検証!佐野の残土処分場から安全基準値を超えるフッ素 | 館山市議会議員「石井としひろ」のブログ

検証!佐野の残土処分場から安全基準値を超えるフッ素

前回のブログでは、館山市坂田の残土処分場の立地が悪く、人命に関わる大事故を引き起こす可能性があることを、地質学者の報告書をもとに書きました。これは「残土処分場の構造上の問題」で、2つある大きな問題の1つです。

坂田の残土処分場にあるもう1つ大きな問題は「残土の安全性」であり、申請・届出がされている残土の発生場所が虚偽ではないかということです。虚偽であれば、検査も何もされていない汚染土壌の可能性がある残土が運ばれてきていることになるわけです。

それで、千葉県の残土問題で大きなテーマである「発生元疑惑」に関してわかり易い事例があります。館山市佐野の残土処分場から安全基準値を超えるフッ素が検出された事件です。(ちなみに、佐野の残土処分場は、坂田の残土処分場とは場所も事業者も別であり関係はありません。)

概略は8月8日の房日新聞に記されています。

【基準値上回るフッ素検出 館山市佐野の残土処分場】

県廃棄物指導課と安房地域振興事務所は7日、館山市佐野の建設残土処分場の土砂から環境省が定めた安全基準値を上回るフッ素が検出され、事業者の男性=同市水岡在住=に文書で是正指導を行ったと発表した。
同事務所によると、事業者は7月10日付で県に対し、処分場を廃止する届を提出。廃止検査として地質(2検体)と排水(1検体)の調査を行ったところ、地質2検体でフッ素を1㍑中1・4㍉㌘(安全基準値は同0・8㍉㌘)検出した。<後略>



あまり行政から情報提供や発表はありませんし、正確な原因は未だにわかりません。

しかし、こういったことにつながるズサンな行政は相変わらずで、それを詳しく説明したいと思います。千葉県行政の残土への対応はデタラメとナァナァの繰り返しで、これから説明することは、佐野の残土処分場だけでなく、館山市坂田の残土処分場も同じであり、その前に許可になった館山市上真倉の残土処分場でも同じであり、いわば千葉県全域で行われていると思われます。


さて検証に入りますが、佐野の残土処分場の許可申請時点にさかのぼります。

許可の必須要件として「残土の発生場所が特定していること」があります。

それで、搬入計画書を見ると、
$館山市議会議員「石井としひろ」のブログ-佐野搬入計画書

横浜市神奈川区恵比寿町:エコテック増築工事という1ヶ所の発生現場から全量19,083立法メートルの残土が来ることになっていました。

しかし、何番地かも書いてありません。場所が特定していないではないですか!本当に残土が発生する工事があるのでしょうか。19,083立法メートルというのは根拠があるのでしょうか。それに、何ヶ所もの場所から残土は来るのが一般的で、1ヶ所だけというのも果たして本当でしょうか。

非常に疑わしいのですが、こんなテキトーな搬入計画で許可になりました。


それで、許可後に実際に搬入した実績を、業者の届けをもとに見てみましょう。やはり1ヶ所ではなく、4ヶ所でした。

1、神奈川県横浜市鶴見区豊岡町35から1,290m3の残土
2、神奈川県川崎市多摩区生田1ー358-1他から792m3の残土
3、東京都品川区南大井3-109-9から2,500m3の残土
4、東京都港区北青山3-33-10から5,000m3の残土

合計9,582立法メートルの残土が搬入されて、それで残土埋立ては終了しました。

当然ながら発生元は1ヶ所ではなく、搬入計画にあった横浜市神奈川区恵比寿町という場所から残土は来ませんでした。

つまり、横浜市神奈川区恵比寿町という搬入計画は「虚偽」であり、千葉県の職員も「おそらく虚偽だろう」と容易にわかることなのに、条例違反の許可を出します。

これは、館山市大井の残土処分場でも、館山市上真倉の残土処分場でも、館山市坂田の残土処分場でも同じです。また、千葉県内でこういった虚偽搬入計画に条例違反の許可を出している事例は枚挙に暇がありません

デタラメな残土業者に、デタラメ行政のセットで違法な許可がなされ続けてきました。


さて、搬入計画に虚偽が横行しているとなると、許可後の実際に搬入したと届出ている残土も、本当に届出た場所から来ているのか?虚偽ではないのか?疑問に感じるわけです。

千葉県では実際に残土を搬入する前に、発生元業者が土質を検査してから搬入という流れになります。

土質の検査証明書はこんな感じです。
$館山市議会議員「石井としひろ」のブログ-佐野の土砂等発生元証明書など_ページ_08
フッ素は安全基準値内の0・3㍉㌘です。

残土の搬入に際しては、発生元業者が作成した土砂等発生元証明書も添付します。

1、神奈川県横浜市鶴見区豊岡町35から1,290m3の残土に関する土砂等発生元証明書を見ます。
$館山市議会議員「石井としひろ」のブログ-佐野の土砂等発生元証明書など_ページ_02
ほとんどパソコンで入力しているのに一部に手書きがあります。その部分は本当に発生元業者が書いたのか疑問が持たれるところです。発生元業者が作成しているという建前なので、発生元業者が書いているはずですが…。

