倉本聡のオリジナル脚本で、主演・高倉健、監督・降旗康男の映画
『駅STATION』(1981年)。健さんの役柄は、前作『冬の華』のヤク
ザから一転して、オリンピック代表の射撃選手でもある道警の警察官。
舞台も倉本作品らしく、雪舞う時季の北海道の銭函駅や増毛駅など。
  
駅STATION

物語は1967年1月から始まる。雪の降る銭函駅ホームでの妻・直子
(いしだあゆみ)と一人息子との別れ。警察官としての職務と、オリンピ
ック代表の射撃選手としての訓練で、家庭を顧みることのなかった主
人公・英次(高倉健)。離婚を受け入れたのは、妻・直子だ。 

列車の上から別れる夫に笑いかけながら敬礼の所作をする妻・直子
のいしだあゆみ。涙のあふれるその演技、出番は少ないが印象深い。

駅SATION 

時は過ぎて1976年の6月。その頃、英次はオリンピックの強化コーチ
を務めていたが、そのスパルタ訓練により選手の造反に合い、コーチを
解任される。同時期に、彼は赤いスカートの女を狙う通り魔を追っていた。

捜査線上には、増毛駅前の風待食堂で働くすず子(烏丸せつ子)の兄
が犯人として浮かぶ。すず子が付き合うチンピラ(宇崎竜童)を利用する
ような形で、すず子の兄をおびき出し逮捕にこぎつける。苦々しい経験。

駅SATION 

そして、1979年12月である。故郷に向かい、連絡船の出る増毛駅に
降り立つ英次。船の欠航であてもなく、ふらりと一軒の赤提灯へ。店を
切り盛りするのは桐子(倍賞千恵子)だが、年の押しつまった30日に
訪れる客はいない。テレビから流れるのは、八代亜紀の「舟歌」だ。

同じように孤独の影を引きずる二人。翌日の大晦日を二人で過ごし、
肩を寄せ合うように過ごすのに時間はかからなかった。しかし、桐子
の過去の男が、実は英次が長年追っていた凶悪犯でもあった、、、

駅SATION 

前妻・直子との駅での別れ、そして新たな(ひと時の)恋人・桐子との
別れ。駅にたたずむ健さんは凛として、やはり寡黙なままである。
健さんを主役に据えて、なかなか秀逸な男女の「別れ」のドラマだ。


ちなみに赤提灯の店「桐子」で二人が出会うのは、12月30日のこと。
12月の晦日の本日という設定だ。これは私見だが、倍賞千恵子の
役名と店名の「桐子」は、彼女が主演した1965年の映画『霧の旗』
のヒロイン(柳田桐子)の名から取っているのではないだろうか。
(もし倉本聡さんに近しい人がいれば、ぜひ尋ねてみたいのだが、、) 

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