日本って怖いな。 | 医療大麻解放戦線

日本って怖いな。

医学博士Jeffrey Y. Hergenrather

2009年8月20日
厳粛な敬意をもって日本の裁判所に本手紙を宛てます。1948年に米国陸軍マッカーサ
ー元帥とその従属関係者による日本の新憲法制定の時期と時を同じくして、日本におけ
る大麻の法的禁止がされてきた経緯は十分に理解しています。この頃より、日本国内で
の大麻利用の数千年の歴史が大麻取締法により終焉を迎えました。残念なことに、マッ
カーサー元帥による大麻禁止令は当時の情報欠陥に基づいていました。実際、アメリカ
合衆国内ではそれまで60年もの間、大麻による医療上の恩恵を受けていました。Park
Davis社、Eli Lilly社、Sharp and Dohme社、そしてWyeth社といった製薬会社はそれま
で様々な疾患に好適作用のあった処方箋大麻薬を製造していました。しかし、禁酒局副
長官を経て1930年8月12日に米国財務省直下組織の初代連邦麻薬局長官に任命された
Henry J. Anslinger氏は1937年、Hearst Newspaper Companyとの共謀により大麻草を「マ
リファナ」と命名し、その「マリファナ」による実在しない暴力事件や精神病とを関連
付けて汚名を着せました。その結果、米国医師会の反対の声を押し切って制定された切
手法(Stamp Act)により大麻の合法的入手が事実上不可能となりました。後にアメリ
カの麻薬取締局となった連邦麻薬局がそうしたのと同じように、日本においても第二次
大戦後に進駐軍により大麻にまつわる文化そのものが抑圧された結果、現在では多くの
日本人が「大麻」や「マリファナ」と、過去に文化的に重用され広く使われた「麻」が
同一のものであると知らずにいるのではないかと思います。
私が本法廷に書く手紙は、過去40年に及ぶ私が実施してきた大麻研究と、私が1970年
にブラウン大学医学部に入学する以前からなされてきた研究の英語論文に裏付けられて
いるものです。私は1970年にカリフォルニア大学バークレー校から文学士号を得て卒
業し、1975年にはブラウン大学医学部を卒業しました。1975年から1976年の間にサウ
スカロライナ州スパルタンブルグにあるサウスカロライナ大学での研修医を経て1976
年に一般診療医となりました。その翌年には、テネシー州の田舎町でこの小さなコミュ
ニティーと、隣接するアーミッシュの共同体コミュニティーに対して医療活動を実施す
る一般診療活動を開始しました。また、同時期にテネシー州中部のモーリー郡病院の地
方医療センターでの活動も実施してきました。その後5年間の医療活動において、当時
テネシー州家庭医協会の会長であったJohn O. Williams医学博士の指導を受けていまし
た。
私の医療活動の初期にあたる上記活動を記したのは、これがアメリカにとって重要な時
期であったからです。当時のニクソン政権下の1970年には規制薬物法が制定され、ア
メリカ国内での薬草大麻利用が禁止されました。しかしながら、当時私が生活をしてい
たテネシー州の田舎町では、この規制に関係なく、大麻は民間療法として広く使われて
いました。このような大麻を活用した民間療法が多く存在することを、私が診ていた患
者より聞きました。立場上私は彼らの大麻使用の影響や効果を観察することができ、こ
れにもとづいて大麻使用のリスクと恩恵を自ら考えることができました。
1982年には、老齢となった両親や親戚の近くで住めるように家族とともにカリフォル
ニア州に引っ越しました。そこでは1982年から2002年まで緊急救命医および一般診療
医としての活動を継続しました。1996年にはカリフォルニア州で「Compassionate Use
Act of 1996(特恵使用令/例外的使用許可令)」が可決され、カリフォルニア州住民に
よる大麻使用が許可されました。この法令により、重い疾患をもつ患者は医師の許可が
得られれば大麻を使用する機会が与えられました。この法令は、連邦政府による大麻使
用禁止にも関わらず住民投票による圧倒的過半数により州法として可決されました。こ
の時期より私は医師としての大麻に関する専門知識を、カリフォルニア州の法律の枠組
みの中で活用できるようになりました。それまでの緊急救命医から、重い疾患を持つ患
者の大麻使用に関する診療相談へと活動を変えました。
過去10年間、私はこのような重症患者の状態を評価し、大麻を利用しての治療を行っ
