額のある風景 | 厠(かわや)イヤミ百景

額のある風景

厠(かわや)イヤミ百景-1621


「東から来る人もある


西から来る人もある


また南から来る人もある


だから北なくしないでね 」



久しぶりにパンチの効いた貼り紙だ。

決して、宝の地図ではない。



思わせぶりに引っ張るだけ引っ張って最後に、「なーんちゃって!」で終わらせるタイプのものである。


綾小路きみまろ氏の口述で例えるならば、



「目もかわいい、口もかわいい、鼻もかわいい、バランスが悪いだけ!」


「顔も良い、 スタイルも良い、育ちも良い、運が無いだけ!」



どこぞの三段スライド方式の挙句のオチ。




こういった類のシャレというのは、基本としているターゲットがちょっと高齢の一歩手前の年齢の皆様向けに設定してある。綾小路きみまろ氏の球をどストライクに受け止めることが出来る世代だ。ここでは、きみまろヒットと呼ぼう。


飲むヒアルロン酸こと、皇潤(こうじゅん)のCMが気になり始めたお年頃の、モダンボーイズ&モダンガールズが、柏手(かしわで)を打ちそうなシャレである。


街角で「青汁の無料試飲しています!」と言えば、高確率で振り返ってくれる人たちだ。




貼り紙からは、書いた側からの「してやったり!」「うまいこと言えたでしょ」的な匂いもほのかにする。


また、定年退職をしてから、急に趣味探しに翻弄した揚句、家庭で楽しく出来る手品にハマりだしたおじいちゃんなども同じような匂いがする。



まだ孫が小さければ、観客としてお爺ちゃんの見せる手品にヨダレでも垂らしながら喜んでくれよう。

「じいじ、ファンタスティック ジャパン!!」と。


俗に言う、O・HI・RO・MEというやつだ。



なんなら、家の中での名称が「ハリー」と呼ばれる日も来るかもしれない。もちろんホグワーツ魔法魔術学校に通うハリーのポッター君から呼び名は来ている。


初めは月一程度だったO・HI・RO・MEも、徐々に二週間に一回程度と間隔が狭くなり、果ては週一になり始めたら・・・、危険だ。受験生のお子さんを抱えてらっしゃるご家庭では特に。




ある日、同じ年代の集まりに孫を連れて行き、うっかり孫が己のことを家同様、「ハリー!おなかすいたよぅ」なんて外で呼んだ日には、照れながらも嬉しさを隠しきれない笑顔で、周りのじいじ・ばあばに我がファンタスティックを説明することであろう。


家でのスター性の説明から火ぶたは切られ、「なんなら今度披露しましょうか?」の方向にまで話は進む。



最終的に「趣味は手品」病がパンデミックよろしく拡がった果ては、その地域一帯で白いハトを一切見なくなる日が来る。



また家庭内の環境によっては、他の家族の引きつった笑顔も逆に披露されることになるだろう。


その家庭内での流行語は、



「いま、忙しから。」


「おじいちゃん、また今度ね。」



で決まりだ。






ところで、貼り紙のセンスというのは文章だけに表れるものではない。

一歩引いて見てみよう。








厠(かわや)イヤミ百景-1620


・・・・・・・・・・・・・・・・。





もう二・三歩引いてみよう。









厠(かわや)イヤミ百景-1619



なぜ、洗面台に直置き?

コンビニの前でたむろしている若者か?



芳香剤と共に一緒に洗面台に置かれている額。

額の中身はもちろん「北なくしないでね」


まるで芳香剤が額の中を覗きこんでいるかのようなシュールな図が完成している。



北の風景を思わせる凝った装飾のされている額の中の貼り紙。

確かに額に入れておきたい気持ちもよく分かる。まるで何かの一つの作品のようだ。

トイレは一つのミュージアムだと私は思っている。管理する側のセンスから始まり人間性をもっと見せて欲しいと普段から思っている。トイレの貼り紙を見ている向こうでは、人間を見ているのだ。



しかし飾るところがなかったのね。




トイレの壁のタイルに画鋲が刺さらなかったのか?

そりゃ刺さらないわ。


普通の貼り紙のように両面テープでは支えきれないであろう、額の重み。

落ちれば散乱するであろうガラスの破片。トイレが逆安全地帯と化してしまう。


いわゆる「クソしてる場合じゃねぇ!」状態だ。




でもこれはこれで、なんだこりゃ?と覗きこんでみたくなる人の心理を逆に突くことになっている。

まあ、覗きこんだ果てには、きみまろヒット年代に持ってこいのシャレが待っている。



「ここで時間を返せ!」と思うか思わないかで、優しさが量られることになる。



もちろん私は、「おいしく頂きました!ごちそうさまです!」だ。





さらには、その額の真上の壁には、








厠(かわや)イヤミ百景-1622


「洗面台拭き

 (ご自由に

 お使い下さいませ) 」



こっ、これは・・・・



「手を洗ったらね、わて、普段からいろいろ豪快やから、もう洗面台がびしょびしょやわぁ。そんなときはな、そうそう、この洗面台拭きで、フキフキしたらええねん。そう、フキフキ、フキフキ、フキフキ・・・・・・・・・・・・・・・って、あらへんがな!キミ!」



これでええのか、こうゆうの期待してたんか?ジブン?



思わず一人ノリツッコミをしてしまったが、見て分かる通り、裸の王様状態。

見えない。


と言うか、ない。




とことん、自分おもろいやっちゃなぁ~。







・・・・・・・・・・・基本、ここのトイレはツッコミ待ち状態なのか?







最後にフィナーレを飾る出口の壁際では、








厠(かわや)イヤミ百景-1623


「帰るとき

   来たときよりも

      美しく    」



トイレからお帰りのお客に語りかけてきた。



遠足に行く小学生に向けた標語のような一句。

遠足でも出発前などに言えば通じることだけど、もう出て行こうとしている人に言ったとしても、もう後の祭、アフターカーニバルではないか。


既に便器は使用済みである。




トイレの出入り口の外側こと、入ってくるところに貼ってあれば、まだ意図するところは間に合うが、トイレエリアの内側の壁に貼られていたのでは、意味を成さない。

また今度のときね、ということになってしまう。



ここのトイレの構造というのは、壁一枚で外の阿鼻叫喚の世界と区別されているだけである。

それ故に入ってくるときに、この貼り紙には一切目が入らなかった。便器たちはさらに奥に並んでいるので、誰もがスタスタと真っすぐ奥に足を運ぶ。


つまりは入ってくるときに振り返らないと気付かないことになっている。

タイミング的には、入って一秒で振り返らないと目に入らない。



それとも便器の話じゃなくて、自分自身の身形への貼り紙か?

「あれ?トイレから出てきたら、なんか美しさ二割増しになったね?たくさん出たの?」的な?


トイレから生まれるミスユニバースもいるのかもしれない。

どんだけ腹の中老廃物を溜め込んでいたのかは、想像ナシよ。





・・・・・にしても、ツッコんでいいのかしら。





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「厠イヤミ百景の一景」

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広島、某ホームセンター内にて
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