★新刊情報★

高橋いさを最新戯曲集

①『海を渡って~女優・貞奴』(論創社)

表題作に加えて朗読劇「父さんの映画」「和紙の家」(村松みさきとの共作)「母の法廷」の四編を収録。定価¥2000

2015年5月、全国書店にて発売中!

②『交換王子』(論創社)

マーク・トウェイン作「王子と乞食」を翻案した表題作に加えて、駆け落ちカップルの逃避行の顛末を私立探偵が回想するコメディ『旅の途中』を収録。定価¥2000

2015年9月、全国書店にて発売中!

③「I―note②~高橋いさをの演出ノート」(論創社)

1991年から2012年まで、著者か演出した舞台の稽古の際に俳優、スタッフに配られた演出ノートを公開する。定価¥2000(予定)

しばらくお待ちください。



































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2017-04-30 08:22:50

隣の殺人者~「怒り」

テーマ:映画
DVDで「怒り」(2016年)を見る。吉田修一の原作小説を李相日(りそうじつ)監督が映画化。李監督による吉田修一作品は「悪人」(2010年)に続いて二作目である。

八王子で発生した凄惨な夫婦殺人事件。犯行現場に「怒」の血文字を残して逃走した容疑者・山神一也は整形して逃亡していた。公開捜査を実施した警察のテレビ番組によって、東京、千葉、沖縄とそれぞれ別の場所に暮らす人々は、身近にいる素性の知れない男に疑惑の目を向けることになる。

原作が市橋達也による「英国人講師殺害事件」をモチーフに書かれたものであることは内容から容易に察することができる。犯人の市橋は整形手術をして顔を変え二年七ヶ月にも及ぶ逃亡生活を続けた。東京、千葉、沖縄という三つの場所に登場する三人のうちの誰が犯人なのか?   そんな興味でそれぞれ三つの物語を見るが、作り手の重心は犯人は誰かというミステリの部分ではなく、それぞれの男たちに関わる周囲の人々との人間関係の在り方にかかっている。不信と信頼の振り子の中で揺れる周囲の人々の心の葛藤。そういう意味では本作はミステリではなく人間ドラマである。 

「身近な殺人者」という題材は、現代日本において十分にあり得るアクチュアリティ(現実性)を持っていると思う。それを三つの別々の場所で展開させる構成も面白い。役者陣も熱のこもった演技で観客を惹き付ける。犯行現場に残された「怒」という血文字が得体の知れぬ禍々しい恐ろしさを醸し出す。しかし、三つの別々の物語が最終的に一つの「怒り」というテーマに芸術的に昇華しているかと言うとそうでないようにわたしは思う。


※同作。(「映画.com」より)
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2017-04-29 07:33:54

Aくんとの勝負②

テーマ:エトセトラ
わたしが講師を務める演劇の専門学校の学生に物凄く映画に詳しいAくんという学生がいて、授業が始まる前にお互いに映画クイズを出し合い勝負をするということを以前、このブログに書いた。その時点で勝敗はAくんは3勝、わたしは2勝1敗だった。最近行った第四戦・第五戦の結果を報告する。

●第4問
[わたし]刑事アクション映画「ダーティハリー」は、実際に起こった事件を元に作られている。その事件は何か?
※答え/ゾディアック事件(❌)
[Aくん]「ダーティハリー」は都合五作製作されたが、主演のクリント・イーストウッド自身が監督したのは第何作か?
※答え/「ダーティハリー4」(◯)

●第5問
[わたし]「ターミネーター」でブレイクするジェームズ・キャメロンの監督デビュー作のタイトルは何か?
※答え/「殺人魚フライングキラー」(◯)
[Aくん]「エイリアン」はシリーズ化されて合計四作あるが、キャメロンが監督したのは何作目か?
※答え/「エイリアン2」(◯)

わたしの勝ちである!   これで勝率はAくんが4勝1敗、わたしが4勝1敗で勝率は並んだわけだ。かく言うわたしも「ダーティハリー」を初めて見た時に、ハリーと戦う犯人の名前「スコルピオ(蠍座の男)」が「ゾディアック(十二宮図)」を元にしたものであるなどということはまるで知らなかった。しかし、後に「ダーティハリー」が未解決に終わったゾディアック事件の最中に公開された映画であったことを知る。

ジェームズ・キャメロン監督のデビュー作「殺人魚フライングキラー」(1981年)は、名画座で見た記憶がある。歯の鋭い飛び魚がビュンビュン翔んできて人間を襲う映画だったと思う。本作の不評で失意のどん底にあったキャメロン監督が、ある夜、炎の中から現れた金属製のロボットに追い回される悪夢を見たことが「ターミネーター」を生むきっかけになったと「Wikipedia」にある。転んでも只では起きないとはこのことか。さて、わたしとAくんの第六戦の行方は?