てまいりました。これは既存の医薬品による治療をしていないという意味ではなく、そ
れらの治療法と併用しているものです。連邦政府の行政機関からカリフォルニア州内で
このような活動を停止するよう求められているものの、下級裁判所はカリフォルニアの
医師が重症患者と自由に大麻による治療の可能性やその推奨を行って良いと判断をして
おり、合衆国最高裁判所はこの判断を支持する判決を下しました。
大麻を使用した診療相談活動を通して私の医学キャリアは、常に発展を続ける大麻医療
におけるカンナビノイド科学の知見を前進させています。私個人の継続的な活動におい
て薬草大麻が様々な疾患に有用であるという経験のほかにも、さらなる知見の拡大を目
指して複数の学会にも所属しています。私は現在、国際カンナビノイド研究学会
(ICRS)に所属しており、2002年より診療現場での大麻使用に関する論文を提出して
います。ICRSは科学的な学会であり、19年前よりカンナビノイド科学における最新発
見の発表を続けています。学会員は主に大学の研究員、米国の国立衛生研究所
(NIH)、国立薬物乱用研究所(NIDA)、そして日本を含む世界各国の製薬会社か
ら構成されています。年次総会では通常、世界25カ国から100~150程度の研究所員が
集い、カンナビノイド系の生理学、薬理学、そして病理学の観点で見られた発見を発表
しています。製薬会社の科学者たちの目的はおそらく、薬草大麻での効果が見られてい
る疾患に対して、薬草大麻にとってかわる西洋医学的な単一分子医薬品の開発にあると
思います。現在の米国では合成THC(テトラヒドロカンナビノール)しかなく、薬草
としての大麻を使用している患者の多くからは同程度の薬理効果が得られないとされて
います。
また、私はドイツに本拠地を置く国際カンナビス医薬協会(IACM)のメンバーでも
あります。2005年、オランダのレイデン大学で開かれた協会カンファレンスで私はク
ローン病における大麻の効果についての予備的研究結果を発表しました。ほかの多くの
医者との協同により、クローン病および潰瘍性大腸炎患者に関するより大きな研究が間
もなく完了する予定で、今年の後半に発表を予定しています。3つ目の所属団体は通称
「時間のない患者の会議(Patients Out of Time)」とも呼ばれている大麻治療学の国立
臨床会議(National Clinical Conference on Cannabis Therapeutics)です。この団体は米国
のカリフォルニアサンフランシスコ医科大学の主催により隔年での会議を開き、参加す
る医師や看護士への学術単位を与えています。2006年のこの会議においても、クロー
ン病に関する予備的研究の結果を発表しました。
人間の内在性カンナビノイド構造とそれに関連する医療用大麻の適用について医師を教
育するため、カリフォルニア大麻研究医療グループ(CCRMG)の創設メンバーとし
て関わり、現在は会長を勤めています。1999年に設立されたこの学会では、医師や医
療専門家と協同で臨床研究プロジェクトを実施しています。この医師会の一次的目標の
一つは、学校や病院でプレゼンテーションを行い医師や市民向けに医療現場での臨床的
大麻使用に関する最新の情報を提供することです。連邦政府が医療大麻の有用性を認識
することを拒んでいるため、医師や市民にとって、米国内で合法的に医薬品として大麻
を活用できる境界線を理解していただくために有効な活動となっています。数多くの医
師がCCRMGの会員となっており、カリフォルニア州内で重症な疾患を抱える70,000
人の患者に対して多くの疾患に対して大麻の有効利用を承認してきました。CCRMG会
員の医師のうち数名は、自ら診察しているクローン病患者を私の研究に参加させてくれ
ました。
現在、米国において医療目的での大麻使用が合法となっているのは13州であり、また、メ
リーランド州においては医学的必要性が認められた場合は法廷での弁護事由として認められ
ています。合法化されているのはカリフォルニア州、ハワイ州、アラスカ州、ワシントン州、
オレゴン州、ネバダ州、ニューメキシコ州、コロラド州、モンタナ州、ミシガン州、バーモ
ント州、メイン州、そしてロードアイランド州です。このいずれの州においても法改正によ
り使用と所持、それぞれ異なる数の大麻草の栽培、そして乾燥した大麻の雌株の花冠の所有
を認めています。いずれの州でも許可対象となる条件は若干異なりますが、5つの州ではク
ローン病が具体的許可事由と明記されています。他のいくつかの州では大麻の非犯罪化がな
