昨日の、恋愛相談を受けた後、ふと思い出したのが
僕がお友達から教えてもらったマイク・ロイコという人の
【クリスマス・コラム】の、お話です。


アメリカの、とあるバーで、スラッツという人が、
『一番美しいクリスマスツリー用の木を手に入れる秘訣』
を語ります。 クリスマスツリー


「悪いけど、金は此処じゃあまるっきり関係ないんだ!」

「ほう、そうかい。そこまで言うんならお前さんの知ってる
その秘訣とやらを話してみろよ。聞いてやろうじゃないか。」

「あれは確か、もうずいぶん昔、おそらく30年位前の事だ。」

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クリスマスイブの前日、さっきも言ったが、俺は叔父貴の酒場の
隣にある空地で(クリスマスツリー用の木の販売の)店番をしていた。

もう2時間ぐらい客足が途絶えたんで、あと30分くらいしたら
店を閉めようと思ってたんだ。


たぶん、ツリーの木はまだ2ダースぐらいは残ってたと思う。
だが、何本かを除けば、残りは見るに忍びないような木が殆どだった。
イブの前日ともなると、残ってるのは、他の客が何度も手に取って
ふるいにかけた物ばっかりだったからな。


俺が手持ち無沙汰でストーブのそばに立ってると、
若いカップルが一組やってきて木を選びはじめたんだ。

名前は知らないが、俺はその2人が、通りのはずれにある、
その界隈じゃ一番貧しい三軒長屋の地下室に住んでるって事は
知ってたんだ。


男のほうは喉仏がやたらにでかくて顎の尖った痩せこけた男だった。
まあ、ひと言でいやあ、目をそむけたくなるような奴さ。
女のほうは、まあまあの線はいってたが、2人とも身なりは、
救世軍の倉庫の地下室から抜け出てきたようなみすぼらしい有様だ。

おまけに、外は、魔女の足もかじかむぐらい寒いってのに、
ふたりとも手袋もはめてなけりゃ、まともな靴も履いちゃいないんだ。

若いカップルが金に困ってるのは、一目瞭然だったよ。


とにかく2人は、ツリーの木を手に取り、前から見たり後ろへ廻って
見たりしはじめたんだ。他の人間が皆そうする様にな。

暫くして2人は、かなりまともな部類に入る木を見つけたよ。


文句のつけようが無いって訳じゃなかったが、悪くはなかった。

…で、2人は俺に値段をたずねたんだ。
たぶん値段は、8ドルか9ドルだったと思う。

だが、俺が値段を告げると、若いカップルは何も言わず、
その木を下に置いて、別の木を探しはじめた。

おそらく、そこにあった木は全部見たんじゃないかな。
さっきも言ったように、まともな木はたいして残っちゃいなかった。
それでも、彼らは俺が値段を告げるたびに、残念そうに首を振り続けた。

結局、2人は俺に礼をいって行っちまった。
だが、歩道に出ると女のほうが男に何かささやいて相談を始めたんだ。
暫くすると男が肩をすくめ、若いカップルはもう一度戻ってきた。


俺はたぶん、マシな木を一本を買うことにしたんだろうと思った。

なのに2人は、そこにある木の中で一番惨めな木の方へ歩いて行くんだ。
その木は、片側は申し分ないが、反対側の枝が半分無くなってるのさ。

2人が値段を訊いたから「その木なら2ドルでいいけど…。その木じゃ、
どんなに念入りに飾りつけしても、見映えがしないだろう」
って忠告してやったよ。


ところがそのカップルは、もう1本やっぱり惨めといってもいいくらい
お粗末な木を俺のところへ持ってきたんだ。そいつも前の木と同じさ。
片側は枝が生い茂っているが、反対側にはまばらにしか枝がついてない。

いくらだって訊かれたから、「そっちも2ドルでいい」と答えたよ。
そしたら、女のほうが男になにか耳打ちして、男のほうが俺に
「2本で3ドルでどうか?」って訊いてきたんだ。


俺がなんて答えたかって? 決まってるじゃねえか!
どっちにしたって、そんな木には買い手がつきっこねえんだ。
俺はそれで手を打ったよ。


だが俺は、もう一度2人に忠告してやったんだ。「そんな木を2本買うより、
あと何ドルか出して、まともな木を1本買ったほうがいい」ってね。

女のほうは、笑って「ちょっと試してみたいことがあるの」と言うだけ。
2人は3ドルを俺に渡して、1本ずつ木を持って帰っていったよ。



もっと幸せに! もっと愛される!貴女のための古武術入門☆


その翌晩。たまたまそのカップルが住んでる建物の前を通りかかった。
それとなく、彼らの部屋の窓のほうを見たら、そこにツリーが見えたんだ。
全部は見えなかったが、少なくとも窓から見える部分は素晴らしかった。


明かりがついてたから、思い切って彼らの家の玄関の扉を叩いてみたんだ。
そしてドアを開けてくれた2人に「外からツリーを見て、どうしたのか
知りたかったもんだから」というと、彼らは俺を中に入れてくれたよ。


入った俺は腰が抜けそうになるくらい驚いたね!そりゃあそうさ!!
なにしろ、彼らの狭い部屋のなかには、それまでに俺が目にした
どんなツリーよりも美しいツリーがあったんだからな。

まるで、こんもりとした森と見間違うほど枝が生い茂っていて、
幹なんかこれっぽっちも見えやしなかった。


2人は、驚いている俺に、その世にも美しいツリーの秘訣を教えてくれたよ。

彼らは、2本の木の幹を、枝ぶりの悪いほうが内側になるようにくっ付けて
それを針金で固定してたのさ。
だが、外側は枝ぶりがいいから、ふたつ合わせれば外からは針金が見えない。
外側は、その木1本だけで小さな森みたいに見えたもんさ。


そのツリーの出来映えに2人があんまり嬉しそうだったもんだから、
おかげでその週はこっちまでずっといい気分で過ごすことができたよ。

それに、あの2人が現れなかったら間違いなく捨てられてたと思う、
あの孤児みたいな2本の木の事を考えても、俺の気分は弾んじまったさ。


これが俺の知っている、一番美しいツリーの木を手に入れる秘訣だよ。


完全じゃない、欠点のある、誰も欲しがらない様な木を2本手に入れる。
だが、そんな木でもうまく両方の良い所をくっ付ければ、
人も羨むような美しいものを作り出すことができる。

人間の場合と同じことさ。



…ちがうかい?


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Merry Christmas