高齢ドライバー問題 「MT車活用」が大きな糸口となるか | 事件鑑定人のブログ@鑑定人イシバシ

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私が事件鑑定人としてこれまで経験したことを書きます。
特定を避けるため、一部、ぼかしたりフェイクもありますが、概ね実体験です。

高齢ドライバー問題 「MT車活用」が大きな糸口となるか

ブレーキとアクセルの踏み間違えによる事故が続いている。高齢者による事故が目立つが、AT(オートマ)車からMT(マニュアル)車へ乗り換えるだけでも、運転に集中しやすいため事故が起こりにくくなるという意見がある。 しかし、現実に販売されている自動車をみると、MT車が姿を消し、AT車全盛だ。MT車のシェアはわずか1.6%。そんな中、各自動車メーカーは日進月歩で「事故防止機能」の研究と導入を進めている。
 <中略>
「MT車で免許を取り、長く乗りこなしてきた高齢者を想定して、『マニュアル限定免許』を考えてもいいのではないか。MT車なら注意力の低下やケアレスミスを防げるし、“運転を楽しみたい”という思いにも応えられる。また、MT車の操作に自信がなくなれば、自然と運転から離れていく。免許の更新期間を短くするより効果があるかもしれません」現実的かつ有効な「MT車活用」という選択肢は、高齢ドライバー問題解決の大きな糸口になるはずだ。 
配信 2017.05.20 07:00  NEWS ポストセブン

     

    

   

【MTという机上の空論】
 私は、以前、高齢者の暴走事故を防ぐためにはMTが有効と述べた。
 おそらく、ATからMTへの回帰を最初に訴えたのは私であろう。
 昨今で、MT回帰論が盛んだが、いわゆる机上の空論である。
 勿論、私の推奨した事も含む。
 MT回帰へ考えが及んだのは、約7年前の2010年である。
 とある事故態様で、MTなら防げていたはずと考えが及んだからだ。
 一昨年、ブログで問題提起したのは、現場目線から考えが及んだものである。

http://ameblo.jp/ishibashi-kantei/themeentrylist-10093753111.html

    

 

【棄てられない利便性】
 先に、私が考えた案も含め、MTへの回帰は机上の空論と述べた。
 私は、何人かの高齢者にMT車について述べたことがある。
 皆、一様にその効果は理解するのだが、いざ自分に矛先が向かうとのらりくらりだ。
 老人特有の姑息さで、その場を乗り切ろうとする。
 自分だけは事故を起こさないと激高する高齢者もいた。
 元来、人間は、一旦手に入れた利便性を手放さない。
 エクセル表計算の利便性に慣れた人間が、電卓計算を厭うようなものだ。
 
 

【動機付けの不在】
 そもそも、ATからMTに変えても老人は何も得をしたと感じない。
 事故を起こそうと思って起こすものではないからだ。
 出費と、不便さだけがのし掛かるのであれば、誰も率先してMTに変えない。
 例えば、若い世代が MTの運転格好イイ! すげぇ! とリスペクトがあれば別だ。
 意識が高い老人は、MTを選ぶ という社会風潮でもイイだろう。

 若い世代のリスペクトは、高齢者の自己承認欲求を満たすものだ。

 しかし、現在、社会の風潮は自動ブレーキなどの先端技術に舵を切っている。

 特に、メディアは未来の新技術にまつわる報道一色だ。

 報道は、高齢者の承認欲求を満たすものはなく、むしろ世代間格差を煽るものである。
 排斥する傾向はあるが、リスペクトする余地は殆ど見受けられない。
 そういった、報道に需要がないからだ。

 つまり、MTへの回帰が暴走事故軽減 は原理的に正しい。

 MTに乗る高齢者をリスペクトする社会風潮が醸造されない限り、MTの回帰は無理だ。

 

 

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