「会社の値段」に必要なのは新しい名称とイメージだ | ぶっちゃけ税理士・岩松正記のブログ

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仙台市の税理士、岩松正記が書く、起業・ビジネスネタを中心に、ときどき読感やセミナー感想など。
山一證券の営業、アイリスオーヤマの財務・マーケティング、ベンチャー企業の上場担当役員等10年間に転職4回と無一文を経験後に開業。
モットーは「一蓮托生」

本書は企業の合併買収(M&A)について書かれた一冊。
企業評価と言う点で、会計本の一種と判断しました。

会社の値段 (ちくま新書)/森生 明
¥777
Amazon.co.jp
著者:森生 明
職業:コンサルタント(M&Aアドバイス、㈲M.R.O代表取締役)
発行:平成18年(2006)

目次
第1章 なぜ会社に値段をつけるのか
第2章 基本ルールとしての「米国流」
第3章 企業価値の実体
第4章 「会社の値段」で見える日本の社会
第5章 企業価値算定―実践編
第6章 ニュースを読み解く投資家の視点
第7章 M&Aの本質
第8章 日本の敵対的M&A、米国の敵対的M&A
第9章 日本らしい「会社の評価」のために



著者が言うように、
わが国には「企業買収」というと
非常に悪いイメージが付きまといます。
本書はそれに対して

「会社に値段をつけて売り買いする、という意味では株式の上場・公開もM&Aも変わりません(p.15)」

と、世間の見方を批判します。


これには全く同意


上場だけが目的で、
上場さえすれば一攫千金・・・などと夢見る経営者と

商売拡大の目的で、
カネのチカラで会社を買収していく経営者。

どっちがまともかと言えば、私は断然後者だと思います。


あくまでも、会社は商売のための道具に過ぎない

著者の意見に私も全く賛成です。





著者は米国ロースクールで教育を受けた経験者にもかかわらず
「それが正しいか正しくないかという安易な議論は物事の本質を見誤る(p.70)」
と、米国的な発想には批判的です。


その上で、
我々が安易に使ってしまいがちな
「企業価値」
という言葉の持つ意味、あいまいさについて、
あのニッポン放送株の買い占め時の報道などを引き合いに出して
著者の考える市場論を展開していきます。


途中の難しい数式(株価評価には必須のものなのですが・・・)は
読み飛ばしてもOKで、
M&Aの事例も豊富ですから、
本書は非常に読み応えのある一冊となっています。


ただひとつ、
本書に欠けている視点は、
株式市場での株価形成について
のみと言えます。

しかしこれを考え出すと
株価論は止まらなくなりますし、同時に学問的でも無くなりますからね。

だって。。。

株式市場での株価は、単なる需給バランス、
言わば人気投票の結果
に過ぎないものですからね。。。




まあ、最後の市場価格の話はさて置き、


本書は見た目に反して
非常に真面目な良書です。

これこそ、M&A=悪を彷彿とさせるような
題名に問題があるような
気がするのですけどね~。



会社の値段 (ちくま新書)/森生 明
¥777
Amazon.co.jp

【この本から学ぶズルと工夫】

本書のテーマである会社の値段、
これを言い換えて
企業価値はどうすれば高まるのか。

著者の結論は明快です。

企業価値創造の担い手は経営者であり、その経営者の評価は株主や投資家が行う」(p.90)


つまり、会社の社長次第で
株価すなわち会社の価値が決まるのだ
と著者は主張しています。


株価、価値といった
漠然とした、それでいて金銭で評価されるという相対的なものであっても
それがこうすればこうなる、という絶対的な数式は存在しません。

そこに重要となってくるのが
社長の人間力。。。

もちろん、「運」も含めてのものですが・・・(^^;


いずれにしても
社長が会社のすべて
と言い切ってもいいのだと
私は思います。