判決 | 石元太一のブログ

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「原判決を破棄する。被告人を懲役15年に処する。

当審における未決勾留日数中240日をその刑に算入する。」

耳を疑う内容であった。その疑いは、判決理由を聞き続けても、

解消することは無かった。

建造物侵入・凶器準備集合罪の成立に関しては、

外部的客観的証拠すなわち防犯カメラの画像
(ロアビル横の道路を複数名が通行している画像)

から実行犯グループが暴行に及ぶ意思は明白であり、

それを被告人も当然認識しているというのであるが、

防犯カメラの画像の重要性をいうなら、

なぜ映像の一部を切り取った写真と、途切れ途切れの

映像だけで結論を出せたのだろう。

石元氏は、控訴審の最初から、

ロアビル現場を間断なく撮影し続けた防犯カメラの

映像の提出を求めていた。

一審判決言い渡し後の反省会
(裁判官、検察官、弁護人のみ出席)

でも、裁判官から、

「黒色アルファードに被告人(石元氏)が乗車したか否かにつき

防犯カメラの映像があるとわかりやすかったのに。」

という指摘がなされていたところである。

いうまでもなく被告人や弁護人は、

路上に設置された防犯カメラ(捜査機関管理のもの)の

映像の提供を自由に受けうる立場にない。

捜査機関からの任意の開示を受けなくては

そのすべての映像を見ることはできない。

私人がビルや駐車場に設置した防犯カメラの

映像についても、捜査機関が提出要請を

すればそれに応ずる人がほとんどであろうが

(なお、捜査機関は必要とあれば強制的にカメラや

映像が録画された媒体の提出をさせることもできる)、

被告人側が防犯カメラの管理者に提出をお願いして、

快く映像を提供(場合によっては映像の再生装置のも貸与

してもらわねばならない)してくれることを

期待するのは困難な状況である。

こういった事情により、防犯カメラに録画された

すべての客観的証拠をじっくり弁護側で検討し、

また裁判所に検討してもらうこともできないまま、

事実認定をされてしまったことは残念でならない。

今回の事件で石元氏がとった行動については、

ほぼ争いがない(争いがあるのは、クラブ従業員との

電話のやりとりの一部や、黒色アルファードに乗車したか

否かくらいである)。

問題は、その行動から、

「被害者に対する暴行に及ぶことの認識・認容」が

読み取れるか否かである。

石元氏本人は自分の行動について、

なぜそのような行動をとったかということは

逐一説明できるのであり、少なくとも、

今回の実行犯グループが暴行に及ぶことの認識があれば

とりえないような行動をしている

(詳細は本人がこれまでにこのブログ記事で

述べてきたとおり。)。

そもそも自分の行きつけの店で、かつそこの従業員とも

仲良くしているような店で惨劇が起こることを予見していれば、

誰しもそのまま無頓着に現場を離れ

帰宅したりしないのではないかと思われる。

石元氏の行動そのものからは、

ただちに被害者に対する暴行の故意を導くことは

できないはずであり(それゆえ、クラブ店内に

偵察に行った者や、現場付近に居たものの結局中には

入らなかった者はみな暴行事件に関し不起訴と

なっているのだと思われる。)、

結局、客観的状況からは判断し得ない石元氏の

「暴行の故意」というものは、

「関東連合の過去の抗争の歴史」や

「関東連合元リーダー」という客観的ではない

「概念」により補填され認定されてしまった気がする。

それはとりもなおさず予断による事実認定であり、

かつ「疑わしきは被告人の利益に」という

根本原則に反しているのではないだろうか。

量刑を一審に比して加重した理由についても、

「一審判決は犯行の突発性や偶発性の要素を重視しすぎ、

犯行の組織性や計画性、被告人の果たした役割を軽視している」

というのであるが、

「突発性」や「偶発性」という言葉は

「計画性」とは両立し得ないはずであり、重視・軽視という

関係にはないのではなかろうか。

今回の判断は単なる量刑不当というものではなく、

結局は裁判官や裁判員が多数の関係者の証言を

直接見聞きして下した本件事件の「突発性」や

「偶然性」という判断を全く覆すものであって、

裁判員裁判の存在意義そのものをも否定した形と

なっていることも指摘できる。


なお、小職の勉強不足かもしれないが、

今回「当審における未決勾留日数中240日を

その刑に参入する。」とした点も疑問である。

刑事訴訟法495条2項1号によれば、

上訴申し立て後の未決勾留日数は、検察官が上訴を

申し立てたときは全部本刑に通算することに

なっているはずだからである。

この点も、今後問題となるのでは無かろうか。


石元太一 弁護人より