それは突然だった。


キュリッキュリッ


隣のおばあちゃんからでている音か

新しいゲップのカテゴリーに含まれる音なのか


少し甲高い、ベルトとベルトが擦れるようなそんな音にも思えた。



帰国して、時差ぼけの私が気付いたのは、牛タン弁当を食べて、
温かいお茶を飲んだ後だった



お腹も満たされ、余裕が出来たから周りの音がきこえたのだろう。


いやな気分はしなかった。



可愛らしいカーディガンを着た隣に座るおばあちゃん。




感覚が狭くなる。






おばあちゃん、紙袋に手をかける。



中を覗く。





ここだ!



そう思った。



一瞬のチャンスを逃さずに、
間髪いれずに、


『何がいるんですか?』



聞けた!



婆『鳥です。』




私『トリ?インコですか?』




婆『そうよう。』


photo:01




もう16年一緒にいるって。


10年ほど前から自分の羽を噛んでしまって、飛べないって。


卵もたくさん産むって。
photo:02




でも孵らない。
雄がいないから。


自分も昔インコを飼っていたことを言うと、おばあちゃんは懐に彼女をそっと入れた。


安心からか、鳴くこともなく、静かに、たまに頭をくるくるっと愛らしく動かした。





少し世間話をした。


私は窓の外を見た。

田園が続く。


金子みすゞの詩を思い出す。

〝私と小鳥と鈴と〟

そんなだったような。

このインコは、お空も飛べないし、
孵る卵も産めない。

自分で羽も食いちぎってしまう。

ストレスかストレスじゃないかって言ったらストレスはあるんだと思う。


でも、このインコはおばあちゃんの愛を持ってる。


おばあちゃんと何度も名古屋の娘のところに行ってるって。


飛べなくても、床を元気に走り回るって。


ハイテクな新幹線にも乗せてもらえるし、
彼女がかわいそうだなんて思わなかった。


みんな違ってみんないい。
お空を飛べなくても鳥は鳥だわ。

鈴がならなくても鈴として生きれる。

そこにいるだけで温かい空間をもたらしてくれたおばあちゃん。

どうもありがとう。


久しぶりの日本。
寒くなっている日本。

やっぱり日本が好きだなぁ。

ムーミンパパのぬいぐるみを手に持ち、24歳女子、今夜はムーミンパパと共に寝るか迷うなうシラー


伊藤みき