されており、複数の州では大人による使用、又は医療目的での大麻使用に関する法令が審議
中となっています。
最初に大麻の医療使用を1996年11月6日に認めたのはカリフォルニア州でした。当時住民
投票にかけられた州法案は州法において、医師より「書面または口頭による推奨」により
「大麻の医療目的での使用が適切と見なされた」患者による大麻の使用、所持、そして栽培
の罰則を撤廃するというものでした。この法案により、衰弱を伴う疾患をもち、「医師より
大麻の使用が適切と見なされ推奨を受けた」患者は法的保護を受けるようになりました。こ
れら保護の対象となる疾患は限定されていないものの、代表的には関節炎、悪液質症候群、
癌、慢性的疼痛、HIVかAIDS、癲癇、片頭痛、そして多発性硬化症です。患者が所持また
は栽培できる上限量は法律で定められていないものの、2003年には議会でガイドラインは承
認されました。
次の医療用大麻合法化は、1998年11月3日のワシントン州です。この法令により法的保護
を受けた疾患は悪液質症候群、癌、HIVかAIDS、癲癇、緑内障、難治性の痛み(定義とし
ては従来の治療や治療薬により痛みの緩和ができないもの)、そして多発性硬化症です。
2008年11月2日より効力をもった別の法令では、患者による15株までの大麻草の栽培、そ
して24オンス(約680グラム)までの利用可能な大麻の所持が認められました。当局によ
り承諾されているよりも多い量の大麻を所持している患者であっても、その疾患の治療のた
めに必要であるという証明が得られる場合には同じく法の保護を受けられます。ワシントン
州議会法令 6032 号ではさらに、州の医療品質保証委員会の提案通り、認可される疾患にク
ローン病、C 型肝炎、そして「従来の医薬品や診療によって緩和が見られない場合の拒食症
を含む嘔吐や吐き気、消耗性疾患、食欲減退、筋けいれん、発作性疾患、痙縮または痙性」
を追加しました。
3番目に医療用大麻を許可したのは、1998 年 12 月 3 日のオレゴン州です。衰弱を伴う疾患
を「軽減させる可能性がある」ことを記した医師により署名された推奨書があれば、患者に
よる大麻の使用、所持および栽培に関する州法での刑法の対象外となりました。悪液質症候
群、癌、慢性的痛み、癲癇および発作をともなう疾患、緑内障、HIV か AIDS、多発性硬化
症および筋肉の痙攣を伴う疾患、および吐き気の具体的疾患と診断された患者も法的保護を
受けます。他の疾患はオレゴン州人材開発局の保健部による承認により許可されます。2006
年 1 月 1 日から効力をもったオレゴン州議会法令 1085 号においては、認可された患者が栽
培および所持できる大麻の量を、それまでの 7 株(うち、成長したもの最大 3 株)と 3 オン
ス(約 85 グラム)から、成長した大麻草 6 株と苗 18 株、そして利用可能な大麻 24 オンス
(約 680 グラム)に改訂されました。
4番目の医療大麻許可州となったのは 1999 年 3 月 4 日のアラスカ州です。法令により、患
者が医師からの「医療大麻の使用が有効である可能性がある」と示す書面を有していれば、
州法で大麻の使用、所持および栽培が罪になりません。この法令により、悪液質症候群、癌、
慢性の痛み、癲癇および発作のある疾患、緑内障、HIV か AIDS、多発性硬化症および筋け
いれんを伴う疾患、および嘔吐のある患者は法的保護を受けます。その他の症状に関しても
アラスカ州保健社会福祉局の承認をもって認められます。患者(又は主介護者)は 1 オンス
(約 28 グラム)を越えない量の使用可能な大麻と、成長した大麻草 3 株までを含む合計 6
株までの栽培が法的に認められています。
5番目に医療大麻を許可した州は、1999 年 12 月 22 日のメーン州です。この法律により「医
療大麻による恩恵の可能性がある」と医師より口頭または書面にて「専門家の意見」を得た
患者は大麻の使用、所持、および栽培が州法で認められるようになりました。癲癇および発
作のある疾患、緑内障、多発性硬化症および筋痙をともなう疾患、AIDS か癌の化学療法に
起因する嘔吐感や嘔吐のある患者は法の保護を受けられます。患者(又は主介護者)は 1.25
オンス(約 35 グラム)までの使用可能な大麻および成長した大麻 3 株までを含む合計 6 株
までの大麻草の栽培が認められます。
6番目に医療目的での大麻を許可したのは 2000 年 12 月 28 日のハワイ州です。この法律に