※勝利を喜ぶわたし。
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2017-04-28 08:02:40

母娘の絆~「いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件」

テーマ:
「いつかの夏  名古屋闇サイト殺人事件」(大崎善生著/角川書店)を読む。2007年に名古屋で起こった「闇サイト殺人事件」を描くノンフィクション。有名な事件だが、以下のような事件である。

●闇サイト殺人事件
2007年8月24日に愛知県名古屋市千種区内で発生した強盗殺人事件。闇サイトで知り合った三人組の犯行グループが金品を奪うために帰宅途中の女性会社員を拉致して殺害した事件。一審では被告人二人に死刑、一人に無期懲役判決が出た。

本書の三分の二は殺害された被害女性・磯谷利恵(いそがいりえ)さん(31)の誕生から亡くなるまでの半生を描き、残りの三分の一で事件と事件後の遺族の姿が描かれる。いわば、徹底して被害者側に寄り添って事件を描いた作品である。

「検察側はこのごく当たり前のOLだった利恵の生前の姿を丁寧に映し出すことで、起こったことの残虐さを照らし出し、それを裁判官に訴えていこうという作戦だった」

裁判の様子を描く後半に出てくる一文だが、本作そのものがまさにそのように描かれている。幼い頃に父親を亡くし、母一人子一人で生きてきた母娘の平凡だが深い絆が胸に迫り、何度も目頭が熱くなる。この本を読むことで、わたしは被害者の娘さんには付き合って間もない五歳年下の恋人がいたことや、彼女が囲碁を嗜んだことや、母親の富美子さんを献身的に支えた姉がいたことや、一審で死刑判決を下したのが女性裁判官であったことや、途中でグループから離脱した四人目の男がいたことなどを知った。瀕死の利恵さんが犯人たちに告げた「2960」というキャッシュ・カードの偽の暗証番号が、「にくむわ」という利恵さんの最後のメッセージだったことを恋人が解読する件は特に心を動かされた。

それにしても、こんな理不尽な死に直面した利恵さんと、最愛の我が子をこのような形で奪われた母親の富美子さんの胸中を察すると言葉も出ない。あの事件から10年。また新しい夏がやって来る。

※同書。(「Amazon.co.jp」より)
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2017-04-27 08:38:30

止まると死ぬ

テーマ:エトセトラ
ある日、ふいに空いた時間を持て余し、見知らぬ土地の見知らぬ道を歩くことがある。その道を歩くのはわたしにとって生まれて初めてのことである。だからと言って、物凄く新鮮な町並みがそこにあるわけではなく、どこにでもありそうな家や商店が軒を連ねているだけではあるが、少なくともそこはわたしにとって未知なる場所である。

少年の目に世界が驚異に満ちた新鮮な場所に映るのは、世界が彼にとって未知なるものに溢れているからであろう。彼の目には町があり、多くの人たちが行き交い、車や電車が走る光景が驚きを伴って映るにちがいない。しかし、その驚きも長いことは続かない。それらが少年の目に未知なるものではなく、いつしか既知なるものになるからである。こうして少年は大人になる。

既知の世界は人間に安らぎを与えてくれるが、驚きや新鮮味に欠ける。逆に未知の世界は人間に驚きを与えてくれるが、ちょっと不安が伴う。この既知と未知のバランスが大切で、人間の人生を豊かに彩るにはどちらか一方ではダメなのだと思う。わたしが熱心に映画を見るのも、たぶん未知なるものを求める気持ちのなせる業である。現実だけでは「まったく物足りない」のだ。わたしはSF好きだが、SFを愛する心とは、まさに未知なるものへの強い欲求に根差しているにちがいない。「見たこともないものを見てみたい!」という欲求。

しかし、未知なるものは何も劇映画にだけあるわけではない。ある人にとってそれは見知らぬ外国を旅することであろうし、ある人にとってそれは新しく出会う異性との交際であろうし、ある人にとってそれは趣味嗜好のさらなる追求であるかもしれない。人間が何故に未知なるものを追い求めるのかは不思議なことだが、人間の精神(心)は、何らかの活動をしないと死んでしまう鮫のような性質を持っているからかもしれない。止まると死ぬのだ。

