雪と、森と、精霊。
そして人間の物語。
真冬の雪の日にどうぞ。
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泉ウタマロワールド
【狩人と、白銀の鹿】
その狩人は雪深い森を抜け、
山の斜面を歩いていました。
冷気の中を太陽の光が踊り、
雪晴れの世界は笑っています。
真冬にしてはずいぶん暖かな日でありました。
彼は毛皮でできた帽子をかぶり、
銃をかつぎ、
ひざ上まであるブーツをはいて、
雪をかきわけ力強く進みます。
美しい光の一日が、キラキラ過ぎてゆきました。
夕暮れ迫る前、
彼は獲物の銀キツネをしょって、
山の斜面を戻って来ました。
山の斜面を戻って来ました。
風はなく、
冬枯れの木々からパラパラ雪がこぼれます。
静けさが世界の大半をしめていました。
静けさが世界の大半をしめていました。
ほっそりとした月が、冷たい空にありました。
狩人の吐く息は白く、
彼の後ろにはずっと足跡が残っています。
何の予兆もなく、
彼は雪崩にのまれたのです。
あっというまのことでした。
あっというまのことでした。
狩人は真暗で重たい世界に閉じ込められて、
身動きできなくなりました。
どっちが上か、下なのかすらわかりません。
「オレは死ぬのか?」彼は思いました。
狩人は父親も雪崩で死んだことを思い出します。
雪の重みは容赦なく、
全身を押しつぶそうとしてきます。
激しく胸を圧迫します。
吸い込む空気もありません。
腕も、足も・・・もう彼の意志では動きません。
体温は下がり、
”死”・・・という、未知のものが、
彼をがんじがらめに捕えました。
「本当にオレは死ぬのか?」
「本当にオレは死ぬのか?」
恐怖が彼を押しつぶします。
「オレは・・・死ぬんだ・・・」
時間は引き伸ばされ、
徐々にゆがんでいきました。
とうとう魂が体から離れてゆこうとした・・・・・・直前でした。
「ほら、こっちです。私を見て!」