私の生徒の一人に、プラートというフィレンツェの隣町から来ている人がいる。ここは15年くらい前から中国人移住者が増え、今では道路標識にも漢字があったりとまるで”え、ここ中国?”という印象を与えるような場所になった。

 

でもいわゆる中華街という雰囲気とも違う。日本で横浜や神戸の中華街というと中国色を全面に出したレストランやら、ローソンにかわいいパンダがいたりとかで明るい雰囲気だが、プラートは普通の住宅地。イタリアの普通の住宅地なのに道を歩く人は90%中国人、標識も漢字、聞こえてくる言葉は中国語・・というなんとも摩訶不思議な雰囲気なのだ。簡単にいうと、”のっとられた”感満載なのである。

 

そんなプラートの中心地に孤立奮闘するMさんが2軒持っている住宅の1軒を売ることにしたのは8年前。場所は中心地の大通りのすぐ近くで一軒家、改装済みという好物件であったのになかなか売れなかったのは、中国人の買い手が風水を気にして、風水上ではよくない立地(大通りに直角に面する道にあること)が嫌われたこと、そしてなんと隣の住人が中国人なので、中国人客もそれを嫌がったことびっくりなどの理由だそうだ。

 

8年苦労して、値段を下げてやっと売れたというので、”どんな人が買ったの?”と聞くと、”イタリア人。彼はプラートのもっと中国人が多い地区から来たから、この近辺はまだマシだった。でなきゃ、もう一生売れないと思ったよ”とのこと。

 

プラートはもとはというと繊維産業が盛んでイタリアの高級生地の産地であった。そのため裕福な家も多く中心地にはまだその雰囲気が残っている。でもここ15年で街の様子ががらっと変わったのはイタリアの業者が”現ナマを突きつけて買い叩いた”中国人に工場を売ってしまったから、らしい。それからプラートの繊維産業は中国の安い布地の勢いに勝てず、衰退していく。今でも頑張っているイタリア資本の会社はあるが、もう少数になってしまった。

 

そんな経緯でここらでの中国人の評判はすこぶる悪い。が、それだけではない。Mさん曰く、”彼らはイタリアの法律をよく知っていて利用している”らしい。

 

イタリアの法律では、賃貸物件の家賃が未払いであっても住人を保護するために大家が勝手に住人を追い出すようなことはできない。例えば鍵を変えてしまうなどといった行為をすればそれは大家が犯罪者扱いになってしまうのだ。

 

そのため、信じられない話だが、休暇中に近所の人に鍵を渡してペットの世話を頼んだらそこに勝手に引っ越して来て居座ってしまい、家を乗っ取られたが何もできない。という事件も発生している。滝汗滝汗

 

Mさんのおばさんは中国人に倉庫を貸しており、その未払い家賃が5万ユーロ(500万円近く)あるそうだが、弁護士を立てなければ何もできないそうだ。彼らは、地域のゴミ回収税も払わない。なぜなら、取り立てに来ても何も資産がないことになっていて(車や家はリースや賃貸である)それなら法律上手出しできないと知っているからだ。そして、突っ込まれると”ワタシ、イタリアゴ、ワカラナイアルヨ” ニヒヒ(とは言わないだろうが)という反応である。

 

日本に住んでいる中国人はみんな日本語も上手で地域に溶け込んでいる印象であったが・・

ここではこんな風に残念な移住者として嫌われている。

 

それにしてもイタリアの法律も抜け穴が多すぎる。