9月21日(水) 「希望の語り方」=原田マハ『本日は、お日柄もよく』

 

主人公「わたし」、二宮こと葉。幼馴染の今川厚志の結婚式で、感動的なスピーチに出会い、伝説の言葉の魔術師=久遠久美(くおんくみ)に弟子入りする。そして、政治家であった父の遺志を継いで立候補した厚志のスピーチライターとなる。時正に、政権党から野党に国民が変化を求める流れの中。国民の心をつかんだ演説が時代を前に押し上げていく力となる。それを描きながら、作家もこの閉塞した時代の変革を呼びかけている。

 それぞれの人が、自分の持ち場から参加する。わたしの「希望の語り方」がある。朝井リョウの『世界地図の下書き』にもそれを思った。子ども達への応援歌だ。赤川次郎の『東京零年』はすごい迫力で「日本の暗黒」を告発していた。「あきらめない!」と、19日の国会前行動で参加者は何度もコールした。

――困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。

 三時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩きだしている。

 どうだい? そんなに難しいことじゃないだろ? だって人間は、そういうふうにできているんだ。

 とまらない涙はない。乾かない涙もない。顔は下ばかり向いているわけにもいかない。歩きだすために足があるんだよ。

 君のお父さんとお母さんが君に与えてくれた体を、大切に使いなさい。そして心は、君自身が育てていくんだ。おおらかに、あたたかく、正義感に満ちた心に育ててやりなさい。

――「ほんとうに弱っている人には、誰かがただそばにいて抱きしめるだけで、幾千の言葉の代わりになる。そして、ほんとうに歩きだそうとしている人には、誰かにかけてもらった言葉が何よりの励みになるんだな、って」

 いい物語にはいい言葉がある。

原田マハ『本日は、お日柄もよく』(徳間文庫2013.6 ,648円 )――えっ、3年前に出ていたんだ。それなのに、今も平積みで並んでいるのは、人は今「希望」をもとめているんだなあ!2016年6月21刷。2010年8月に出ているのだが、もしあと1年後であったら、つまり東北大震災とその後の日本の状況の中で書かれるとしたら…。それが、先日ここでえ取り上げた『生きる、ぼくら』であると思った(2012年9月)