国民参与裁判制度~「依頼人」 | 高橋いさをの徒然草

国民参与裁判制度~「依頼人」

DVDで「依頼人」(2011年)を見る。韓国製の法廷サスペンス映画。聞くところによると韓国映画史上、初の本格的な裁判劇らしい。

映画の現像技師であるハンの妻が自宅で何者かに惨殺される。ハンは殺人罪で逮捕され裁判にかけられる。彼の弁護を引き受けることになったのは腕利き弁護士のカン。証拠は状況証拠のみで、被告人は犯行を否認している。しかし、カンはハンがかつて起こった女子高生殺人事件の重要容疑者だったことを知る・・・。

しっかり作られた法廷サスペンス映画である。そういう意味では「韓国映画史上初の本格法廷劇」の名に恥じない堂々たる法廷劇であると思う。意外な結末もよく考えられている。びっくりするのは主舞台になる法廷の立派さ。わたしが今まで見たどんな法廷よりも豪華である。傍聴席の数はそんなに多くないのだが、検察官と弁護人が弁論を振るうエリアがやたらに広く、天井も高い。机やテーブルなどの調度品も高級感に溢れている。被告人はハ・ジョンウ、検察官はチャン・ヒョク、弁護人はパク・ヒスンという配役。みなイケメンなので、法廷にちょっと「華やぎ」があるが、わたしにはプロットがちょっとややこしいところがあり、検察官と弁護人の攻防の歯切れが今一つ悪い。

興味深いのは、本作で描かれる裁判は陪審員による裁定である点である。調べたら、韓国では被告人が望むと一般市民が裁定を下すシステムがあるらしい。

「韓国では民主化を目指す盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の意向を受けて、2008年から〈国民参与裁判制度〉が施行された。これは、殺人や強盗などの重大犯罪を対象とするなど日本の裁判員制度と共通する点もあるが、大きく異なるのは被告人が国民参与裁判か、裁判官だけによる裁判かを選択できること」(「映画評論家・弁護士の坂和章平の映画日記」より)

初めて知る事実である。



*本作。(「こんな日は映画を見よう」より)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
[ご案内]
L&L企画舞台公演
「フクロウガスム」
●脚本/えのもとぐりむ
●演出/高橋いさを(劇団ショーマ)
●日時/2月22日(水)~2月26日(日)
●場所/中野劇場HOPE

ご来場を心よりお待ちします。