より、衰弱性のある疾患に苦しんでおり、「医療大麻の使用により受けられる潜在的効果が
健康被害を上回る」とした医師からの署名入り書面を有している患者による大麻の使用、所
持および栽培が州法で認められるようになりました。悪液質症、癌、慢性の痛み、クローン
病、癲癇および発作のある疾患、緑内障、HIV か AIDS、多発性硬化症および筋痙をともな
う疾患そして嘔吐感のある患者は法の保護を受けられます。その他の疾患はハワイ州保健局
の認可により認められる。患者(又は主介護者)は 3 オンス(約 85 グラム)までの使用可
能な大麻および成長した大麻 3 株までを含む合計 7 株までの大麻草の栽培が認められます。
7番目に医療目的での大麻を許可したのは 2001 年 6 月 1 日のコロラド州です。この法律に
より、衰弱性のある疾患に苦しんでおり、「医療目的での大麻使用による効果がある可能性
がある」とした医師からの書面を有している患者による大麻の使用、所持および栽培が州法
で認められるようになりました。(患者は、逮捕される以前にこの書面を有している必要が
あります。)悪液質症、癌、慢性の痛み、慢性的神経疾患、癲癇および発作のある疾患、緑
内障、HIV か AIDS、多発性硬化症および筋痙をともなう疾患そして嘔吐感のある患者は法
の保護を受けられます。その他の疾患はコロラド州衛生局の認可により認められる。患者
(又は主介護者)は 2 オンス(約 57 グラム)までの使用可能な大麻および 6 株までの大麻
草の栽培が認められます。
8番目に医療目的での大麻を許可したのはネバダ州です。この法律により、大麻の使用が症
状を緩和させる可能性がある患者で医師よりその旨の「書面」を有している患者による大麻
の使用、所持および栽培が州法で認められるようになりました。AIDS、癌、緑内障、悪液
質症を引き起こす全ての疾患、継続的な筋痙攣および発作および深刻な嘔吐感や痛みのある
患者は法の保護を受けられます。その他の疾患はネバダ州人材開発局保健部の認可により認
められる。患者(又は主介護者)は 1 オンス(約 28 グラム)までの使用可能な大麻および
成長した大麻 3 株までを含む合計 7 株までの大麻草の栽培が認められます。
9番目に医療目的での大麻を許可したのはメリーランド州。2003 年に可決されたメリーラン
ド州議会の法令は積極的抗弁法です。この法律により、被疑者の大麻使用が医療目的であっ
た場合、裁判所はそれを州の大麻関連訴追における軽減事由としなければいけません。被疑
者が逮捕後に、大麻が医学的に必要であったと証明できた場合、法律上の上限刑は 100 ドル
の罰金となります。
10 番目に医療目的での大麻を許可したのはバーモント州です。この法律により、「衰弱を伴
う疾患」と診断された患者による大麻の使用、所持および栽培が州法で認められるようにな
りました。HIV か AIDS、癌および多発性硬化症患者は法の保護を受けられます。患者(又
は主介護者)は 2 オンス(約 57 グラム)までの使用可能な大麻および成長した大麻 1 株ま
でを含む合計 3 株までの大麻草の栽培が認められます。その後 2007 年 7 月 1 日に可決され
た議会法案 7 号では、「衰弱を伴う疾患」の定義として「(A)疾患または症状の治療により
深刻かつ継続的な症状を有する次の疾病:癌、多発性硬化症、HIV 陽性、AIDS、または(B)
疾患、医学的条件、またはその治療によって慢性的、衰弱性で深刻かつ継続的な次の症状が
ある場合:悪液症または消耗性疾患、深刻な痛み、深刻な嘔吐感、または筋痙発作」が決定
しました。また、州法により患者が栽培可能な大麻草の数を生長した大麻1株までを含む合
計3株までだったものを生長した大麻2株までを含む合計7株までを上限と定めました。さ
らに議会法案 7 号により、近隣州で診療活動を行っている医師による、バーモント州に住む
患者への大麻使用の推奨を可能にしました。
11 番目に医療目的での大麻を許可したのは 2004 年 11 月 2 日のモンタナ州です。この法律に
より、医師より医療目的での大麻の使用を承認する書面を有する患者による大麻の使用、所
持および栽培が州法で認められるようになりました。悪液質症または消耗性疾患、深刻かつ
慢性的な痛み、深刻な嘔吐感、深刻または継続的な筋痙攣、癲癇を含む発作性の筋痙、多発
性硬化症とクローン病を含む筋痙攣のある患者は法の保護を受けられます。患者(又は主介
