低下する情報システム部門の価値 | A Day In The Boy's Life

A Day In The Boy's Life

とあるエンジニアのとある1日のつぶやき。

私は入社したのが2000年のため、それ以前の情報システム部門の置かれていた状況と言うものを分かりませんが、入社直後でも社内の人から情報システム部門への寄せられる期待や価値というものは大きなものと感じさせてくれるものがありました。


経営陣が情報システム部へ求める期待と、現場の人が情報システム部へ寄せる期待というものはまったく異なる性質のものですが、少なくとも私を含め現場で働く情報システム部員には、その価値を身を持って感じることができていました。

それは以前に書いた「トラブルバスターの過去と今 」の


> ある人に聞くと、私たち情報システム部の人間が大勢でフロアに現れるととんでもない事件が

> そこで起こっているのではないかと思っていたそうです。


というように、社員の情報システム部の人たちへの憧れやPC関係のヘルプデスクならあの人たちに任せれば大丈夫だと言う期待を大きく持っていたからのように思えます。


社内情報システムの構築についても同様に、当時のインターネット上にある様々な技術的な要素を社内に持ち込む事は、相当な手間とコストがかかり、それでいて特殊な技能が必要な事だと社内にいる誰もが思っていましたので、当時新人だった私に対しても期待をかけてくれていたものです。

当時は低コストでオールインワンなパッケージもそう見当たりませんでしたし、外注に出すにしてもコストの面から、敬遠されがちでした。


この憧れや期待が徐々に薄れだしたのは、先の記事で書いたとおりだと私は思っていましたが、その明確な理由と言うのは、


黙って引っ込んでいられなくなった玄人 @ 404 Blog Not Found


にある、


彼ら職人がそういられたのは、彼らは「いい仕事」さえしていれば、客が満足してくれたわけだ。「口は悪いが腕はいい」職人たちに、かつて素人たちは優しかった。
しかし、かつては職人が提供していたモノゴトが企業によって組織的に提供されるようになると話は変わってくる。大量生産で価格は安く、それでいて管理工学により品質は高く、極めつけにそれを口が滑らかな営業が売る。これで口は悪いが腕はいい職人たちもたまらない。結局のところ、客は「口もうまいし腕もいい」方がいいのだから。

という文面を読めば腑に落ちます。

私たちもかつて職人で、情報システム部門としてのサービスを様々に提供していましたが、今ではそれは情報システム部門を頼りにしなくても手に入れることができるようになっています。

そうして職人たちへの期待は最終手段という位置づけになってしまい、いわば保険のような存在になっています。

何かあったときのために必要な存在だけれども、平時は特に必要ない。

昔は、かすり傷一つで大騒ぎしていた事は、その人たちにとってそれがかすり傷であるかどうかさえも分からないから騒いでいたのであって、今ではそれが致命傷にはならないと言う事がはっきりとわかり、またバンソウコウや消毒液が簡単に手に入り自分で応急処置できる時代になっています。


情報システム部で開発するよりも優秀でオールインワンなパッケージが世の中にはあふれ、海外では低コストで開発ができる基盤が整いつつあります。

さらには、全ての人のITスキルレベルが、2000年の時より数段は向上していますので、情報システム部門に寄せられる期待は当時のものより高いレベルになっていますし、多少面倒な事はあっても情報システム部門に依頼するより安く、そして早く業務を改善するプロセスを見つけることもできるようになっています。


そして、


黙って引っ込んでいられなくなった玄人 @ 404 Blog Not Found


方策は、結局のところ二つしかないのではないか。
1. 口のうまい営業を挟む -- 染之助・染太郎方式
2. 自ら口もうまくなる -- ホンダディーラー方式

の、1の方には期待ができません。

何故なら情報システム部門に勤める営業(営業というよりはマネジメントする人たちになりますが)は、かつて職人だった人たちであり、その人たちは口がうまくないのだから。

結局のところは、部員の個々が口がうまくなっていくしかない。


突き詰めれば職人も職人として生きていくことは可能ですが、それは並みの職人ではなく人間国宝並みに優れた技能を身に付けていなければなりません。

それであれば多少口が悪くても存在価値を認められるでしょうけど、果たしてそのような有能な人が社内情報システム部門にとどまる事が許されるかは疑問です。


優秀な職人たちが、オートメーション化の波にさらわれていったように、情報システム部門の中でもそのような動きが起こりつつあります。

情報システム部門は、技術に長け、口がうまくなりつつ、皮肉な事にそのオートメーション化を推進するためのアイデアを持ち合わせなくてはならなくなってきているわけです。