあって頻発する世界中の災害に対して、東日本大震災の経験が活かされることを願っています。

その他、25周年を記念して会員団体の方々といっしょに作った「JANICビジョン2022」、2010年から本格的に取り組んだ「MDGs」「援助効果と開発効果」、昨年から今年にかけて力を入れた「ODA大綱の見直し」「特定秘密保護法」等に関する提言活動、2014年から本格化した「NGO認知度向上プロジェクト」など、様々な事業が思い起こされます。

今後は、定松新事務局長の元で、さらに発展することを心より願っています。

世界は、格差拡大や気候変動、各地で発生する紛争やテロの脅威など混沌としています。日本国内では、周辺国との軋轢をきっかけとして、積極的平和主義の名のもとに集団的自衛権の行使容認、武器輸出三原則の緩和など、日本の平和主義が揺らぐ状況が進みつつあります。

一方で、開発と環境と人権を含む新たな開発課題であるSDGsが9月の国連総会で採択される予定など、世界の国々や市民社会が共通の目標の下に取り組む動きも強化されています。その際に、重要なことは、NGOだけでなく、企業や政府・自治体、労働組合、生活協同組合を含めた、マルチセクターの連携です。

JANICがそれらの連携のひとつの結節点となり、平和で公正で持続可能な社会の実現に一歩一歩着実に近づくことを願ってやみません。

どうぞ、これからもJANICおよび日本のNGOへのご支援、ご協力をお願いいたします。


(JANICに寄付した事務所入り口に掲示するサインプレートを、定松新事務局長に手渡しました)
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開発協力大綱

昨日2月10日に、開発協力大綱閣議決定され、発表されました。
昨晩の各局のニュース番組でも取り上げられ、今日の新聞各紙でも1面トップや社説に掲載されており、関心の高さが伺えます。昨晩、私にもTBSラジオの『荻上チキ・Session-22』という番組から取材の依頼があり、開発協力大綱に対する市民社会の懸念などについて、評論家の荻上チキさんと10分ほどラジオ番組の中で対話しました。

このブログでも「ODA大綱見直し」と言うタイトルで、昨年4月と11月に取り上げており、またかと思われる方もいるかもしれませんが、「開発協力大綱」(名称が「ODA大綱」から変わりました)は国際協力に携わっている者にとって、それほど重要なのです。
JANICは、「動く→動かす」と共同で、早速NGO声明を発表しました。
私たちNGOの主張は、昨年3月にODA大綱見直しが決まって議論が始まってから一貫しています。特に重要なのは、「ODAは、途上国の貧困解消を第一の目的とすべきであり、日本の国益を優先すべきではない」「ODAは日本の平和主義に基づいて、非軍事の原則を厳守すべきである」という2点です。

昨年10月に政府原案が発表されて以降、パブリックコメントや政府との意見交換会でも、これらの点を中心に継続してJANICをはじめとした多くのNGO/NPO、市民が声を挙げてきました。最終的に発表された「開発協力大綱」では、昨年の案と比べて「女性の参画の促進」や「開発教育の推進」が一つの項目として独立して記載されるなど、改善された部分もありますが、私たちが注目していた前記の点についてはほとんど変更がありませんでした。NGO声明でも、その旨遺憾の意を表しています。

特にODAの非軍事利用については、「実施上の原則」の中で「開発協力の実施に当たっては,軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」いう原則を示しつつ、「民生目的,災害救助等非軍事目的の開発協力に相手国の軍又は軍籍を有する者が関係する場合には,その実質的意義に着目し,個別具体的に検討する。」と、軍や軍人に対するODA利用の道を開いています。
ODAで供与した民生目的の資機材が軍事転用される可能性が心配されますが、それに加えてただでさえ年々削減されているODA予算の一部を軍隊への支援に振り向けることによって、本来支援すべき教育や保健医療、農業支援など、途上国の貧困層への支援が相対的に削減される懸念もあります。
国益重視の観点から、最貧国ではなく、日本にとって安全保障の観点や経済的な結びつきの強い国や地域への支援が重視される傾向と相まって、途上国の貧困解消を第一の目的とするというODAのあるべき姿が変質してしまいます。

