先週実施した国家総合職・政策論文講座でお寄せいただいた質問にお答えします。

総合職以外でも参考になると思うので、ご一読下さい。


Q:論文の中で使う知識は他の受験生とかぶらないような独創性が求められるのですか。それともある程度かぶっても許容されるのでしょうか。


A:かぶっても全然構いません。総合職といえども独創性まで求められる試験ではありません。独創性はある方がよいのですが、独創的なアイデアでも現実性がない机上の空論はかえって常識を疑われることになります。独創性と説得力の両方を持たせるのは試験論文では至難の業でしょう。


Q:経済的な視点だけではなく精神的な絆のような話が出てきたとき、メインは心や精神的な問題について語るべきだと感じたが、経済的な従来の視点についてはどの程度考えるべきか少し疑問に感じた。


A:これは題意によりますが、たとえば「幸福論」や「豊かさ」が出題された場合には、経済的な視点も欠かすことはできません。バランスよく論じるべきです。「幸福論」や「豊かさ」はメンタルな部分に関わるだけでなく、経済や社会構造の変化とも絡む問題です。ただ、メンタルな部分に比重を置いた論述の方がよいでしょう。


Q:過去の問題はおおよそ2問に分かれているようですが、配分割りはあるのでしょうか。また、構成として最後にまとめを入れた方がよいでしょうか。


A:出題によります。昨年度の問題は同じ比率か、4対6ぐらいの配分だと思います。これに対して1昨年以前の問題は3:7ぐらいで小問(2)が中心になります。(1)(2)を通した全体のまとめは通常必要ありませんが、(2)についての結論、まとめは(2)の最後にすべきです。


Q:論文中で「ハーバーマスによれば」と引用すると、「自分の意見があるのか」というマイナスの印象を持たれるでしょうか。

A:引用ばかりで自分の意見を述べる部分がないとそうなります。その不安があるときは引用形式ではなく、自分の言葉に置き換えて自分の意見として論じてください。


Q:公共哲学におけるローティ氏の考え方は、現在もっとも受け入れられているものなのでしょうか。

A:そうではありません。ですから、自分自身で共感できるのであれば使えばいいし、共感できないなら触れる必要はありません。あくまで自分の考えをまとめるためのヒントとして使ってください。


また、質問というより意見えすが、こういうものもありました。


協働は大事ですが、中には市民としての権利濫用すれすれのことをしている人もいるので、市民を万能視するのは危険だと思った。今後の論文ではそこをしっかり踏まえないと机上の空論になってしまうのではないでしょうか。


おっしゃるとおりです。「協働」などそうそうたやすくできるものではなく、市民の側も、行政の側も、辛抱強く付き合って関係を構築していかなければなりません。「地域コミュニティの再生」や「絆づくり」も同じです。かけ声だけで前に進んでいないケースが多いのではないでしょうか。

では次に、現状のどこに問題があるのか、どうすればその障害を除去できるのか、考察を進めてください。そこがきちんと書いてある答案は光ります。