護者)は 6 株までの大麻草の栽培が認められます。
12 番目に医療目的での大麻を許可したのはロードアイランド州です。この法律により、「医
師としての診断として、患者が医療目的で大麻を使用することによる恩恵の可能性の方が、
その健康被害を上回る」と記された「証明書」を有している患者による大麻の使用、所持お
よび栽培が州法で認められるようになりました。悪液質症、癌、緑内障、C 型肝炎、深刻か
つ衰弱性のある慢性的な痛み、深刻な嘔吐感、癲癇を含む発作、多発性硬化症やクローン病
に見られる一連の筋痙攣、およびアルツハイマー病による動揺のある患者は法の保護を受け
られます。その他の疾患はロードアイランド州保健局の認可により認められる。患者(又は
主介護者)は 2.5 オンス(約 71 グラム)までの使用可能な大麻および 12 株までの大麻草の
栽培が認められますが、その保管は屋内でなければなりません。
13 番目に医療目的での大麻を許可したのはニューメキシコ州です。2007 年 10 月 1 日の法制
化により、ニューメキシコ州保健局は州により認可を受けた患者に対して医療用大麻の配布
をするための規則を公布すること、を義務付けられました。これらの規則により、州より免
許された「大麻製造施設」の創設、機密化された患者台帳の作成、および州により認可され
た大麻の流通システムを整備し、有資格患者が「必要とする大麻の十分な量の定義」をする
こととなりました。2009 年 1 月にはニューメキシコ州保健局により、州法に基づく医療用大
麻の製造、配布そして使用に関する規則が完成しました。深刻かつ慢性的な痛み、痛みを伴
う末梢神経障害、難治性の嘔吐および嘔吐感、深刻な食欲不振/悪液質症、抗ウィルス剤に
より治療中の C 型肝炎、クローン病、心的外傷後ストレス障害( PTSD )、筋萎縮性側索硬
化症(ルー・ゲーリッグ病)、癌、緑内障、多発性硬化症、脊髄損傷により起因する難治性
の痙攣、癲癇、HIV / AIDS およびホスピス患者で州保健局に登録された患者は本規則の保
護を受けられます。その他の疾患はニューメキシコ州保健局の認可により認められる。患者
は 6 オンス(約 170 グラム)まで(ただし、医師の許可があればそれ以上)の使用可能な大
麻および成長した大麻 4 株までを含む合計 16 株までの大麻草の栽培が認められます。
14 番目に医療目的での大麻を許可したのは 2008 年 12 月 4 日のミシガン州です。この法律に
より、大麻の使用を承認する医師からの書面を有している患者による大麻の使用、所持およ
び栽培が州法で認められるようになりました。癌、緑内障、HIV 陽性、AIDS、C 型肝炎、筋
萎縮性側索硬化症、クローン病、アルツハイマー病による動揺、爪・膝蓋骨症候群(関節炎
疾患)、およびその症状の治療を必要とする患者は法の保護を受けられます。また、悪液質
症、消耗性疾患、深刻かつ慢性的な痛み、深刻な嘔吐感、癲癇を含む類似した発作、および
多発性硬化症を含む継続的な筋痙攣をともなう慢性的または衰弱性の疾患をを1つ以上有し
ている患者も法の保護を受けられます。患者(又は主介護者)は 2.5 オンス(約 71 グラム)
までの使用可能な大麻、または鍵のかかった施設内における 12 株までの大麻草の栽培が認
められます。
特筆すべきことは、ハワイ州、モンタナ州、ロードアイランド州、ニューメキシコ州お
よびミシガン州では具体的にクローン病を大麻使用を認める指定疾患としていることで
す。カリフォルニア州では明示的にクローン病は指定されていないものの、「その他大
麻により症状の緩和が得られる疾患」の枠組みに含まれます。
私がカリフォルニア州で医療活動に従事し始めたころはまだ、大麻がクローン病に有効
であるということは知りませんでした。実際のクローン病患者から、大麻の利用が症状
改善に役立っていると聞いて初めて、この問題を調べるようになりました。カリフォル
ニア大麻研究医療グループ( CCRMG )のほかの会員医師に問い合わせたところ、1
日の排便回数の減少、炎症発生頻度と深刻度の抑制、既存医薬品の必要量の減少、およ
び患者の体重増加といったクローン病の様々な症状に効果があるとする患者の証言を得
ていたことを知りました。これにより、CCRMG の研究グループによる研究対象にクロ
ーン病が含まれることとなりました。
大麻を利用しているクローン病患者の効果検証をするため、34 問のクローン病アンケ
ートが作成されました。予備的研究では 10 名のクローン病患者と、別な腸疾患、具体
