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平常心 サッカーの審判という仕事
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2010-07-03

日本サッカーの歴史が変わる時

テーマ:審判レポート

2010南アフリカW杯準々決勝 ブラジルvsオランダ゙ 西村主審評:5


■主審:西村雄一(JPN)

  採点:5


 W杯を経験したレフェリーの講演会があると知り、迷わずJFAハウスに足を運んだ。

 78歳を迎えた丸山義行氏、現役である岡田正義氏、J1担当主審を育成する上川徹氏の三人。第一線から退いた高田氏(‘空気を読める男’という本のタイトルを私は納得していない)は欠席だったものの、それぞれがW杯の舞台を語っていた。

 そんな先人たちも成し遂げられなかった偉業。W杯のグループリーグで3試合吹くということをチーム西村は成し遂げた。これは今大会で岡田監督率いる日本代表がグループリーグを突破したことと同じくらい評価できることだ。

 しかし、チーム西村はそこで足を止めなかった。なんと、準々決勝、さらにアルゼンチン対ドイツ以上のビックマッチ、ブラジル対オランダを任されたのだ。

 この両チームがぶつかるとなると、簡単な試合にはならない。歴史を振り返っても、全てが激闘だった。それを知ってか互いにハイテンションな試合となる。


 1分、クロスに反応したファンペルシへのチャージは正当なチャージということでノーファウル。直後、クサビに対して後ろから押したということでオランダのファウルをとる。注意も与え、ファウルを受け入れさせ、かつ意識もさせる。

 2分、ロッベンをひっかけてファウル。エキサイトする選手たちに注意を与える。

 ファウルが起こる度に、選手たちが審判にではなく、相手に対してエキサイトする。非常に難しい試合になりそうな予感が垣間見えた。

 3分にも遅れてチャージしたブラジルのファウルをとる。このように細かくファウルをとり、選手たちを安心させる。試合の展開を考えると、細かくファウルをとるというのは今日の試合ではベストなコントロールだ。

 14分、抜けようとした所をボールのない所でひっかけたヘイティンガに警告。詰め寄ってくるヘイティンガを左手で制し、別のオランダ人選手には説明をする。その選手がヘイティンガを抑えたように巧みなマンマネジメントだ。

 15分、ロッベンへのファウルをとり、ブラジル選手がその後ボールを蹴ると、厳しい表情でマネジメントする。すると、選手が‘聞こえなかった’と謝罪する。この辺りのマンマネジメントも非常に巧い。こういった立ち上がりのマンマネジメントが活きたのか、その後、試合は落ち着く。23分には異議を唱える選手にジェスチャーを交えて、‘私が見ている’と説明し、選手の不安を打ち消していく。また、アドバンテージも多く採用し、わかりやすくレフェリングしていく。

 ただ、32分のカカへのトリップはファウルをとっても良かったかもしれない。

 37分、ロッベンへの繰り返しのファウルでバストスに警告。バストスも納得していたように妥当な判定だ。逆に、38分のマイコンのファウルは本人は納得いかなかったようだが、確実にファウルといえる。47分にはシミュレーションでファンデルビールに警告。本人も納得し、ブラジルが拍手したように、まさに選手に受け入れられた判定だった。


 シビアな試合ということもあり、選手たちが判定に対しプレッシャーをかけてくるが、まったくブレない。

 50分、ロッベンへのファウルに対して、オランダ選手がカードだと異議を唱えるが、寄せ付けない。ビックプレーヤーにも動じず対応する。審判としては当たり前だが、日本人がそのようなポスチャーがとれるということは一昔前なら考えられない。これから審判を目指す若手に勇気を与えるシーンだった。

 64分、カウンターに向かったロビーニョのドリブル突破を引っ張ってとめたデヨングに警告。69分にはFKのポイントが10m近く違かったため、71分にもオランダのスローインの位置が違かったためやり直しさせる。


 その際、ブラジル選手に時計は止まっていると教える。


そんな西村を見て、今季開幕前の会話を思い出した。


「天皇杯で小笠原が西村さんに時計のこと言ってきましたよね?これ止まってないんじゃない?みたいな感じで。」


「よくみてましたね。小笠原さんが「止まってなくない」っておっしゃられたので、「こっちが動いていて、こっちを止めてるよ」と伝えました。選手はなにを不安に思うか。小笠原さんは、あの時、時計に対して不安を持ったわけですよね。だから、僕はそれを打ち消さなければいけないと思って説明したのです。」