私たちNGOは、「地球益」に基づいて平和で公正で持続可能な世界の実現に貢献するという理念を守り実践しながら、日本政府に対してはODAの非軍事利用の徹底、貧困解消実現に向けた市民社会との連携を引き続き訴えていきます。
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1月22日に、Panasonic NPOサポートファンドの2015年度贈呈式が行われました。
このファンドは、「社会課題の解決促進に向けて、国内で先進的な取り組みを展開するNPOや、新興国・途上国で活動するNGOが、第三者の多様で客観的な視点を取り入れて実施する組織基盤強化の取り組みを応援」することを目的に設立され、「子ども分野」、「環境分野」、「アフリカ分野」の3つの分野で助成を行っています。私は、その中で「アフリカ分野」の審査委員を2010年の設立以来担当しています。

NPO向けの助成は、その団体が行っている事業が対象となるものが大半ですが、このサポートファンドは団体の組織強化のための支援を行うというところに特徴があります。特に私が選考委員長を務めている「アフリカ分野」では、広報能力の強化に特化している点が大変ユニークです。


(リボーン京都の小玉理事長とパナソニックの竹安役員)

「アフリカ分野」の今回の受賞団体は、コモンニジェール、TICO、日本国際民間協力会(NICCO)、日本紛争予防センター、リボーン・京都、ムワンガザ・ファンデーションの6団体で、各NGOはニジェール、ザンビア、ケニヤ、ルワンダ、タンザニアで様々な支援活動を行っています。詳しくは、こちらをご覧ください。

アフリカには50以上の国があり10億人以上の多様な人々が暮らしています。近年、豊富な地下資源や急激な人口増加による労働力によって、経済成長を遂げている国がいくつも見られます。とはいえ、そういった国の中ではその利益を享受している一部の富裕層と大多数の貧しい人々との格差はむしろ開いていますし、さらに資源を持っている国と持っていない国との差も拡大傾向にあります。それに追い打ちをかけているのが、民族や宗教を背景とした紛争や対立であり、ソマリア、スーダン、コンゴなど多くの難民を出している国があります。さらに、昨年から西アフリカでエボラ出血熱の大流行が世界的に注目されましたが、これも保健医療体制の脆弱性がその背景にあります。

このように、アフリカ諸国にはまだ様々な課題が山積みとなっており、日本を含めた先進国からの支援は不可欠です。それに対して、先進国の側では経済不況や援助疲れから十分な支援が行われているとは言えません。日本人にとってアフリカは、遠い国という印象が強くてアジアに比べて関心が薄く、さらに紛争やエボラ出血熱といったマイナスのイメージが強いように思います。
前記の通り、アフリカで支援を行っている日本のNGOは多数あり、それらNGOの活動を通じて、アフリカの多様性や豊かさを日本の人々に伝えることに、このサポートファンドは貢献しています。広報能力強化の一環として、授賞式の後には選考委員の一人である博報堂PR戦略局の加藤昌治部長による「戦略的な広報活動とPDCAサイクルのまわし方」というテーマの勉強会も開催されました。
今回助成を受けたNGOは、これから1年間それぞれの団体が計画した広報能力強化事業を実施していくわけですが、効果的な広報によって団体の社会的な認知度が上がり、会員や寄付の拡大につながることを期待しています。
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衆議院選挙期間中の12月10日、特定秘密保護法がひっそりと施行されました。
昨年12月に閣議決定されてから、市民やジャーナリスト、NGO/NPOが、国民の「知る権利」が侵害されることに懸念を表明し廃止を求めてきました。
昨年11月30日のブログでもご紹介したように、国際協力NGOの間でも特定秘密保護法の施行によってNGOの活動に支障が生じるのではないかとの危機感がありました。そこで、全国7つのネットワークNGOが今年4月には「秘密保護法NGOアクションネットワーク(NANSL、英語名:Japan NGO Action Network on the Secrecy Law)」を設立しました。
NANSLの目的は、「この法律によってNGOがどのような影響をうけるかを学習し、情報を交換し、本来の活動に支障をきたすことがないように備えます。また、NGOがこの法律によって活動を阻害された際には、協力して阻害要因が排除されるよう努めます。これらの活動を通じて、特定秘密保護法の問題性が広く社会に提起されることをめざします」ということです。
そのために、以下の活動を行っています。
① 法律の施行準備・施行・運用に対する監視・提言・抗議活動
② NGOの対応力強化のための情報収集、情報共有、学習活動
③ NGOが被害を被った際の対応活動
④ 他分野の市民社会組織との連携活動