※海を泳ぐ鮫。(「おすそわけ備忘Log」より)
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2017-04-26 09:06:08

毎月7日は

テーマ:エトセトラ
わたしは未だにSuicaを使っていない。自宅の最寄り駅から特定の駅までの磁気定期券を買い、それを使って改札を通り電車に乗る。定期券は一ヶ月毎に買い換える。買い換えるのは毎月7日と決まっている。つまり、毎年、わたしは12回定期券を買い換えることになる。そして、定期券を買い換える度に太宰治の初期の短編小説「葉」の冒頭の一節が脳裏をよぎる。

「死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目しまめが織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った」

一気に読者を物語の世界に引き込む魅力的な出だしである。ちょっとギザったらしくも感じる独白ではあるが、太宰治がそう言うと説得力があるのが不思議だ。わたしが新しい定期券を買う度にこの一節を思い出すのは、次のように連想するからだと思う。

「死のうと思っていた。その日、新しい定期券を買った。薄緑色の磁気定期券である。駅名が二つ並び、その駅名の間を⇔印が繋いでいる。日付は〈29・5・7まで〉と表記されている。その日まで生きていようと思った」

太宰の一節を真似ただけで、わたしは全然「死のうと思って」はいないのだが、わたしは毎月、定期券を買い換える度にこの小説の一節を思い出し、また新たにその一ヶ月を生きる決意をするのだ。わたしはその定期券を使ってどこかへ行き誰かと会い、その定期券を使って誰かと別れ家に戻る。そんな一ヶ月が何度も何度も続き、わたしの一年を構成する。そして、その一年がさらに積み重なってわたしの人生を形作る。だから、毎月7日はわたしにとってちょっと特別な日なのである。

※太宰治。(「Wikipedia」より)    



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2017-04-25 08:41:30

地震映画の今昔

テーマ:映画
DVDで「カリフォルニア・ダウン」(2015年)を見る。カリフォルニアを襲った大地震を描くパニック映画。別の映画のDVDの予告編でそのスペクタクル描写に感嘆し一見に及ぶ。

カリフォルニア州を大地震が襲う。ロサンゼルス消防局のレスキュー隊員レイは、地震災害に巻き込まれた離婚調停中の妻と大学生の娘を救出すべく獅子奮迅の活躍をする。

予告編で見たスペクタクル場面を本編を通してキチンと見ると、その圧倒的な街の崩壊描写に舌を巻く。倒壊するビル群、亀裂が走る道路、なぎ倒される鉄橋、街を飲み込む巨大な津波・・・あっと驚く視覚的なスペクタクルは驚嘆する迫力である。今日のVFXの凄さ。映画館の大きなスクリーンで見たら、さぞかし迫力があるだろうと想像する。しかし、災害を背景とした家族愛を軸にした人間ドラマは定石通りのもので新味はないが。主人公を演じるドゥエイン・ジョンソンは、プロレスラーでもあると言うが、主人公はこんなマッチョな人ではない人の方がドラマとしては盛り上がるように思う。

ところで、「大地震」(1974年)という映画がある。わたしが映画館で映画を見るようになった頃のアメリカ映画。チャールトン・ヘストン主演。特殊な音響装置(センサラウンド方式)による上映を映画館のスクリーンで見た時、わたしはそのスペクタクルに感嘆した記憶があるが、「カリフォルニア・ダウン」と比べるとその規模や撮影技術のレベルははるかに劣ると思う。そういう意味では、撮影技術の飛躍的な進歩に驚かざるをえないが、あれはあれで印象的な場面があった映画である。ラストシーン。主人公のヘストンは地下道で濁流に流された不仲の妻を助けるか、地上のマンホールから手を差し伸べる愛人の元へ行くか迷う。そして、ヘストンは・・・。災害を派手なスペクタクル(見世物)として描きながらも、こういう横軸の人間ドラマが縦軸を豊かに彩っていた。(脚本は「ゴッドファーザー」の原作者であるマリオ・プーゾである)もっとも、わたしが東日本大震災を身をもって経験していたらこんなお気楽な感想は書けないと思うけれど。

※新旧地震映画。(「映画.com」より)
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2017-04-24 08:51:01

