【一筆多論】

 対テロ戦は、“4正面作戦”の様相を帯びてきているという見方が米国内で広がっている。従来のイラク、アフガニスタンに加えた新たな戦場はパキスタンとイエメンだ。9・11テロから8年半、日本はじめ同盟国は、局地的掃討戦だったテロとの戦いが、終息どころか、広範な全面戦闘へと発展している現実を今一度認識すべきだろう。

 パキスタンのアフガニスタン国境付近には、100人にものぼるタリバン幹部が逃避、潜伏しているといわれる。同時テロを強行した国際テロ組織、アルカーイダのリーダー、ウサマ・ビンラーディンが潜んでいるとの情報もある。本来は情報機関である米中央情報局(CIA)が、パキスタン国内で無人機によるミサイル攻撃を行い、タリバン残党に対し、軍顔負けの掃討戦を展開してきた。

 ところが昨年暮れ、衝撃的な事件が起きた。12月30日のアフガン東部、パキスタン国境に近いCIA基地での自爆テロだ。現場は無人機作戦の司令部で、ベテラン指揮官ら7人が犠牲となった。ヨルダン人の自爆犯は、タリバンとCIAの二重スパイといわれるが、百戦錬磨の情報機関幹部が多数殺害されたとあっては、米国は戦線を拡大・強化せざるをえない。ゲーツ国防長官はすでに新たな作戦準備の方針を明らかにしている。

 一方のイエメン。昨年のクリスマスイブ、デトロイト空港に着陸寸前のノースウエスト機で自爆しようとしたナイジェリア国籍の青年はここでテロ訓練を受け、アルカーイダから爆薬と爆破装置を渡されていた。イエメンはビンラーディンの出身地でもある。

 米軍は現時点での同国への派兵を否定しているが、7千万ドルにのぼる武器供与、治安部隊支援を決めている。まさに“戦闘なき戦場”だ。

 南西アジア、中東での“4正面作戦”にまで戦いが拡大してしまったことは、対テロ戦がすでに、米とイスラム過激派の広範かつ多元的な対決に発展していることを示している。オバマ政権は、イラクからことし8月、アフガンからは来年7月の撤退開始を表明しているが、展開次第では実現も危うくなろう。米国内に“厭戦(えんせん)”気分が高まっていること、共和党がデトロイト事件で当局を非難、超党派の結束が崩れつつあることを考えれば、今後の作戦遂行の困難さは容易に想像がつく。

 日本の海上自衛隊がインド洋の補給活動から撤退したのは、まさにこうしたさなかだった。民主党政権の従来の公約であり、また偶然のタイミングだったとはいえ、米国が強いられている“4正面作戦”への理解を欠いているという印象を与えてしまったことは否定できない。

 インド洋撤退にあわせて日本は、5年間で4500億円のアフガン民生支援を約束した。それは意義あることとしても、洋上補給とは別の話であり、代替えの手段であってはならない。民生安定が対テロ戦遂行に資するという考えならば、20年以上も混乱した政治状況が続くイエメンにこそ、何らかの手当てが必要ではないか。時あたかも、日米安保50周年。記念の年にきしみが生じた同盟関係をたてなおすためにも、“4正面作戦”に積極的な行動を起こすべきだろう。今からでも決して遅くはない。(論説委員・樫山幸夫)

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