的には潰瘍性大腸炎患者 2 名によるアンケート結果から大麻使用の有無による症状変化
の対反応を調べました。質問項目の全てにおいて、全ての患者より大麻使用により痛み、
拒食症(食欲不振)、嘔吐感、嘔吐、疲労感、鬱っぽさおよび活発性において統計的に
重大な改善が見られたとの報告を得ました。また、質問された全ての患者は同時に、炎
症発生の頻度や重症度に対して、統計的に重大な改善が見られたとの回答も得ました。
上記に記した通り、既により多くのクローン病および潰瘍性大腸炎患者を対象とした研
究も実施されました。これらの研究による発見は数ヶ月以内に発表されます。
あまり緻密になりすぎない範囲で、大麻が人間の体とどう反応するかをご理解いただい
た方が薬草としての大麻の効果と安全性、そしてクローン病と一見すると異なる他の数
多くの疾患において大麻が有効であるという関連性を、科学的な概論にてご説明させて
いただきます。カンナビノイドの生物学は 20 年前に初めて確認された分野ですが、そ
の間に爆発的な知見の蓄積がなされています。
大麻草には 400 を超える化合物が含まれていますが、そのうちの約 70 がカンナビノイ
ドと呼ばれる大麻草固有の分子です。カンナビノイドは、人間の体の特定の場所にみら
れるカンナビノイド受容体と反応をします。これらカンナビノイド受容体というのは虫
を除く動物界の全ての生き物に見られるものです。カンナビノイド受容体と反応する体
内で自然に存在する分子を内在性カンナビノイドと呼びます。この受容体は内在性カン
ナビノイドはもちろん、大麻草に由来するカンナビノイド「植物性カンナビノイド」に
も反応します。この受容体は CB1 受容体と CB2 受容体に分類されています。CB1 受容
体は脳と神経細胞に存在しています。CB1 受容体は食欲、免疫機能、筋肉制御、痛み、
眼底圧、認知、嘔吐、神経興奮、報酬機制および体温調節を制御しています。一般的に
CB1 受容体のカンナビノイド活性化によってこれら自然な作用を下方抑制します。CB2
受容体は特に脾臓内の免疫機能および循環している白血球内にあります。CB2 受容体
のカンナビノイド活性化は免疫機能や細胞増殖、炎症と痛みを制御します。
内在性カンナビノイド系統はカンナビノイド薬学の発展により徐々にその機能が評価さ
れてきています。カンナビノイド受容体の特定により様々な作動因子と抑制因子(刺激
剤と抑制剤)の合成に寄与しています。これらの薬剤を利用することで研究者は近年、
カンナビノイドが痛みや食欲の調整、新生児における哺乳、そして記憶の複雑さに重大
な役割を果たしている可能性を発見しています。体内で自然に存在する内在性カンナビ
ノイド系統の研究に用いられているだけではなく、これらカンナビノイド受容体の作動
因子と抑制因子は新たな薬物療法の可能性もあるとして開発されてきています。現時点
ではドロナビノール(製品名 Marinol®)やナビローン(製品名 Cesamet®;合成カンナ
ビノイド)そして大麻がアメリカ国内で利用可能なカンナビノイド療法の選択肢です。
アメリカ国内での利用がまだ認められていないものの、植物全体抽出剤(Sativex®)は
THCとカンナビジオールを約50:50の比率で含有する非精神活性なカンナビノイド口腔
粘膜スプレーです。カナダでは既に認可されており、アメリカおよび他の国においても
後期臨床試験中です。単一分子合成薬剤を利用したことのある患者は常にその効果が天
然と大麻に劣り、また不快な副作用が存在すると報告しています。
カンナビノイド科学を勉強する医師たちにとって大麻を活用した療法は驚くようなこと
ではなく、クローン病における効果は評価されています。人間の腸壁にはCB1とCB2
の両方のカンナビノイド受容体が存在することは知られており、活性化されると痛み、
筋痙攣そして炎症を緩和し、治癒を促進します。クローン病においては、このカンナビ
ノイド受容体の自然な働きを薬草大麻をもって活用することで望ましい効果が得られま
す。
2005年8月号のGastroenterology(胃腸病学)という医学誌においてイギリス・バース
大学薬剤薬理学部のKaren Wright博士とその研究チームは、クローン病を患った患者の
胃腸内側細胞組織内に大量のカンナビノイド受容体が存在することを発表しています。
これら受容体の活性化をすることで胃腸細胞膜の治癒が促進されました。研究チームは
クローン病や潰瘍性腸炎患者といった炎症疾患への薬学的治療戦略として、これら受容