NGO間のネットワークは作りましたが、私たちは法律の専門家ではないので、秘密保護法の詳細やその影響、また万が一逮捕など実際の影響が出た時にどうしたらよいのか分かりません。そのために、全国300人以上の弁護士が組織した「秘密保護法対策弁護団」と10月29日に協定を結びました。秘密保護法について学ぶ機会を提供してもらうことやNGOスタッフが秘密保護法を根拠に逮捕された場合に弁護を行うことなどを目的に提携したのもので、協定の内容は以下の通りです。
① 双方は秘密保護法の問題点について市民の間に理解を広める
② 双方は秘密保護法に関わる情報を共有する
③ 弁護団はNGO の勉強会・講演会等に弁護団員を派遣する
④ 弁護団はNGO 及びNGO 関係者が検挙された場合に弁護する
⑤ 弁護団はNGO が不利益な取扱いを受ける場合、相談に応じ救済する
⑥ NGO ネットワークは裁判に至る場合の弁護費用のカンパに協力する

(協定書にサインした谷山共同代表と海渡弁護士)

具体的な学びの場として、法律施行直後の12月16日に、「私たちは委縮しない
-秘密保護法下で市民活動をどう展開するか-」という勉強会を共同で開催しました。

勉強会では、最初に海渡雄一弁護士と小川隆太郎弁護士から秘密保護法をめぐる現状について講演があり、その後海渡双葉弁護士を加えた3人の弁護士とNANSL共同代表の一人である谷山博史JANIC副理事長との対談が行われました。谷山氏は参加申し込み者から事前に回答してもらったアンケート結果を元に、NGOや市民がどのような不安を抱えているか、市民活動にどのような影響があると考えているかなどをについて意見交換しました。その後、会場に開いて、参加者との質疑応答を行いました。


(勉強会での対談)

例えば「外務省の窓口でODAについて質問したら捕まるのか?」、「インターネットで集めた情報を編集して拡散したら処罰されるのか」といった質問に対して、弁護士の方々からは「窓口で問い合わせても問題ないが居座ったりすると問題。立ち話でも状況証拠で捕まることもあるので、公務員や取扱業者と話をする時には、とにかくメモを取る、一番いいのは録音すること」、「公開情報を集めて広めるだけでは処罰の対象外。必要以上に委縮する必要ない」といった説明がありました。
また、諸外国の場合はどうかとの問いに対しては、「米国では秘密保護も厳しいが、他方で情報公開も非常に進んでいる。またジャーナリストは対象外となっていて、健全なジャーナリズムが守られている。その点日本では、ジャーナリストも逮捕の対象となる。いかに情報公開を求めていくかが重要」といった説明がありました。たとえば、オバマ大統領が提唱したOGP(Open Government Partnership)に先進国で入っていないのは日本だけなので、日本の加盟を働き掛けるとともに、先に市民社会が参加することも効果があるとのことです。
秘密保護法について、私たち市民は詳しいことが分からないまま不安を募らせています。必要以上に委縮しないで、市民の権利として情報の開示を求めていくことが重要と弁護士の方々が強調していました。

特定秘密保護法の施行だけでなく、2014年は集団的自衛権の容認や武器輸出3原則の緩和など、現政権による一連の政策によって、日本が大きく変わる可能性が出た節目の年になりました。日本を戦争ができる「普通の国」にしようという意図が見られます。とはいえ、諦める必要はありません。今からできることはたくさんあります。10年後に歴史を振り返った際に、あの時が日本のターニングポイントだったとならないよう、平和を守り社会の公正と正義を守る市民運動を着実に継続していきたいと思います。

ODA大綱見直し 2

4月28日のブログでODA大綱見直しについて書きましたが、その見直しが最終局面に入っています。
名称を「開発協力大綱」と改めた政府原案が10月29日に発表され、パブリックコメントが募集されるとともに、各地で公聴会が開催されました。