選手の不安を打ち消すということは西村が重視しているものでもある。そんなレフェリングがこの試合で活きていた。

 迎えた73分。

 ファウルをされたロッベンが痛む。なにが起こったか一瞬わからなかったが、西村はすぐに争点に向かい、フェリペメロにレッドカードを提示する。なんとフェリペメロがロッベンを踏みつけていたのだ。妥当な判定、かつ素早い対応。非常に勇気を持った判定といえる。


 ここからブラジルが慌てはじめ、機能しなくなる。今大会、何試合かブラジルを取材したが、ここまでブラジルが追い込まれる試合はなかった。Livedoorにも寄稿したように

【倒すための策略はあるか】

http://news.livedoor.com/article/detail/4843730/

という高みにあるチームだった。

 ブラジル勝利の流れのなかで、事故のようなオウンゴールで同点に追いつかれ、さらに逆転を喫し、退場者まで出してしまう。典型的な自滅のパターンだ。逆にオランダはそんなブラジルに対して勢いにのる。ブラジルはなぜ上手くいかないのかわからない。苛々が向かうのは、もはや西村しかなかった。しかし、それでも西村はブレない。ブラジルを突き放すこともなく、異議も受けすぎず、絶妙なバランスでレフェリングする。


 76分、ピッチから出たボールを蹴ってリスタートを邪魔したオーイエルに警告。ここでカードを出さなければブラジルが荒れてしまうというような場面。試合をコントロールする上で重要な判定だった。

 また、ファウルをとった後、選手とコミュニケーションをとり落ち着かせようとする。「選手のために・・」と前置きする西村らしい、これ以上試合を荒れさせたくないという思いのわかるシーンだった。


 試合はこのまま終了し、ブラジルが敗れるという結果になる。番狂わせというカードではないが、正直ブラジルが負けるのは想像がつかなかった。

 そんな想像のつかない試合を普通に終わらせたチーム西村。アドバンテージを多用し、ボールに対するコンタクトは流すなど、エキサイティングな試合にし、かつ争点には素早く駆け寄り、常に選手にルールを意識させて荒れそうな試合を防いだ。


 この試合をもっと上手く裁けることができたか。そう考えると他に手はなかったように思えるし、こうすればもっと良かったなどという分析をするのは難癖つけるようでヤボにも思える(ブラジルが敗れたということで批判もありそうだが)。

 ということは、チーム西村なしにこの試合はありえなかったということではないだろうか。それはFIFAがこの後の割り当てで証明するだろう。


 最後に、笛の音に批判的なメッセージもあったが、現地ではあれくらいの笛でないと、ブブゼラにかき消されてまったく聞こえない。ブブゼラはチアホーンの比ではない。隣の海外ジャーナリストとの話も普通にできない。私のもうひとつの仕事、クラブの取材にいったような感じで、体感すれば、あの笛が試合に必要なことは理解できるはずだ。


 これはひょっとするとひょっとする。大げさではなく、日本サッカー界の歴史が今大会で大きく変わるかもしれない。




~採点基準~

5:彼なしに試合はありえなかった

4:普通に試合を終わらせた

3:ミスにも見えるシーンがあったが、試合に影響はなかった

2:試合に影響はなかったかもしれないが、カード・得点に対する微妙なシーンがあった

1:ミスから試合の流れを変えてしまった

0:試合を壊してしまった

コメント

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1 ■ベストに近いレフェリング

おはようございます。半年ほど前からこのブログを読ませて頂いていますが、コメントを書くのは初めてになります。よろしくお願いします。

西村主審(チーム西村)のレフェリング、両チームなかなかテンションの高い状況で、ベストに近かったと思います。
前半終盤の、GKになったマイコンのシュートのように、ミスが全くなかった訳ではありませんでしたが、「ここからW杯本番」といった感じの大きな試合を無事終えられた、ということの方をより評価したいと思いました。