性犯罪を描く~「チャット~罠に堕ちた美少女」

テーマ:映画
DVDで「チャット~罠に堕ちた美少女」(2010年)を見る。「これ、なんで劇場公開しなかったんですか?」(三宅隆太著)に紹介さていた劇場未公開作。

14才の誕生日を迎えたアニーはパソコンのチャットで知り合った16才の少年チャーリーとのやり取りに夢中になる。二人で会う約束をしたアニーは、待ち合わせ場所に現れたチャーリーを見てびっくりする。交換した写真とは別人の中年男だったからだ。しかし、アニーは男の甘言に乗せられてついにその身を任せてしまう・・・。

昨今、SNSを通して知り合った男女が何らかの犯罪事件に巻き込まれる事例は枚挙に暇がない。2013年に起こった「三鷹女子高生ストーカー殺害事件」の記憶もまだ新しい。本作はそういう現代的な犯罪の一つであるSNSを通した少女への性犯罪を丁寧に描いた秀作である。SNSのチャットを通して知り合った男と関係を持った14才の少女が、葛藤しながらも、男の自分への行為が「恋愛」ではなく「凌辱」であったことを理解していく過程が説得力ある形で描かれる。作り手の重心は少女を傷つけた性犯罪者が何者なのかというミステリの部分にはなく、あくまで被害にあった少女とその家族関係(父親=クライブ・オーウェン好演)の破綻と回復にかかっている。だから、安易に犯人を特定しないで終わるラスト・シーンに静かな迫真力がある。

リアルな題材をリアルなままに描くと、下手をすると映画(見世物)としての面白さに欠け、「わざわざ見たくねえよ、そんなもん!」という気持ちにさせられる場合があるが、こういう映画を見ると、そんなことは全然ないと思う。いや、むしろ題材をリアルに描けば描くほどサスペンスが高まり興味がわくのだから不思議なものだ。そのようにわたしが思うのは、本作の作り手が「少女への性犯罪」という非常に際どい題材を安易な気持ちではなく、被害者に寄り添い、高い志をもって製作したからに他ならない。


※同作。(「P&P」より)
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2017-04-23 08:53:29

幻の銃声

テーマ:エトセトラ
毎月二回ばかり恵比寿駅の「動く歩道」を使って恵比寿ガーデンプレイス近くのビルの一室に通い、俳優の演技レッスンをやっている。お洒落な都会の一角としてこの複合施設ができてどのくらいになるのだろう?   わたしはここへ来て、恵比寿ガーデンプレイスのビルを見上げると、いつも「ダイ・ハード」(1989年)の「ナカトミ・プラザ」を思い出す。「ナカトミ・プラザ」は「ダイ・ハード」の主舞台となるハイテク・ビルである。

「ナカトミ・プラザ」は、1989年に公開された1作目で、ブルース演じる不死身の刑事ジョン・マクレーンが、ハンス・グルーバー(アラン・リックマン)率いるテロリストたちと激闘を繰り広げた高層ビル。ロケ地探しが難航したため、本作を配給した米20世紀フォックスの自社ビルが使用されたことは広く知られており、現在も米ロサンゼルスのウエストサイド地区に建つ、通称「フォックス・プラザ」として親しまれている。(「シネマトゥデイ」より)

調べて驚いたが、「ダイ・ハード」のDVDには特典として「ナカトミ・プラザ」の模型がついているものがあるらしい。まったく「好き者がいるなあ」と思わざるをえないが、わたしは「ダイ・ハード」は好きだが、「ナカトミ・プラザ」の模型がほしいとまでは思わない。二つのビルを比べてみると「そっくり!」というほどには似ていないが、背格好はよく似ている。だから、わたしは毎月二回ばかり、恵比寿に来ると、テロリストとの銃撃戦を繰り広げるジョン・マクレーン刑事の姿を脳裏に描く。このようなビルの屋上でマクレーン刑事は無線機で「メーデー、メーデー!」と警察に応援を乞い、テロリストたちが放つマシンガンの弾丸から逃げ回ったのだ。また、このビルの屋上から消火ホースを身に巻き付けているとは言え、階下へ飛び降りるのは相当に怖い。恵比寿ガーデンプレイスの前を通ると、わたしはいつもマクレーン刑事が放つ幻の銃声を聞く。


※「ナカトミ・プラザ」の模型(左)と恵比寿ガーデンプレイス。(「シネマトゥデイ」より)
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2017-04-22 08:25:38

