荷物の多い朝、少しだけ濡れた折畳み傘が他の人に当たるのもよろしくないので網棚(といっても今はアクリル棚)に載せました。新橋について降り、しばらくして(なにか荷物がすかっとしたな)と思ったら傘がない。電車にわすれてきてしまった。

この折畳み傘は30くらいの頃?必要があって小田急デパートで買った。3000円。今は傘がもっと安くなっているが、当時デパートの傘ワゴンは3000円だったのです。とびきり気に入ったデザインではないが、小学校のタケイ先生の「雨の日は黄色が目立ち、事故に遭いづらい」という教えを思い出して黄色い花のを買った。収入は十分あったし、買物を吟味する時間のほうが惜しかった時代でした。

持ち重りも適度、丈夫で壊れないので海外出張にも持って行った。医療営業時代、冬の小松空港のドカ雪で骨が外れたが、修理に出したら見事に再生しました。


それくらい長いこと使っていたものだが、これでお別れかな。

すぐ銀座線新橋駅に電話したら、まだ届いていないという。昔は

「しばらくしてまたかけてみて」と言われたが、少しサービスが良くなって、こちらの名前連絡先、探し物の特徴をエントリーしておけば、該当するものがあった場合電話をくれるということでした。


午後2時ごろ、「渋谷でそれらしい傘を拾得」と若い駅員から電話がかかってきた。東京メトロ、警察の認知症高齢者捜索より優秀ではないですか。

「では改めて、お探しの傘の特徴を言ってみて下さい」

「紺地に黄色の花がいっぱい、です」

「何の花でしょうか」

「うーん、キクみたいな」

「これってキクかなあ」

絵心のない男性が無理して誘ってくれた美術館デートみたいな会話になってきた。

「バラでもユリでもない、デザインとしての花だと思います」

駅員は納得してくれ、渋谷での受け取り方法を教えてくれた。昔と違って、なんでも上野の落し物センターに持っていかれてしまうわけではないようです。



こうして手元に戻ってきた折畳み傘。またいつか一緒に出張、行けるといいね。





やっぱキクでしょ