カードの基準も妥当だったと思いますが、中でも、オランダ逆転後の遅延行為に対してのカードが、『試合をコントロールする上で重要な判定』というのは石井さんと同じ意見です。

また、前のブラジル×チリ戦で、あまり笛の鳴らない試合展開に持っていったハワード・ウェブ主審が、昨日のこのテンションの高い試合を裁いていたらどういう展開になったのか、という興味が湧いてきます。

他にもイルマトフ主審、カサイ主審など、いいパフォーマンスを見せている方がいるので分かりませんが、西村さんにも5試合目の可能性があるのでは、と感じました。

2 ■おはよーございます

もうちょっと、もうちょっとだけアドバンテージを見ても、と思った場面が数ヶ所無かった訳ではありませんが
ホントに素晴らしい試合コントロールでしたね。

アジアのもう1組の審判チームが今夜のアルゼンチン戦をさばくようですが、
西村チームとどちらかが
ファイナルを担当って事になるかもしれませんね(^.^)b

3 ■90分があっという間だった

それはエキサイティングな試合をコーディネイトできたという証だと思います。 
TV画像で何度も主審や副審のアップが出るほど難しい試合をよくまとめ上げたと思います。


もしや、まさかもう1試合ある?
決勝はウェブ氏だと思っていましたが、ブラジル敗退で解らなくなってきました。 実に楽しみな時間が続きます。

4 ■無題

  おはようございます。

  「チーム西村」は難しい試合を担当しましたが、お互いテンションの高い中、非常に良いレフェリングだったと思います。ゲームコントロールやファウルおよびカードの基準が非常に良かったです。

  私は昨日の試合のレフェリングを見て、5試合目の担当もあるのではないかと感じました。

  笛の件について石井さんに前回のコメント投稿時にお尋ねしました。聞こえにくい審判が多い中、西村氏の笛は高音で非常に聞こえやすくて良かったです。

5 ■ひょっとした…らひょっとしますよ、きっと

こんにちは。
ブラジル・オランダ戦は予想通り(以上?)の激しい試合となりましたね。

この試合の勝者が決勝に上がってくるだろうと予想され世界中が注目する中、立派に試合をコントロールされたチーム西村、素晴らしかったと思います。

試合中にもTV解説の山本昌邦さんが「この試合をコントロールできたら、西村さん、決勝ってこともあるんじゃないですか?」と言っておられましたし、何度も西村さんのレフリングを褒めておられましたね。

もちろん私はレフリング技術に関しては全くの素人ですが、試合中は西村さんから目を離すことができず、釘付けでした。
あの世界トップレベルのスター選手達に囲まれても毅然とした態度でジャッジングされ、同時に選手にも表情やジェスチャーでコミュニケーションを取っておられる姿は「カッコいい!」の一言でした。

W杯では審判も1試合ごとに評価されているのだということ、準々決勝で審判を務めることがどれほど名誉なことなのかということ、そして、ひょっとしたらひょっとするかもしれない=史上初、W杯決勝で笛を吹く日本人審判が誕生するかもしれないということ、もっと日本のマスコミも報道して欲しいと思いました。

これからが楽しみですね♪

PS:石井さんの詳細な解説をもとに、今日の再放送を録画してもう一度この試合を楽しみたいと思います。
ありがとうございました。

6 ■無題

  こんばんは。

  4番のコメントの最後に書かれている笛に関する質問のご回答いただき、ありがとうございました。

  御礼が遅れてしまったことをお詫び申し上げます。

7 ■チーム西村

初めてコメントいたします。
昨日の試合、出だしからかなり早い段階で笛を吹いており、荒れないように気を遣っている様子がとてもよく伝わってきました。「ちょっと笛多くない?」と思ったほどです。にもかかわらず、非常に激しい試合になりました。西村氏の丁寧かつ厳格なジャッジングは、あのテンションの高い試合において絶妙のものであったと感じました。
また、何度も繰り返し出ていた話題ではありますが、今回のW杯のジャッジングでは手をつかったファールの基準が非常に厳しく、またはっきりとしている印象です。そして、準々決勝ともなると、各選手がその基準に対応して、ボディーコンタクトがフェアーでとても魅力的なプレーとなっている気がします。
私も二級審判として日々ジャッジングをしておりますが、勉強になりました。私自身はユース年代を主に吹いているのですが、今回のW杯のジャッジングを日本国内でも参考にすることにより、手をつかったファールをユース年代でもかなり減らすことができそうで、今から楽しみです。
最後に、従来のレフリーの扱いに比べて、今回西村氏に対する注目はかなり高いものとなっている気がします。ぜひ、決勝戦での笛を見られることを期待しています。

