成城商店街、夜の八時半。
帰宅するいそくみの前に、若いママと小学校低学年くらいの男の子がいました。保育園帰りというよりちょっとしたお買物帰りかな?ベージュのロングカーデをはおった細身のきれいなママは、もう閉店となっているブティックのウィンドウを覗いている。最近は、ヨーロッパの店のようにクローズ後もウィンドウには照明をつけて、ディスプレイを見せる店が多くなってきています。
男の子が片手のお菓子を食べながら「何見てるの?行こうよ」と促すと、ママは
「ちょっと待って…これ、すごく可愛いと思わない?」
ウィンドウに飾ってある、淡い色のヒールパンプスに見入っているのです。
しかし男の子はにべもなく
「似たようなの、持っているでしょ。おうちにある靴をまず見てから考えたら」
と。なんて利発な…言ってることが四十代の夫のようだ。
やがて二人はウィンドウから離れ、手をつないで商店街を歩いて行きました。
ママの気持ち、わかるわあ。子育て中には必需品の汚れの目立たない服、歩きやすい靴ばかりでなく、おしゃれして出かけたくなるのよね。たまには一人で。
もう7,8年もすれば、子供は部活や塾で忙しくなり、ママは8cmヒールを履いて仕事に行ったり、友達と夕食できるようになる。
でもその時はその時で、このウィンドウの前を通って思うに違いない。
子供と手をつないで夜の商店街を散歩した、あの頃も楽しかったな。あの頃にはもう戻れないんだな…って。
(私がそうだから)