Mws#56 3.11のこと、いわきひだまりワークショップのこと | イッセー尾形・らBlog 高齢者職域開拓モデル事業「せめてしゅういち」

Mws#56 3.11のこと、いわきひだまりワークショップのこと

3.11インタビュー

 

 

2007年の盛岡のワークショップで祖父が逝くのを耐えている少年を励ます農婦に扮し、野太い声で「雨ニモマケズ」を朗唱した石原さん。東京の教師ワークショップにも参加。計9回の参加だそうです。昨年は4月のいわき、大船渡、山形と3つのワークショップに参加しました。ぐれた息子と寄り添う元教師の母親が、息子と並んで明日の方を向き、裕ちゃんばりのエアドラマーを披露する山形でのシーンは目に焼き付いています。

日帰りで東京に来られるとのことで、落ち合ってお聞きしました。私にとっても楽しい時間の作り方でした。

 

3.11

2011年の3月11日はね、盛岡の図書館の喫茶店にいた。書棚から本が全部落ちてきて、窓からみたら道に人があふれていた。外に出たら余震がきた。近辺の事務所の人たちもみんな路上にいて、上司のような人が、「今日はブレーカー落として皆帰れ」って言ってた。夫は車で来ていた。電話したけどつながらない。何度も電話してやっとつながった。夫はちょうど駐車場から出るために精算して、バーがあがったところだった。路上に出て、私は電車で帰るって言ってたな、と思って自分だけ車で帰るところだったらしい。電車が止まるとか考えないのかね、ほんとに。

 

道には人がいっぱいで、みんな同じ行動をしているのに、一人一人は自分のことで精一杯って感じだった。道路に異常はなかったけれど、信号が止まってしまった。ゆっくり運転して普段より半時間くらい遅くなったけれど、日のあるうちに花巻の家に帰った。停電になっていて、すぐにテレビは見られなくて、沿岸部で何が起こっているか知ったのは、夜になってワンセグを見てから。堤防を大きな波が超えてくるところとか。で、現地のそばで中継しているアナウンサーが、思わず「沖の方に200人くらいの人が浮いているという情報があります」と言った。普段、決して放送では言わない言葉。ぎょっとした。見ているものの向こうに放送では言えない状況があるってことがはっきりした。ニュースでは「車が流されています」とは言っても、人が流されているとは言わない。でも、車が流されているは人がたくさん流されているということだと、当たり前のことに気付かされた。

 

電気は翌日の夜中11時半ころに通った。今日も暗いから寝ようと思ってたら、パっとついた。水道は大丈夫。ガスはプロパンだから大丈夫。うちらの方でもスーパーの棚が空っぽになることはあったけれど、コメがあって水があって、野菜があればなんとでもなるから。同じ岩手県でもね、なかなか手助けに行くというのも難しかった。薬剤師の友達がいて、定年で仕事やめたとたんだったけれど、駆りだされて診療所のボランティアに行った。直後から医療はいるからね。瓦礫の中に片付けられていないご遺体を目にするような、そんな感じだったと聞いた。

 

2014いわきワークショップ

最初のワークショップは2007年盛岡。震災の前のいわきのワークショップにも参加している。その時の人と常に連絡をとるというようなことはなかったけれど、でもどうしてるかな、心配だった。

 

去年福島県いわき市の仮設住宅集会所でワークショップがあったでしょ。あれは、フクシマのあと、関東方面へ避難した人たちが主催したよね。その中の一人から手紙が来たの。

「石原さんは遠くて来られないだろうけれど、知っておいてほしい」って手紙。

行くわよー。遠いって、行けないわけないもの。すぐ電話して、行きますって伝えた。その間はね、ワークショップやったところから車で30分くらいの温泉施設みたいなところに主催者と泊まった。女の子3人いたよね。かわいかったね。

 

いわきひだまりのワークショップはよかったね。(避難所の常連は80才以上の女性ばかり、その人を対象に、雄三さんはちいさいころのことや、結婚前に夫となる人の顔をどうやって見たかとか、働いたときの子育てのことを丁寧に聞いていった。他のより年若な参加者は年配者について、個別に人生の聞き取りをして、それを本人になりかわって舞台で話すという形をとった)

ああー、こんな風な形もあったのかと思った。始まるまでは、いつものように雄三さんが参加者の弱いところとか、もっとやれとか、そういうのできないなと思ってたけど。良いやり方だったね。自分のことを話す人の隣で、少し間違ってると、「いや、違うよ」とか、いいタイミングで訂正したりね。楽しかったと思うよ。歌だって、歌詞書いて練習してきたり、雄三さんに言われた歌より、こっちがいい、って自分で歌決めたり。

 

そのあと、フィクションでお年寄りが家族から怒られるってシーンで、怒られる立場を演ったでしょ。あのときだって、雄三さんから逆襲していいよって言われたら、絶妙なタイミングとユーモアで、言い返してたよね。

 

田舎のね、農村の暮らし、私は教師だから知ってると言いきれはしないけれどね。でも、農業やってるコミュニティって、昔からすごいユーモアや、ウイット?機知、そういうのがあるのよ。ちょっと卑猥な話しだったり、軽口とか。うまい言い回し、そういうのが、うまく出てきたよね。きっと暮らしの中にあって、みんなで作業中にそういう、くすぐる、みたいな応酬がいっぱいあったんだ。そうじゃないと、楽でもない農業を協力して続けられるわけがない。

続きます。