本当に洒落にならない「消費税のカラクリ」 | ぶっちゃけ税理士・岩松正記のブログ

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仙台市の税理士、岩松正記が書く、起業・ビジネスネタを中心に、ときどき読感やセミナー感想など。
山一證券の営業、アイリスオーヤマの財務・マーケティング、ベンチャー企業の上場担当役員等10年間に転職4回と無一文を経験後に開業。
モットーは「一蓮托生」

歴史的名著(だと私は思っています)「源泉徴収と年末調整」の著者の新作

参考:30代から始める「源泉徴収と年末調整」  
http://ameblo.jp/iwamatsu-masaki/entry-10561979528.html


ただ、本著は明らかな法令違反に気づいていない問題の書。
それを指摘できるのは、税理士である私の役目かな・・・なんてw


消費税のカラクリ (講談社現代新書)/斎藤 貴男
¥756
Amazon.co.jp

著者:齋藤貴男
職業:フリージャーナリスト
発行:平成21年(2010)

目次
はじめに
第一章 消費税増税不可避論をめぐって
第二章 消費税は中小・零細企業や独立自営業者を壊滅させる
第三章 消費者が知らない消費税の仕組み
第四章 消費税とワーキングプア
第五章 消費税の歴史
第六章 消費税を上げるとどうなるか



本書で著者は、
消費税の仕組みと増税論議を徹底的に批判しています。

特に特筆すべきは
滞納の問題に着目したところ。

消費税は滞納が非常に多い税金なのですが、
その理由は
そもそもの仕組みに依拠しており、
消費税が実質中小企業の負担になっているからだ、
と著者は主張します。

確かに、
消費税は間接税ですから
本当は、負担者は最終消費者であるハズなのですが、
消費者にとって消費税は価格の一部となっていますから
負担感がそれほど無い。。。

その分、実際に納付する中小零細企業の負担感が
大きいのだ、と思います。

これは
納税の現場に携わる私も同感



ちなみに私も消費税増税には反対です。
周囲にいるのですが、したり顔に
「消費税は上げないと仕方ないよね」
なんて他人事みたいに言う経営者が大嫌いです。
増税の前にやることあるだろ?ってのが私の考えですが、
まあ、それはさて置き・・・。


本書も
マスコミの安易な「消費税増税容認」の姿勢を批判し、
仕組みそのものへの批判を繰り返しています。

ただ問題は
じゃあ、どうするの?
という提案が、本書には全く欠けているということ。


ただし著者は
そういった疑問が投げかけられるのは
想定済みで、

この本は対案にこだわらず、
ただ、現行の消費税に問題点があるのだ、ということを
読者に気付いてもらうだけで
出版の意義は果たせている、

と開き直っています(p.212~213)



極めて旧来の「野党」的なスタンスだな~と思いますが、
さもありなん。

本書の情報源は、共産党や民商(民主商工会)だから
なんですね。。。これも著者は開き直っていますがw



正直、批判のオンパレードで
段々とツラくなってくるのですね。

消費税が輸出戻し税だ、とか

消費税は弱者である派遣や一人親方を生みだす仕組みだ

という主張も、
ある面理解できるのですが、
共感まで至らないのは
本書が単なる批判の羅列だからではないでしょうか。

さらに記述の中で、
税務署と県税事務所の混乱らしきところがあったりするのは(p.85)、
本当に残念です。




それでいて
根本的な問題がありまして・・・。

本書では

税理士の存在が全く無視されている(笑)



何故か?

これは想像ですが、
著者の主張の主張の拠り所になっている
民商、共産党は
国税と税理士を一体視していますので
その影響かな・・・なんて。

まあ、所詮、税理士は
今の制度がなければ存在意義はないのですから
ある意味、
国税と協力関係になると言えなくもないですけどね。


でも、
本書で著者が何度も強調している

「年商五千万円の規模では、中小企業は専門の要員を置くことは不可能に近い」(p.92)

という点は…
そのために税理士がいるのですけどね。。。

ガン無視なんですよね~(笑)






さて繰り返しになりますが、
本書でいう
消費税が、実質中小零細企業の負担になっているということや
消費税増税が不公平の極みであるという点などは
私も同意する点があります。

しかし、
あまりにも偏向している点が感じられる。

下に書きますが
明らかな法律違反についての
言及もない。



その点で本書は、

本当に本当に、
そして非常に

残念な一冊であります。




消費税のカラクリ (講談社現代新書)/斎藤 貴男
¥756
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【この本から学ぶズルと工夫】

本書では、
税務調査における国税の横暴を強調した箇所があります。

ある納税者の調査立会に
「税金に詳しい I 氏」の立会いを国税が認めず、
その結果、消費税の他、無申告加算税も取られた、
というのがあります。

ここで著者は
国税が I 氏の立会を認めなかった点を
納税者自身の意志で同席させるのだから認めないのはおかしい、
確定申告を代行してもらったわけでもないので税理士法とも関係ない、
と書いてますが、
これは完全な間違い

他人の求めに応じ、税務代理行為ができるのは税理士だけです。
それは有償無償関係ありません。

要するに、ニセ税理士はダメってことです。

国税がニセ税理士の立会い認める訳ないですって。。。


これは本当に良くない記載ですよね。。。



それと、
本書でかなりのページを割いている
仙台の事例。。。
私は知りませんでした(笑)

ってか、全く地元でも話題になってないのですが・・・。



「源泉徴収と年末調整」が名著(だと私は思っています)だっただけに
本当に残念ですね。。。