交通事故鑑定人の要件1 自由心証主義 | 事件鑑定人のブログ@鑑定人イシバシ

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私が事件鑑定人としてこれまで経験したことを書きます。
特定を避けるため、一部、ぼかしたりフェイクもありますが、概ね実体験です。

そもそも鑑定人というものに公的な資格はない。
だから、自身で名乗りさえすれば鑑定人になれる。
ところが、鑑定書を最終的に判断するのは裁判官だ。
肝心な裁判官の心証形成はブラックボックス的な部分が否めない。
同じ鑑定でも、ある裁判官は採用しても、別の裁判官は採用しないといった具合に、一定の基準がないのである。

心証というブラックボックスが存在する以上、その資格は構築しようがない。

 
ところで、同じ事故を二つの裁判で・・・・ということは一見奇異に感じるだろう。
しかし保険金請求訴訟の場合、複数の保険契約があれば、契約の数だけ裁判は起こせる。
つまり、同一事故複数裁判という事象はあり得る。
これは、理論上ではなく、私は現実に幾度となく経験した。
同じ事故で、証拠の捉え方が180度異なるケースもある。
事実認定・証拠評価について裁判官の自由な判断に委ねられている自由心証主義をまざまざと思い知らされた。 
 
仮に、交通事故鑑定人を資格制度にしたとしても、判断基準が裁判官の自由な心証に基づくものである以上、判決がその資格に縛られることはない。
つまり、資格制度はあったとしても、その資格は何ら意味をなさないであろう。
中には「交通事故鑑定人法」を提唱する謎団体もあるが、訴訟実務の疎さと法律知識の浅学を表明しているに過ぎない。

 
しかしながら、交通事故鑑定人と呼ばれる人々は私を含め現実に存在する。
ところが鑑定人等は、裁判官の心証が取れるという確証にて依頼されるのではない。
心証を得ることが強く期待されるので依頼されるのだ。
では、どういった要件を満たせば、裁判官の心証が期待されるのか?

いわゆる鑑定人を選ぶヒント・・・・これについては、次回に述べる。