3月下旬から始まったODA大綱見直しに対して、NGOの間でしばしば会合を開いて声明を出したり、意見交換会を開催したり、NGO-外務省定期協議会全体会やODA政策協議会などの場で議論してきました、これから10年以上にわたって日本政府の海外協力の基本方針となる新大綱が、世界の平和とすべての人々の幸福の実現に貢献する内容になるよう、市民社会の視点で読み解き発言しています。詳しくは、JANICのODA大綱見直し専用ウェブサイトをご覧ください。

政府原案には、「人間の安全保障の推進」を基本方針に掲げ、脆弱な立場に置かれやすい子どもや女性、障害者等の保護と能力強化に言及したり、女性の権利を含む基本的人権の促進に積極的に貢献すると明記している点や、「市民社会との連携」においてNGOとの連携を戦略的に強化すると明記している点、またODAのGNI比0.7%とする国際目標も記載している点など、評価すべき点もあります。

一方で、懸念すべき点も多数見られます。特に私が懸念するのは、経済成長重視とODAの非軍事利用における曖昧さです。

政府原案では、貧困削減を日本のODAの主目的と位置付けているいますが、貧困削減を実現する手段として経済成長を重視しています。確かに貧困を解消していくためには一定の経済的な成長も必要ですが、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる」といういわゆるトリクルダウン理論は、実際には多くの場合豊かな層はより豊かになる一方で貧しい層は取り残されるという格差拡大を助長する結果になっています。まず、教育、保健医療サービスの改善など、人づくりや人々が安心して暮らせる社会基盤の整備に取り組み、貧困解消、格差削減に支援を集中し、その上で「質の高い経済成長」を目指すべきです。

大綱案は「基本方針」で「非軍事的協力による平和と繁栄への貢献」と明記し、現ODA大綱の原則を引き継いで平和主義の姿勢を堅持しています。ところが、「実施の原則」の中に「民生目的,災害救助等非軍事目的の開発協力に相手国の軍又は軍籍を有する者が関係する場合には,その実質的意義に着目し,個別具体的に検討する。」という文章を付け加えて、現ODA大綱が禁止している「軍及び軍籍を有する者」へのODAの使用を一定の条件の下で容認しています。「その実質的意義に着目し,個別具体的に検討する」ということですが、誰が、何を基準にして、どのように判断するのかが不明です。こういった点が明確でない場合、恣意的な判断によって歯止めなく「軍や軍籍を有する者」に関係する事業にODAが供与される危険性があります。本来軍という組織は高い機密性を保持しており、いったん供与されたものが当初の目的通りに非軍事に使用されるかどうかの保証もありません。 日本の平和主義を守り抜くためにも、ODAの軍事利用につながるような文章は、新開発協力大綱から削除すべきだと思います。

政府は、今年中の閣議決定を目指して最終調整をしています。
既に公聴会もパブコメ募集も終わってしまいましたが、政府への意見表明の場が全くなくなったわけではありません。12月2日はNGO-外務省定期協議会ODA政策協議会が開催されて、「開発協力大綱」案について議論が行われる予定です。新大綱がより良くなるようにぎりぎりまで声を挙げていきたいと思います。


(市民セクター全国会議でJANICが主催したODA大綱に関するセミナーでのグループディスカッション)
少し日が経ってしまいましたが、10月最初の土日である4日、5日に、グローバルフェスタ2014が開催されました。グローバルフェスタは、JANIC、外務省、JICAが共催する校内最大級の国際協力イベントで、今年は「国際協力60周年」ということで例年以上に準備に力が入りました。残念ながら台風18号の影響で2日目は朝から雨が降り12時に中止となってしまったために、来場者数は77,546人(土曜日66,450人/日曜日11,096人)となってしまいましたが、雨にもかかわらず日曜日に来ていただいたお客様、出展していただいたNGO、JICA、外務省、国際機関、各国大使館の方々、本当にお疲れ様でした。特に、雨の中を走っていただいたチャリティラン参加者の皆さんには、頭が下がります。


(左から大橋理事長、田中理事長、石兼局長)

