いずれも3月に伏見ミリオン座で見た新作映画です。1本目のフランス映画『12日の殺人』は、2020年に発表されたポーリーヌ・ゲナによるノンフィクション作品を、『悪なき殺人』で話題を集めたドミニク・モル監督が映像化したサスペンス・スリラー。

 

2本目の韓国映画『ビニールハウス』は、貧困や孤独、介護など現代の韓国が抱える社会問題に根ざした物語が展開するサスペンス。正規の住宅を失った低所得者層が、農業施設であるビニールハウスで暮らす事例をベースにする。監督は本編が長編監督デビューとなるイ・ソルヒ。劇場は伏見ミリオン座(シニア会員1,200円×2)。グッド!

 

12日の殺人

『12日の殺人』公式サイト

 

以下は映画『12日の殺人』公式サイトに記載の紹介ストーリー(一部)です。

 

2016年の10月12日の夜、グルノーブル署で、引退する殺人捜査班の班長の壮行会が開かれていた頃、山あいのサン=ジャン=ド=モーリエンヌの町で、21歳の女性クララが、友人たちとのパーティの帰り道、突如何者かにガソリンをかけられ火を放たれた。そして、無残にも彼女は翌朝焼死体で発見される。

 

すぐに後任の班長ヨアン(バスティアン・ブイヨン)率いる新たな捜査チームが現場に駆けつける。クララが所持していたスマートフォンから、彼女の素性はすぐに明らかになった。―― 爆弾

 

12日の殺人

 

クララの女友達の協力などもあり、クララと交際をしていた男たちが次々と捜査線に上がります。しかし、クララと関係を持っていた男たちは、一様に彼女が奔放な女性だったことを示唆するのみで、殺人に至るまでの動機は誰にも見当たりません。懸命な捜査は続きますが、やがて確信的な証拠も得られず捜査班は解散となってしまう。

 

そして3年後。ヨアンは新たに任命された女性判事に呼び出され、この事件の再捜査に乗り出すことになる。そのチームには新たに女性の捜査官も加わるのですが…。映画の冒頭で、本編はフランス警察が解決できなかった“未解決事件の一つ”と告げられていますから、作品を見終えてカタルシスが得られるようなミステリーではない。

 

では、どのようにドラマが終着するのか、気になるところです。私の本編を見終えた素直な感想としては、この映画はミステリーとして見るのではなく、どこまでも“刑事ドラマ”として見るべき作品に思えました。事件を解決できないもどかしさ、容疑者たちの言動に対する苛立ち。そんな刑事たちの苦悩を表出したドラマだと思います。パー

 

(2022年、監督・脚本/ドミニク・モル、脚本/ジル・マルシャン、原案/ポーリーヌ・ゲナ、撮影/パトリック・ギリンジェリ、音楽/オリビエ・マリゲリ)

12日の殺人

 

 

 

                                  

 

ビニールハウス

『ビニールハウス』公式サイト

 

以下は映画『ビニールハウス』公式サイトに記載の紹介ストーリーです。

 

ビニールハウスに暮らすムンジョン(キム・ソヒョン)の夢は、少年院にいる息子と再び一緒に暮らすこと。引っ越し資金を稼ぐために盲目の老人テガン(ヤン・ジェソン)と、その妻で重い認知症を患うファオクの訪問介護士として働いている。あせる

 

そんなある日、風呂場で暴れ出したファオクがムンジョンとの揉み合いの最中に床に後頭部を打ちつけ、そのまま息絶えてしまう。ムンジョンは息子との未来を守るため認知症の自分の母親を連れて来て、ファオクの身代わりに据える。絶望の中で咄嗟に下したこの決断は、さらなる取り返しのつかない悲劇を招き寄せるのだった——。

 

ビニールハウス

 

この映画の監督・脚本・編集を手掛けたのは、ポン・ジュノ監督らを輩出した名門映画学校、韓国映画アカデミーで学んだ、若干29歳のイ・ソルヒ監督。初の長編映画の本編で、第27回釜山国際映画祭で新人監督としては異例の3冠を達成したという。クラッカー

 

この新人監督のオリジナル脚本に魅了され、破滅に向かうヒロインを演じているのは大ヒットドラマ「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」のキム・ソヒョン。貧困のためビニールハウスに暮らしていますが、少年院を出所する息子と再び新居で暮らすため、重い認知症を患うファオクの訪問介護士として懸命に働いているのですが…。

 

偶然の事故で亡くなったファオクの身代わりに、同じく重い認知症を患う自身の母親を連れてくるあたり、ちょっと強引な展開の印象があります。ただ、思わず自傷行為をしてしまう精神的な“闇”を抱えたヒロインにとっては、やむを得ない選択なのかもしれません。そこから起こる不幸はエンディングに至るまで途絶えません。パー

 

(2024年、監督・脚本・編集/イ・ソルヒ、撮影/ヒョン・バウ、照明/イ・ユソク、美術/イ・ヒジョン、音楽/キム・ヒョンド)

ビニールハウス

 


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