それで、この土砂等発生元証明書というのは、あくまでも予定とか計画という類のものです。工事で土砂が発生する予定、その土砂を特定の残土処分場に運ぶ予定というもので、予定が変われば、実際には残土が来なくなることもよくあることです。故にこれは、残土が発生した、残土を搬出したという確定のものではなく、あくまでも予定に過ぎません。厳密に言えば証明能力の低いものです。証明書とは名ばかりで、中途半端でいいかげんさが残る証明です。


次に、
2、神奈川県川崎市多摩区生田1ー358-1他から792m3の残土に関する土砂等発生元証明書を見ましょう。
$館山市議会議員「石井としひろ」のブログ-佐野の土砂等発生元証明書など_ページ_06
あれっ!「発生土砂等埋立事業者名」と「特定事業者名」の欄が空欄になっています。

不備です。これは、残土が発生する予定であることは証明していますが、佐野の残土処分場に搬出する予定だという証明になっていません。どこに搬出するか未定ということです。

本来、発生元業者が空欄のまま、証明書を出してはならないはずです。他人が空欄に記載してしまえば発生元業者が証明したことになりません。空欄部分の偽造を容認しているかのようです。

千葉県による土砂等発生元証明書の作成に関する指導では、
$館山市議会議員「石井としひろ」のブログ-土砂等発生元証明書の取扱い通知ページ_4
「搬出先の特定事業場が確定してから作成すること。」となっています。つまり、搬出予定先の残土処分場が決まっていなければ、土砂等発生元証明書を発行してはならないです。また、契約量の欄も、契約相手が決まっていなければ書けるはずがありません。なぜ、契約相手が白紙なのに、契約量が書いてあるのでしょうか。

このように土砂等発生元証明書というシロモノは、デタラメなものが多く、証明書としての役割を果たしていないものが多いのです。

なぜ、千葉県はこのような不備の証明書を受理し、残土の搬入を認めたのでしょうか?職務怠慢は否めません。


それでは、本当にその場所から持ってきたことを確認することが出来るのでしょうか。神奈川県については、確認することが出来ます。神奈川県では不法投棄防止のために、発生元業者に搬出計画書と、搬出した結果報告書の提出を義務付けているからです。これに違反すると刑事罰、つまり犯罪になります。書類の名称は「処理計画書」「処理結果報告書」といいます。

(ちなみに、東京都でも資源有効利用促進法により、発生元業者は類似の書類を作成しています。しかし、行政への提出義務がないため、情報公開請求でも入手は出来ません。東京都の書類も入手できれば、発生元疑惑の解明も進むのですが…)

神奈川県による土砂搬出の手引きによると、500立法メートル以上の残土を搬出する場合は、処理計画書の提出が義務付けられています。


1、神奈川県横浜市鶴見区豊岡町35から1,290m3の残土
2、神奈川県川崎市多摩区生田1ー358-1他から792m3の残土

は両方とも500立法メートル以上ですから、処理計画書は提出されているはずです。(*公共事業など提出不要の場合もあります。)

それで神奈川県に情報公開請求をしたところ、
$館山市議会議員「石井としひろ」のブログ-佐野の行政文書公開拒否決定通知書ページ_1
$館山市議会議員「石井としひろ」のブログ-佐野の行政文書公開拒否決定通知書ページ2
なんと、処理計画書の提出がありません。つまり、残土を搬出していないということです。無届け搬出は犯罪ですから、残土搬出は考え難いものがあります。


発生元の神奈川県では残土が搬出されていないのに、館山市佐野の残土処分場では、残土が搬入されていることになっています。これは、虚偽の搬入、すなわち残土の不法投棄が疑われます。検査も何もされていない汚染土壌が運ばれてきている可能性があるのです。

虚偽または無届けの搬入は、千葉県残土条例によると50万円以下の罰金刑という犯罪です。また、事業停止あるいは許可取消の要件にもなっています。(佐野の残土処分場は終了しており、許可は終わっていますから、もう事業停止も許可取消しも関係ありませんが…)


まとめると、許可申請時の残土搬入計画も虚偽、許可後に実際に行われた残土搬入も虚偽の疑いが極めて高いわけです。また、土砂等発生元証明書にも重大な不備があります。

こういったデタラメな残土事業を、行政がデタラメのままナァナァと見過ごしているのが、現在の千葉県の残土行政です。これで「残土はきれいな土ですから安全です」とか言っているのですから、県民をバカにしているのにもほどがあります。


安全基準値を上回るフッ素が検出された理由はわかりません。しかし、虚偽の搬入、残土の不法投棄がその原因かも知れません。

こういった事態を招いた最大の原因は、千葉県の残土行政がデタラメなことにあります。今後は襟を正して、審査と監視をしなければなりません。

審査と監視がデタラメでザルになっていると、残土業者は法令を守らなくても平気になります。そして、多くの業者が法令を守っていない状況では、真面目に業務を行っている業者は損をするどころか、不真面目な業者との価格競争に勝てなくなり、市場から駆逐されます。そうなれば、残土業界は悪徳業者だらけになります。いえ、すでになっていると言っても過言ではないでしょう。