体の活性化をさらに促進させることで得られると結論付けています。筆頭著者のKaren
Wright氏は研究の結果について、これが「大麻由来の療法が将来的に有効な治療とな
ることを指した初の(臨床的)証拠となった」と書いています。
クローン病の治療は非常に困難なものであると認識されています。多くの場合、手術に
より病変で傷付いた組織を切除する必要があるが、すぐにまた違う箇所で再発します。
瘻孔(他の臓器へのトンネリング)、閉塞症、慢性感染症および出血といった合併症が
現われます。歴史的に見ると、クローン病患者の寿命は疾患および合併症により短くな
っています。現在使われる治療法には免疫系統を調整する薬剤(azathioprine、Imuran®,,
Azasan®、6 mercaptopurineおよびmethotrexate)や抗炎症剤(mesalamine、Asacol®、
Pentasa®、Rowasa®、Colazal®、Canasa®)、抗生物質(Flagyl®、Cipro®)ステロイド
剤(prednisone、Endocort®)および注射による炎症経路抑制剤(infliximab、etanercept、
Remicade®、Humira®、Enbrel®)が主な治療手段となっています。これら薬剤に加えて、
多くの患者ではさらに止痢薬(Imodium®、Lomotil®)や鎮痙剤(Bentyl®)による進行
管理をします。これら既存の薬剤を使わない患者は非常に稀な存在です。ほとんどの患
者では最低でも1種類を用いるが、大抵の場合では複数種類の薬剤を用います。
さらに、痛みや鬱、不安、不眠、食欲不振、筋肉の痙攣および下痢に対処するため、さ
らに付属する多くの薬剤を処方されます。これらの症状を緩和するためにはオピオイド
系鎮痛剤、睡眠薬、興奮剤、鎮静剤、抗菌剤および筋弛緩剤が使われます。クローン病
患者の場合、これら付属的な症状のほぼ全てが大麻のみで対処できます。
既存のクローン病療法の多くは高額でありながらも、その疾患の進行を十分に制御する
ことはできません。1日に複数回の投与、場合によっては浣腸剤や注射器による投与が
必要とされるなど不都合も多く、また、副作用による悪影響の種類も数多くあります。
既存の医薬品を日常的に使い続けている患者でも、多くの場合は頻繁な便通や痛みが原
因で1回あたり数時間しか自宅を離れることができず、移動も問題が生じます。多くの
場合、患者は既存の療法が単に効果がないと表現しています。
他の薬剤同様、大麻もまたクローン病患者の全員に有効ではない可能性もあります。し
かし大麻を治療に使っている患者の大多数では必要とする既存の医薬品の量も頻度も著
しく減少しており、また、多くの患者では常態的に大麻を利用すれば既存の医薬品を一
切必要としなくなります。患者からの報告によれば、大麻の喫煙または気化摂取による
1日1回の投与で多少の緩和が得られ、1日2~4回の投与が最適とされています。一
部の患者は大麻の経口摂取(チンキ剤、オイル、カプセル、お茶および焼き菓子)を試
していますが、即効性(約 5 分)や用量調整の容易さからほとんどの患者は喫煙または
気化による投与を好みます。大麻の用量測定は大麻の質、投与の方法や常用による耐性
により複雑です。予備的研究におけるクローン病患者の平均的用量は、乾燥し、整えら
れた大麻草の花冠を1日に2~3グラムでした。
大麻の喫煙に由来する問題は軽微な気管への刺激ですが、多くの場合は気化摂取するこ
とで改善できます。場合によっては大麻を経口摂取することで改善できます。もう一つ
の問題は社会的、経済的性質を有しています。患者は一般的に大麻の使用を隠し、雇用
主やコミュニティーに悟られないようにしています。2001 年の国内世論調査によりア
メリカ国民の 75%と、アメリカの医師の 75%が医療目的でアメリカ人が大麻を入手で
きるようにすべきだという結果が出ているにも関わらず、大麻の使用に関連した烙印が
残っています。この排他的な烙印は、連邦政府( ONDCP – 全米麻薬撲滅対策室)の十
分な資金援助により続いている、大麻の医学的有用性を認知しない反大麻キャンペーン
の流布に起因します。これらのキャンペーンは大麻の危険について著しく誤解させ偽情
報の流布をすると同時に、大麻研究により明らかとなった医学的有効性を一切無視して
います。国立薬物乱用研究所( NIDA )が資金援助する研究は全て大麻を乱用薬物とし
て捉えたものであり、医学的研究には一切援助をしていません。そして、有機的に栽培