男たちの秘密部屋~「パーフェクト・ルーム」

テーマ:映画
DVDで「パーフェクト・ルーム」(2014年)を見る。2008年のベルギー映画「ロフト」のハリウッド・リメイクで、監督はオリジナル作品でも監督を務めたエリク・ヴァン・ローイ。

新築の高級マンションの部屋(ロフト)を女との情事を楽しむために共有している妻帯者の5人の男たち。そんなある日、その部屋で1人の女の全裸死体が見つかる。その女は誰で、いったい誰が女を殺害したのか?   部屋に集まった5人は互いに疑心暗鬼になりながら事件の真相を究明する。

アルフレッド・ヒッチコック監督の「ロープ」のような物語だろうと想像していたが、まったく違った。過去と現在を目まぐるしく行き来しながら5人の男たちがそれぞれに隠し持つ秘密と事件の真相が次第に解明されていく過程はスリリングで、ヒネリが利いたストーリー展開は秀逸である。先が読めぬミステリとして終始画面に引き付けられる。場面を高級マンションに限定して描けば、すぐれたミステリの舞台劇になりそう。因みに本作のオリジナル版「ロフト」はベルギーで大ヒットしたという。

「情事のための部屋」と言って思い出すのは、実際に起きた「押尾学事件」(2009年)である。六本木ヒルズ内のマンションの一室で人気俳優と密会中のクラブ・ホステスが麻薬過剰摂取により死亡した事件である。その部屋は確か下着メーカーの女性社長の持ち物だったはずだが、それを妻帯者5人に置き換えると、本作の導入部になる。 「深夜の告白」や「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の昔から不倫と殺人事件はミステリとして抜群によいと思うが、本作のオリジナリティーは、「妻帯者5人による共有のヤリ部屋」という状況設定の面白さにあると思う。こういう秘密の部屋は映画だけの話ではなく、実際に存在するように思う。そういうリアルな設定に「全裸の女の死体」という華やかなフィクションを放り込み、スピード感ある演出と相俟って謎が謎を呼ぶミステリにしている点が本作の独創性である。


※同作。(「映画.com」より)
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2017-04-21 09:18:06

恐怖の贈り物~「ザ・ギフト」

テーマ:映画
DVDで「ザ・ギフト」(2016年)を見る。何の予備知識なしに一見に及ぶ。アメリカ製のサスペンス映画。

サイモンとロビン夫婦はシカゴからロスの郊外に引っ越してくる。彼らは町で買い物をしている時にサイモンの高校時代の同級生のゴードと再会する。それ以来、二人の家にゴードからプレゼントが送られてくるようになる。親切だがちょっと異常なゴードの行動に次第に不信感を募らせるサイモンたち。そんな時、ロビンはかつて高校時代にサイモンとゴードの間に起きたある出来事を知る・・・。

幸せに暮らす夫婦の元へ不気味な第三者が忍び寄るという内容は「不法侵入」(1992年)などを連想するが、あちらが警官であるのに対してこちらは高校の同級生である。派手な出来事はほとんど起こらないが、その分、ジワジワと静かな恐怖感を高めることに成功している。最後に同級生から夫婦に届くプレゼントもヒネリが利いている。(スペイン映画「スリーピングタイト」と同じ結末だが)

ところで、拙作「真夜中のファイル」(論創社)は恐怖のオムニバス劇である。その中の一つに「帰郷」という短編芝居がある。中学時代にいじめていた同級生が営む床屋にやって来た男が、同級生に復讐されるという内容である。かつての出来事を根に持った男の復讐譚である点は本作に似ている。(そう言えば、スタンリー・キューブリック監督の「時計じかけのオレンジ」もそのような物語である)また、同じ「真夜中のファイル」の中に「クリスマスの贈り物」という短編もある。こちらは、別れようとしている女からもらったクリスマス・プレゼントのネクタイを使って男がその女を絞殺するという内容である。贈り物というのは、人間にとって送り手の愛情を感じる嬉しいものもあるが、逆に憎悪に満ちたおぞましいものにもなりうる。本作はそのような皮肉な視点を持っている点がよい。穿(うが)ったことを言えば、人間が体験する喜びや悲しみも、希望も絶望も、すべて神が我々に与える贈り物=ギフトであると言うことができるのかもしれない。


※同作。(「映画.com」より)

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