土曜日のオープニングイベントでは、共催者である外務省の石兼経済協力局長、JICAの田中理事長、JANICの大橋理事長が登壇して、それぞれ日本が国際協力を行う意義や途上国の人々との出会いをスピーチしました。その後、なんとAKB48がスペシャルゲストとして登場し、3人のVIPとトークショーを行うという企画まであり、国際協力を楽しく体験するというグローバルフェスタに合った企画でした。AKBはその後ヒット曲のメドレーを歌ってくれ、一般の観客とともに参加した外務省、JICA、NGO関係者も、普段の硬い表情とはちがって大いにAKBのステージを楽しんでいました。
また、「写真展『女性が輝く世界』」の優秀作品の表彰では、NGO部門でハンガーフリーワールドが、「村の集会で住民の声をきめ細かく拾う」(ブルキナファソ)で最優秀賞に輝きました。


(JANICの国際協力ブックフェア)

国際協力60周年は、今から60年前の1954年10月6日に日本がコロンボ計画への加盟を閣議決定し,開発途上国に対する政府開発援助(ODA)を開始したことにちなんでいます。日本のODAは平和国家として世界に貢献することを目指して徐々に規模を拡大し、1990年代には世界最大の援助国になりました。しかし、1997年をピークに財政のひっ迫によってその額を減らし、現在では米・英・独・仏に続く世界第5位の拠出国になっています。さらにその額を国民総所得(GNI)で割った対GNI比では0.17とDAC加盟28か国の中では第20位、国民1人当たりのODA負担額は83.0ドルで第18位となっています。
来年の2015年が期限のMDGs(ミレニアム開発目標)の8番目の目標である先進国の責任では、2015年までにGNI比0.7%を目標にしていますが、日本はその目標に程遠い現状です。1997年以来ほぼ削減されてきた日本のODAを増やしていく責任があります。

国際協力60周年にあたり、現在外務省はODA大綱の見直しに着手し、今年中の閣議決定を目指しています。それに対して、JANICをはじめとしたNGOは、ODA大綱見直しに関するNGO円卓会議を設置して、NGOとしての提言をまとめて発表してきました。NGO側提言の核心は、貧困削減・格差解消という目的と非軍事利用の堅持です。詳細は、最新の10の提言をご覧ください。この提言を元に、21日(火)には外務省から国際協力局政策課の藤田企画官を招いて「ODA大綱見直しに関する意見交換会」を開催します。ODA大綱の見直しに関心がある市民の方々の参加をお待ちしています。


(雨の中で走っていただいたチャリティラン参加者の皆さんとボランティア。お疲れ様でした)

東北3県視察

テーマ:
JANICとしての震災対応事業は今年3月で既に終了しましたが、震災から3年半が経った東北の現状を直接見ることと、お世話になった東北の方々へのお礼、そしてあと半年と迫った国連防災世界会議に向けた関係者との意見交換のため、大橋理事長と二人で、9月2日から東北3県を駆け足で回ってきました。

初日は新幹線の北上でレンタカーを借りて、遠野、大槌、釜石、気仙沼と回る中で、遠野まごころネットぐるっとおおつち@リアスNPOサポートセンターJVC気仙沼を訪問しました。
2日目は、気仙沼から石巻に下って仙台まで行き、その間に生活支援プロジェクトKピースボート石巻みらいサポート石巻せんだい・みやぎNPOセンターを訪問し、夕方奥山仙台市長を表敬訪問しました。
3日目は、名取、南相馬、福島と移動する途中で、地球のステージつながっぺ南相馬ふくしま地球市民発伝所(福伝)福島大学うつくしまふくしま未来支援センター(FURE)を訪問しました。
そして最終日は、福島市内でビーンズふくしまふくしま30年プロジェクトを訪問した後、東京への帰路に着きました。


(大槌町の震災被災地の現状。復興が進んでいない)


(震災1ヶ月後の大槌町。2011年4月7日)