8 ■先のコメントのお礼

 先の日本対オランダ戦でコメントをさせていただいた小山田です。ご丁寧な返信をありがとうございました。
 確かに、パラグアイ戦の試合は基準が分かりづらかったようなのが、石井さんの評価で確認できてよかったです。
 また、こちらで審判の基準のことなどをきちんと学ばせていただいて、西村主審のことに興味を持っていたのですが、今日の試合については、不動産屋のミスでテレビの接続が上手くいかず、結局見れなかったので、これから時間があったら画像サイトに見に行こうと思っていますが、石井さんの正式な評価が上がるのを楽しみに待っています。
 ご丁寧にありがとうございました。

9 ■先のコメントのお礼の続き


すいません、また入力ミスです。私はアメブロのアカウントを取っていないので、編集できなかったので、もう一度上げます。「これから先西村主審が決勝の試合をできたときには」石井さんの正式な評価が上がるのを楽しみに待っています、ということです。

10 ■Re:ベストに近いレフェリング

>KATEさん

どんどん議論してください。
おっしゃられるように、ハワードウェブ主審がこの試合をどうレフェリングしたかは気になりますね。
また、イルマトフ主審は良い意味でライバルといえるでしょう。
個人的には、各審判員がいうようにアジアNo1だった、マークシールド氏のレフェリングも見たかったですね。

11 ■Re:おはよーございます

>ユーイチさん

確かにチーム・イルマトフは素晴らしかったですね。
ズブヒディン氏は割り当てを貰えませんでしたが、アジアのレベルも徐々に上がっている証拠でしょう。

12 ■Re:90分があっという間だった

>bさん

チーム西村の割り当てがどうなるか。非常に楽しみですね。

13 ■Re:ひょっとした…らひょっとしますよ、きっと

>なつみさん

本当に歴史的なことですよね。

14 ■Re:チーム西村

>あるまさん

私も選手はもちろん、指導者、さらに審判として活動してますが、二級審判員もかなりハードルは高いですよね。
日本の審判のレベルを上げるためにも西村さんにはがんばって欲しいですよね。

15 ■Re:先のコメントのお礼

>小山田さん

とんでもありません。
今後とも議論を宜しくお願いいたします。

16 ■Re:無題

>wakeさん

とんでもありません。
今後も審判評、期待してます。

17 ■無題

  こんばんは。

  準決勝のウルグアイ―オランダの試合で「チーム西村」の西村雄一氏が第4の審判に、相樂亨氏が第5の審判にアポイントされました。ラフシャン・イルマトフ氏のチームがこの試合を担当します。

  前回大会で「チーム上川」の上川徹氏が準決勝で第4の審判に指名され、3位決定戦に指名された例があります。

  一部新聞で「チーム西村」が11日の決勝戦有力という記事を書いていますが、4試合のレフェリングを見ていると、ベストパフォーマンスを発揮し、安定したレフェリングを見せていることもあるので十分あると思っています。

  南米―欧州の組み合わせが決勝戦になるのか3位決定戦のどちらになるのかはわかりませんが、いずれにしても可能性はあると思うので、注目しながら待ちたいと思います。

18 ■無題

どんなに良いレフェリングをしてもオランダが決勝に進んでしまえば準々決勝で裁いたチームを割り当てられることはないかと。
審判界の性ですね。

19 ■チーム西村決勝はなし?

オランダが勝ってしまいました。準々決勝で裁いてるからなし?

20 ■Re:無題

>japanさん

そうですね。
ただ、西村氏は受け入れていますね。

21 ■Re:チーム西村決勝はなし?

>レフェリー応援団さん

それもありますし、西村氏より優秀なレフェリーがいるというのもあると思います。

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