2人の先生の「言葉」 | 山あり谷あり、カーブあり

山あり谷あり、カーブあり

家でも仕事でも一緒に頑張ってきた夫と妻のブログ

10/4は、MRIとPET検査の結果報告と、

これからの治療についての話し合いの日

だった。


ひとつでも、明るい可能性のある話が聞ければ

いいけど・・・と願いながら、待合室で数時間

待った。 予約時間なんて、有ってもないようなもの

だな、と溜息をつきながら。


そして、予想はついていたけれど、検査の結果は

やはり全く希望が持てるような内容ではなかった。

原発巣は肺がん、肝臓、リンパ節、背骨、大腿骨

その他への転移。 脳にだけはまだ転移は見られ

なかったが、本当に癌は、PET写真を見るだけでも

ぞっとするほどに、全身に広がってしまっていた。


先生の言葉は、「肺癌で治る可能性があるのは、

ごく初期の場合です。ここまで広がっていると、

残念ながら治りません。」

・・・と、抑揚のない、まるで死刑宣告でもするような

感じで告げた。

そして、今後の治療は、少しでも延命する事と、

骨折を防ぐことが目的で、抗がん剤治療と放射線

治療を行うそう。


前回伺った時に、免疫治療などについて尋ねて

みたが、その先生は全否定だった。

今回は、血管内治療や、温熱リンパ療法について

尋ねてみた。

すると、「それは何ですか?」 という質問が返って

きた。

私は、ネットで検索して得ただけの拙い説明の

仕方で・・・・こういう治療です、と説明してみたが、

う~~ん・・・・と首を捻って、それは聞いたことが

ないので、答えようがありませんね、と言われて

しまった。


大学病院のお医者さんは、結局 「標準治療」 以外

の事は何も調べてもいないのかな・・・・・。


その日の帰り道、

「しかし、ホントに教科書通りの事しか言わないねぇ」

と、わざと笑いながら夫に言った。

「明日、お会いするN先生にもっとよく聞いてみようね」



そして翌日、私たちは朝早くに家を出て、車で2時間

ほどかけて、某大学病院のN教授の元を訪れた。

N先生は、国内外問わず活躍なさっておられる

高名なお方だが、本当にお会いした瞬間から、

ストン・・と心が楽になるような、優しさに満ちた方

だった。


持参したデータを見て頂いた後、先生が静かに

尋ねられた。

「担当の先生からは、厳しい事を言われたでしょうね。

予後についても、具体的に告げられましたか?」


「具体的にあとどれぐらい、とは告げられません

でしたが、もう治らないという事、そしてこれから

どのような症状が出てくるという事は、告げられました」

と答えた。


「そうでしょうね。 でも、それは全くアテにはならない

から、その言葉をそのまま受け止めて、心を沈ませては

ダメですよ」


それから、N先生は1時間ほどもの時間をかけて、

ゆっくりと色々な話をし、私たちの話を聞いてくださった。

お話はおもに、人間に備わっている免疫力、そして

治癒力の大切さ、そしてそれらは心の持ちようによって

結果を大きく左右するのだというような内容が中心

だった。


私達は、「この病気は治りません」 と言われて

いながら、副作用の大きい抗がん剤治療を受ける事

への心配や不安、そして代替療法についても尋ねて

みた。


先生は、まず、免疫療法について詳しく触れられた。

免疫療法を行う病院に尋ねる患者さんの多くが

すでに手術も受け、抗がん剤治療、放射線治療を

散々試した結果、すでに手の施しようがなく体力も

消耗しきった状態で、免疫治療に臨む・・・といった

ケースばかりなので、どうしてもデータ的に良い結果

を残すことが難しくよって、正式な標準治療として

認可を受けられる状況になっていないという現状

があるとの事だった。

だから、現在、免疫治療をすれば、〇〇パーセント

の方は助かりますよ、というデータが揃わないため

倫理上、医者はそこにある抗がん剤を断固否定して

免疫療法をおすすめする事はできないのだそうだ。  

でも、免疫治療に従事するドクターたちが、必死に

頑張って、いつかは保健治療(標準治療)に乗せ

られるように、努力を重ねておられること、そして保険

が利かないために今は何百万ものお金がかかって

いるが、それらは決して儲け主義でやっておられる

のではなく、現状ではどうしても必要な費用なのだ

という事も、よく知っています・・と述べられていた。


最後の決断は、自分らで決めなくてはいけないのだ

とは知りつつ、私は 

「私達は何を選べば良いのでしょうね・・・・」

と呟いてしまった。


抗がん剤が有効だったとされるデータは、その治療

を受けた患者さんのおよそ50%。 その

【有効であった】 とされる

判定とは、癌の大きさが直径で元々の癌の50%

以下に縮小し、その状態が4週間以上続けば、

【有効】 としてカウントされるのだと、先生が教えて

くださった。 

だが、非常に数は少ないけれど、中には2パーセント

ぐらいの確率で、その抗がん剤によって、癌が全く

消滅したという患者さんもおられるのだそう。 


「抗がん剤によって、少なくとも何らかの効果が50%

の方々にある以上、それを全く受けないという選択

は、どうかと思います。

ただし、薬が効果を上げるかどうか・・・というのは、

大体は1クール試せば分かってきます。 ひとつの

薬を試して、ダメならまた別の抗がん剤、それも

ダメならばまた別の・・・・と繰り返していくうちに、

正常な細胞まで次々と壊され、免疫力もとことん

落ちてしまいます。 

ご主人の場合、とりあえずは1クールだけ・・・

抗がん剤をを試してみるという選択もありかと

思います。たとえ、それが効かなかった場合でも、

1クールでしたら、免疫の損傷は致命傷になる

ほどではありませんから。 その後、免疫治療でも

あるいは今まで通り、ご自分の治癒力を高める

生き方を続けてみてはどうでしょう。」


最後に、先生はこう仰られた。

「自分はいつ死ぬのだろうか・・・なんて身構える

のは全く意味がない事です。なぜなら人間は誰もが

等しく、あちらから呼ばれる「その時」 が来れば、

呼ばれるものです。 そこから先は、また人生の

第二ステージです。 でも、今はまだこちらで

自分のやりたい事や、やるべき事を一生懸命

楽しめばいいんですよ」



本当に、優しい神様のような・・・・N先生と過ごした

時間だった。