訪問先には、地元で以前から活動していたNPOから震災きっかけに設立されたNPO、JVCのように震災の際に駆け付けて今でも支援を続けているNGOまで様々です。
残念ながらこの紙面では一つひとつの訪問先で伺ったことをご紹介できませんが、現状と課題を知り、将来に向けての展望を聞く中で、どの団体の会った人々も、一様に口にするのは復興の遅れと先が見えない苛立ちでした。地元のNPOの方々は、多くの場合ご本人も被災者で、仮設住宅や見なし仮設に住みながらNPO活動を続けています。津波で家が流されて高台移転をせざるをえない岩手・宮城の人たちと、放射能の影響で帰宅困難となっている福島の人たちとは多少立場が違いますが、それでも住み慣れた地域から離れて暮らさざるをえず、しかも震災から3年半も経つのに定住するのがいつになるかわからないという苛立ちが募っていました。多くの地域では、仮設から災害公営住宅に移った人は、10%程度とのことでした。

大槌や釜石、気仙沼、石巻と海岸沿いを下ってくると、多数のダンプトラックが土を運んでいる場面に出くわしますが、土地のかさ上げは遅々として進んでおらず、いつになったら工場や住居が戻れるのか分かりません。こんな状況の中、復興の担い手となるべき若者たちの多くは、仙台や盛岡をはじめとした都会に出ていってしまいました。東北の少子高齢化が益々進んでしまいます。

もう一つ、東北の人たちがやりきれなく思っていることは、3年半が経って外部からの支援が先細り、また震災の記憶そのものが薄れてしまうことです。
今回の訪問先には、石巻市の「つなぐ館」や名取市の「閖上(ゆりあげ)の記憶」のように、震災の記録を展示したり、語り部やガイドが震災について語ったり震災遺構を案内したりするNPOによって運営されている施設もありました。亡くなった犠牲者のことを忘れず、震災の記憶と教訓を未来に伝える取り組みが行われています。閖上の記憶では、ちょうど山形から大型バスで小学生たちが学習に来ており、慰霊碑の前で手を合わせたり、語り部の話を聞いていました。


(閖上の記憶の高松事務局長が、子ども達が作った作ったジオラマを説明)

前述のとおり、JANICとしては東北の被災地を支援する活動は終了しましたが、JANIC福島事務所の元スタッフが立ち上げた新NPO「ふくしま地球市民発伝所(福伝)」が行う福島県内のNPOや住民組織と外部団体をつなげる活動や世界に福島の現状を英語で発信する活動を応援します。
また、来年3月の第3回国連防災世界会議に東日本大震災の教訓を伝えるために、今回訪問した方々と連携して、JANICが共同事務局を務める2015防災世界会議日本CSOネットワーク(JCC2015)を拠点に提言活動を行っていきます。

(福伝の事務所。左から藤岡氏、竹内氏。右端はJANICの大橋理事長)


東京都・杉並区合同総合防災訓練

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8月30日に行われた東京都・杉並区合同総合防災訓練に参加しました。
この防災訓練は、東京湾北部地震(マグネチュード7.3)が発生したことを想定して、杉並区の4つの会場で「震災時における都、区、各防災機関との連携の強化及び自助・共助に基づく地域防災力の向上を図るため」に行われたものです。

私がこの訓練に参加したのは、「東京都災害ボランティアセンター アクションプラン推進会議(以下「推進会議」)」の一員としてでした。
東京で将来起こることが懸念されている大規模な地震に備えて、災害時に設置される「東京都災害ボランティアセンター」の運営等に関して、2014年に検討委員会が設置されました。委員会は NPO・NGO、社会福祉協議会、生活協同組合、青年会議所、区市町村行政など幅広いメンバーで構成されており、JANICもそのメンバーです。
検討委員会では、①被災者支援ネットワーク・連絡調整に関すること、②災害ボランティアセンター設置・運営支援に関すること、③被災情報・支援情報の収集と発信に関すること、④人材育成に関することの4つの分科会を設置して議論が行われ、2014年4月から2019年3月の5ヵ年の中期計画(アクションプラン)が作成されました。このアクションプランを具体的に推進していくための組織が、推進会議です。

推進会議の訓練は、3つの訓練会場に先遣隊が分かれて出かけて行って情報収集を行い、それを飯田橋の本部に送り、本部では集まった情報を分析し対応を検討するというものです。私が割り振れたのは高円寺の馬橋小学校の訓練会場で、8時半に着くと既にテントや倒壊家屋の模型などが設置され、訓練に参加する周辺の住民も集まってきていました。



