日々の細部が明日もくり返せますように(「幾千の夜、昨日の月」 角田光代) | 「天に月、地に山」 愛知・豊橋で日本酒なら

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幾千の夜、昨日の月


皆さんおはようございます。


今日も素晴らしい晴天。


そして月曜日なので本日はお店の定休日です。


六月はここ最近無いくらいの暇さにビビりましたが、来店下さった方々のお陰で何とか無事支払い終われそうです。


いや~とても17年半も店を続けている店の店主の言葉じゃないです(笑)。


永遠に綱渡り人生です。


でも振り返ると自分でお店始めた23年前~毎月そんな感じだった気もします。


そう思うと私の人生は綱渡りが普通なのかもしれません(嫌だけど)。


昨日こんな本を読みました。


「幾千の夜、昨日の月」 角田光代


大好きな角田さんの作品なんですが、実はこれエッセイでした。


小説だと思って勝ったらエッセイでガッカリ(エッセイは殆ど読まないので)。


でも折角買ったからと思い読み出したら、これが想像以上に面白い。


先ず驚いたのが角田さんがバックパッカーの様な海外旅行をしていた人だったと言う事。


最近は女性のパッカーも増えたけど、私と同じ歳の角田さんの世代では未だ珍しい時代。


勇気あるな~とひとしきり関心しながら読みました。


そしてエッセイなんだけど、何処か小説に感じる角田さんの文章力の凄さ。


優れた作家さんはエッセイさえも小説風になるんですね。


そんな中の一文でイスラム教の調理人達の日常を綴った物がありました。


(彼らが何を祈っているかなんて本当にはわからない。イスラム教のお祈りが、そんなふうに願い事を口にするものなのかどうかもわからない。もしかしたら、教典にある言葉をつぶやくだけのお祈りかもしれない。でも、祈る二人が願っていること、もしくは、彼らが思い描く幸福という物が、なんだかそのとき私には感じ取れた、気がしたのである。それは億万長者になりたいとか名声が欲しいとか馬鹿でかい物では決してなく、また、車が欲しいとか新しいテレビが欲しいといった具体的な物品欲とも違って、すり切れるくらい毎日くり返している日々の細部が明日もくり返せますように、というような、至極ささやかな、ごくふつうの、ありきたりの何かである遥に思えた、思えた、というよりは、ほとんど確信していた)

この一文に私は痺れてしまった。


人は結局普通や何気ない日々を一番愛しているし求めてるんですよね。


私もそうだもん!


金持ちになりたいとか、旅行に行きたいとか、時折口にはするけど、本心は日々が穏やかに淡々と流れてくれる事を一番願っているんですよね。


これって意外に人間の根っこの様な本心かもしれない。


角田さんはその真実を嗅ぎ取り、(すり切れるくらい毎日くり返している日々の細部が明日もくり返せますように、というような、至極ささやかな、ごくふつうの、ありきたりの何かである)何ていう、常人では思いつかない言葉で綴ってくれる。


素晴らしいです。


少し嫉妬さえ感じます。


解説をこれまた最近大好きな西加奈子さんが書いてますが、これがまた素晴らしい解説文。


多くを望まないと言ったけど、少し才能が欲しいと思ってます(笑)。


綱渡りな日々。


少しは楽になりたいけど、これこそが(すり切れる位くり返している)私の日々なんでしょう。


綱から落ちない様に精進します。


さー最後の支払い行って、古本屋巡りしてきます。


これも(すり切れる位くり返している)休みの日の大事な行程です。


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