Portalってなんだろう? -2-
<話題の履歴>
前回は少し古い話を紹介しました。
あの頃もそうなのですが、PortalとかMenuというのは情報リテラシーの低さをカバーし誰にでも利用できる情報システムを目指すことなのではないでしょうか?
更には誰にでも業務を遂行できる環境を提供することではないでしょうか?
もう数年前のことでしょうか?世の中でKnowledge Managementという言葉がはやり、社内の知識を如何に活用するかをテーマに様々なシステムが開発されました。
勿論LotusもLotus Notes/Dominoで蓄積した知識を社内で如何に活用していくかを考え、RavenというProjectでLotus Knowledge Discvery ServerやLotus Extended Search、K-Stationといった製品を世の中に出したこともありました。
K-Stationは、今で言うPortalの構築Toolであり、Discovery ServerやLotus Extended Searchは様々な情報や人的Resourceを社内のあらゆるResourceから探し出す検索エンジンのようなものです。
しかしこれらの製品はIBMへのLotusの統合により、K-StationはWebSphere Portalに統合され、Discovery ServerやLotus Extended SearchはWebSphere Information Integrator Omnifind Editionにその地位を譲る形となっています。
では、あのRaven ProjectでLotusが目指していたものは一体なんだったのでしょうか?
その前に、少しその頃のUSの状況を見て見ましょう。
今では日本でも定年まで同じ会社で働くということは無くなりつつあり、新しい会社に転職していく方も随分増えてきました。
USでは元々高い報酬が得られ自分が力を発揮できる会社に転職することは当たり前のように行われていたわけです。
残念ながらIBMでも元LotusやTivoliの人たちがIBMを去って他の会社で活躍されている場合もありますし、元IBMの社員であっても他社に移って活躍されている事例は数多く存在します。
逆に他の会社からIBMに入ってきて活躍されている方もおられるのです。
このように知識や経験、Skillを持った人材が流動的に会社を動くようになると、会社の中ではどのようなことが起こってくるでしょうか?
ある部門で業務を良く知っている人がある日突然会社をやめてしまった場合を想像してみてください。
後任者は業務もよく分からなかったり、過去のお客様や取引先との経緯が分からなかったり、前任者は業務に精通して効率よく仕事をこなしていたのに、後任者にかわって業務が滞ってしまうといったことも発生してしまうかも知れません。
USでは、こういった人材の流動をカバーするために、前任者の知識を有効活用することを考えざるを得なかったのでしょう。
そこで、LotusがRavenで実現しようとしたのは、社内のMailのやりとりやForum DBへの書き込みなどを効率的に探すための方法を提供することだったのです。
そのためにLotus Extended SearchやLotus Knowledge Discovery Serverが登場したのです。
更に、仕事のKnow Howは個人が持っていて、Know Howを持っている人をいち早く探してコンタクトして課題を解決していくことが、業務を迅速に進めるための最良の方法であるという考えの下、分野のSpecialistを探すKnow Whoを重視し、Specialistに点数を付けて誰が一番良く知っているかまでも情報として集積しようとしたのです。
幸いLotusはForumや掲示板で情報を蓄積したり、MailをやりとりするためのNotes/Dominoや正式文書を管理するためのDomino.Doc(今ではDomino Document Manager)、Workflowを実現するためのLotus Workflow、外部や社内でのCollaborationを実現するQuickPlace、Instant Messagingやe-Meetingを実現するSametimeなど、CollaborationやCommunicationに必要なToolは全て持っていました。
また、世の中ではLotus Notes/Dominoが半分以上のシェアを持ち、多くのお客様でNotes/DominoのDBで蓄積された情報は数多く存在していたのです。
Ravenはこれらの情報を如何に活用していくかという課題に取り組んだのです。
また、K-StationはDiscovery Serverで集めた情報を利用者に活用してもらえるように考えられました。
Menuのように画一的なものではなく、利用者によって画面を変えたり、Menuではなく実際に中身を表示することによって情報の活用を促進していくこと、業務に必要な情報を提供していくこと、更には業務の流れまで考えて効率よく業務が遂行できるような画面を提供していくことだったのではないでしょうか?
ここに、Portalの根本的な考えがあるように思えてなりません。
1980年代後半に流行ったMenuとPortalとの違いというのはここにあるのではないでしょうか?
皆さんが導入されて運用されているPortalをもう一度見つめなおしてみてください。
本来の業務を遂行するために必要な情報や業務内容に応じた内容を提供できているでしょうか?
業務のSpecialistの仕事の仕方を模倣できるような内容を提供できているでしょうか?
単なるMenuに終わっていたとしたなら、1980年代後半から何も進化していないということになるかも知れません。
Portal構築にあたり、一番考えなければならないのは、業務の効率を上げるための情報提供やプロセスの定義かも知れません。