9時に開始された訓練は、消火訓練、地震体験車、倒壊家屋からの救出訓練などを、地元の消防団や地元の住民組織、東京都消防局の職員の指導の下、住民が参加して行われました。
私たち、推進会議のメンバーは、この訓練を実際に震災が起きて住民が避難しているという想定のもと、必要な情報を収集し、飯田橋の東京ボランティア・市民活動センターの本部に送る役割です。



例えば、会場に集まっている人々をざっと見渡して「約300人の住民が避難している。被災者は高齢者が多く子どもは少ない。」と本部に連絡します。また、模擬消火器による消火訓練を見て「住民と消防団が協力して初期消火に当たっている」とか、倒壊家屋からの救出訓練を見て「住民が倒壊家屋から逃げ遅れた住民を救出中」と報告します。小学校の体育館には段ボールで仕切った避難所が設置されていましたが、段ボールは10区画しかなく「被災者の数に比べて避難所の設備が足りていないようだが、馬橋小学校の備蓄倉庫から搬入される見込み」となります。
書類上でシュミレーションする図上訓練と違って、実際に大勢の住民や支援者がいて訓練をしている様子を被災地に読み替える今回の訓練の方が、リアリティがあります。



JANICでは、「東京都災害ボランティアセンター アクションプラン推進会議」の他に、社会福祉協議会や共同募金が中心となって災害時に支援者を派遣する「災害ボランティア支援プロジェクト会議(支援P)」やアメリカのNVOAD(National Voluntary Organizations Active in Disaster)を参考に検討されている「広域災害連携調整機関(JVOAD)」構想など、国内の防災ネットワークに参加しています。
また、NGOの防災・災害対応能力の強化のために、人道&緊急支援の国際基準トレーニングや不測事態対応計画(Contingency Plan)に関する研修事業に取り組んでいます。また、JICAと連携して、NGOがJICAの防災関連研修に参加できるように働きかけたり、災害専門家の人材登録システム構築に協力しています。
これらの取組みを通して、将来起こりうる大規模災害に備えていきます。

ガザにおける暴力の停止を

7月21日の夜、明治公園でJANICも賛同した「7.21 NGO緊急集会とキャンドル・アクション STOP! 空爆 ~ガザの命を守りたい~」が開催されました。


(闇夜に浮かび上がったキャンドルによる「GAZA」とピースマーク)
(JVC写真提供)

集会は、パレスチナ子どものキャンペーン(CCP)、日本国際ボランティアセンター(JVC)などパレスチナで活動しているNGOやアムネスティ、ヒューマンライツ・ナウなど人権団体が中心となって呼びかけ、500人以上が参加して行われました。



集会では、激しい攻撃にさらされているガザの人々からのメッセージが伝えられた後、500人の参加者が手に手にキャンドルを持ち、「GAZA」とピースマークを人文字で描いて、平和を祈りました。



さらに、キリスト教、ユダヤ教(代読)、イスラム教、仏教の聖職者による平和のメッセージと祈りが捧げられました。




7月8日から始まったイスラエル軍によるガザ攻撃は、17日からは地上軍が投入されて激しさ増しています。
7月29日現在、パレスチナ人の犠牲者は1100人を超え、そのうち子どもが180人以上にも達しています。その中には、住民の避難所になっていた国連機関の学校に対する砲撃の犠牲者も含まれています。

イスラエルによる空爆や地上軍の侵攻とともに、ハマスはイスラエルに対するロケット弾攻撃を続けており、同様に非難されるべきです。とはいえ、圧倒的な軍事力によって一般住民の居住地を武力攻撃することが許されてよいわけではありません。パレスチナ人の多くの犠牲者は、子どもを含む一般市民です。

23日には、国連人権理事会でイスラエルの軍事作戦を「強く非難」する決議が賛成29、反対1、棄権17の賛成多数で採択されましたが、この採決に日本政府は棄権しました。ハマスによるロケット弾攻撃に関する言及がほとんどなかったことが理由のようですが、圧倒的な軍事力をもって多くの市民の命を奪う軍事行動を非難するのは当然であり、日本政府の棄権は残念です。

