◆ホテル・マーケティング~時代は変わる
ホテル・マーケティング ※アレンジ:イッシー
暗く寂しい東京砂漠
涼しげな風に髪が揺れる
サルスベリの甘い香りがほのかに漂い
はるか前方には かすかな灯りが見える
頭は重く 視界かすむ
どうやら今夜は休息が必要だ
カランとドアの鈴が鳴り
戸口に女が現れた
僕はひそかに問いかける
ここは天国? それとも地獄?
すると 女はローソクに灯を灯し
僕を部屋へと案内した
廊下の向こうから こう囁く声が聞こえる
ようこそホテル・マーケティングへ
ここはステキなところ
お客様もいい人たちばかり
ホテル・マーケティングは
数多くのお部屋をご用意して
あなたのお越しをいつでもお待ちしています
カルティエの宝石のように繊細で
BMWのように優雅なその曲線美
美しいボーイたちはみな
彼女たちに心を奪われている
中庭では香しい汗を流して
ダンスを踊っている人々
思い出を心に刻もうとする者
すべてを忘れるために踊る者
そこで僕は支配人に告げた
「ワインを持ってきてくれないか」
すると彼は「そのようなスピリットはここ数年一切ございません」
それでも人々が深い眠りについた真夜中でさえ
どこからともなく 声が聞こえてくる
ようこそホテル・マーケティングへ
ここはステキなところ
お客様もいい人たちばかり
どなたもホテルでの暮らしを必死に過ごしている。
口実の許すかぎり せいぜいお楽しみください
カッコいいだけで伝わらないデザインの天井
グラスには子ども騙しのシャンメリー
誰もが自分の意思で儲けの囚われの身となった者ばかり
やがて 大広間では祝宴の準備がととのった
人々は 煽ったセリフを突き立てるが
誰ひとり内なる獣を殺せない
気がつくと僕は出口を求めて走りまわっていた
もとの場所に戻る通路を
なんとかして見つけなければ・・・
すると 夜警がいった
「落ち着いて自分の天命を考えるのです
チェック・アウトは自由ですが
ここを立ち去ることは永久にできません」