今なお戦闘が続き、多くの命が失われています。イスラエル、ハマスなどすべての当事者は戦闘行為をすぐに停止すべきであり、その上で憎しみの連鎖を断ち切って平和共存の道を歩むべきだと思います。

【参考】パレスチナで活動する34のNGOによる声明(JVCを含む)




7月7日に、NGO-労働組合国際協働フォーラム(以下協働フォーラム)の10周年記念シンポジウムが、ホテル〇〇でありました。

協働フォーラムは、MDGsが掲げる世界の貧困問題の解消などのために、NGOと労働組合が協働で取り組むことを目的に1994年に設立されました。シンポジウムでは、冒頭に協働フォーラム設立の立役者であるACC21の伊藤道雄代表(当時のJANIC常任理事)のスピーチと中嶋滋国際労働組合総連合(ITUC)ミャンマー事務所長(当時の連合国際局総合局長)のビデオレターで始まり、その後MDGs/ポストMDGsの現状に関する近藤哲生国連開発計画(UNDP)駐日代表の基調講演と続きました。

プログラムのメインは、3つのグループ活動報告でした。
協働フォーラムの日常的な活動としては、NGOと労働組合が共通のテーマで啓発活動などを行う「グループ活動」です。現在は、「児童労働グループ」「HI/エイズ等感染症グループ」「母子保健グループ」の3つが活動しています。このうち、児童労働とHIV/エイズは、協働フォーラム設立当初から継続しているグループで、私はシェア=国際保健協力市民の会の事務局長としてHIV/AIDSグループの設立からシェアを辞めた2010年3月まで参加していました。


(HIV/エイズグループの報告)

そのHIV/AIDSグループの活動報告では、組合員や一般市民を対象としたHIV/AIDSの理解促進のためのワークショップやメーデー中央大会におけるレッドリボンモニュメント作成イベント、エイズ写真展やエイズシンポジウムなどを映像を交えて紹介していました。


(「RED CARD TO CHILD LABOUR」)

児童労働グループは、世界中で児童労働に従事せざるを得ない子どもたちの存在を知ってもらうために毎年工夫を凝らしたキャンペーンを実施していますが、ブラジル・ワールドカップ開催中の今年は、「児童労働にレッドカード」というイベントを行っています。会場でも配布されたキャンペーンパンフレットの裏側の「RED CARD TO CHILD LABOUR」と書かれたレッドカードを、シンポジウム参加者全員で掲げて、児童労働反対をアピールしました。


(児童労働にレッドカード!)

母子保健グループは、活動の一環として、妊婦の大変さを体験できる装具をグループの男性メンバーが着用して登場し、母子保健活動の重要性を訴えていました。この妊娠体験装具は会場のNGOブースでも体験でき、シンポジウム終了後のレセプションの際に私も実際につけてみました。10kgの装具はずっしりと重く、床に落ちたハンカチを拾うのにも一苦労でした。次代を担う子どもたちを生み出すための女性の大変さについて、一瞬ではありましたが、身体で知ることができたのは貴重な体験でした。


(妊娠体験装具を付けて、赤ちゃんの重みを体感)

シンポジウムでは、NGO側事務局のJANIC富野次長と労組側事務局の連合国際局大久保局長から、協働フォーラムの今後の方針が発表されました。
これは、10周年を前にして2012年に私がNGO側担当としてまとめた「協働フォーラムの在り方検討」で提示した方向性です。

①テーマを絞った提言活動の活性化(MDGs/ポストMDGs、人権、防災など)
②NGOと労働組合との出会いの場の提供
③既存グループ(児童労働G、母子保健G、HIV/AIDS等感染症G)を中心とした課題別グループ活動の活性化
④マルチセクター連携の視点を取り入れた活動
⑤参加メンバー拡大に向けた広報力強化

他セクターとの連携はJANICの活動の柱の一つであり、労働組合は企業と並んでその中核です。平和で公正な社会を目指すという意味では、NGOも労働組合も基本姿勢はいっしょです。次の10年間をめざして、NGOと労働組合との協働がさらに深まっていくことを期待したいと思います。