された良質な大麻を妥当な金額で入手することは引き続き、大麻を医薬品目的に使用し
たいと思っている多くの患者にとって困難となっています。
国立医学研究所( IOM )では 1999 年に科学的根拠を検証した大麻と医薬( Marijuana
and Medicine )を出版しました。国立医学研究所では煙を使わない大麻の有効な摂取方
法の開発には「何年もかかることを認識しています。その間にも、喫煙によって症状が
緩和される、衰弱していく症状を持つ患者がいます。」と記しています。また、国立医
学研究所では大麻やカンナビノイドの生物学について以下の結論に至っています。カン
ナビノイドは非常に好適な医薬品安全性評価があります。オピオイド受容体と違い、カ
ンナビノイド受容体は呼吸を制御する脳幹部分には存在しないため、呼吸器抑制による
致命的な過量摂取は発生しません。動物実験の結果から推定される LD50 (被験者の
50%で死に至る用量)は 1,500 ポンド(約 680kg )を 15 分で喫煙した場合です。しかし
これは CO (一酸化炭素)中毒によるもので、カンナビノイドの過量摂取によるもので
はありません。
カリフォルニア州医療協会は 2004 年 7 月に発行した活動報告において医師の通達をし
ました。「委員会では現在、医師による患者への医療大麻の推奨が他の薬剤の処方や診
療の推奨と同程度の慎重さをもって行われた場合、医療委員会ではそれを他の医学的介
入と同様に取り扱います。他の薬剤の処方や診療の推奨を必要とする診療行為と同程度
の取り扱いが行われれば、医療委員会を恐れる必要はありません。」委員会では他の薬
剤を推奨する際に準拠される基準と同じように扱うことを推奨しています。医療経歴お
よび身体検査を記録すること。医療従事者は医療大麻の使用が急性または進行性の疾患
を遮蔽していないことを確認すること。治療計画が練られること。患者は、大麻の推奨
を受ける前に他の全ての既存医薬品を試す必然性はないこと。医師は推奨する使用量に
ついて多少のガイドラインを有すること。効果に関連する数多くの変数があるため、医
師と患者は、自己投与による用量調整により、耐えることのできる副作用の範囲内で最
大限の効果を模索することが望ましい。可能性のある副作用についての話し合いや、口
頭でのインフォームド・コンセントを得ることが望ましい。治療の効果を定期的に記録
すること。必要な場合は協議をすること。医療目的での大麻使用を推奨するにいたった
経緯を記録することが望ましい。しかし、これら全てのガイドラインに関わらず、カリ
フォルニア医学委員会では医師による書面での推奨は「連邦政府による介入の引き金に
なる可能性がある」ことを指摘する。
米国精神医学会では最近、医師による推奨のある患者による医療大麻使用の保護を訴え
る強い口調の声明を採択しました。しかし、米国精神医学会でも声明文で次のように繰
り返しています。「連邦捜査官による逮捕の危険性は、引き続き存在しています。これ
らの州に住み、医師からの医療大麻使用の推奨を受けた重篤な患者は慢性的な痛みや副
作用の緩和や疾患による症状の改善、現在の診療計画を実行しようとしただけで連邦政
府による刑事訴追の危険性に受けるべきではありません。我々は州により認められた大
麻政策に参加する患者と医師の保護を支持します。」これに続き、会員数 124,000 名の
米国内科学会( ACP )も大麻の医学的役割への研究を支持することと、医療大麻につ
いての相談に参加した医師と使用の可能性を模索する患者による相談の持ちかけに対す
る保護を促すとの立場表明をしました。
私は成田賢壱さんと 2009 年 5 月に初めて電話での診察をする機会があり、その後数回、
インターネットを介したビデオ会議をしました。その際に成田さんは病状に関する資料
のいくつか、とりわけカルテ、大腸内視鏡検査の写真と病理報告書を見せてくれました。
大腸内視鏡検査と生体組織検査は医学における道具です。大腸内視鏡検査は大腸および
小腸末梢を視覚化し、生体組織検査は顕微鏡検査のために少量の細胞組織を採取します。
病理報告書は組織サンプルの総合的観察と顕微鏡検査により作成されます。これが最終
的に、臨床歴と身体検査とあわせて診断の基礎となります。
私が医学部を卒業した 1975 年以来、「軽微な」クローン病の事例は一度も見たことが
ありません。現時点で成田さんは若く元気に見えるかも知れませんが、深刻な病気であ
ることに違いはありません。成田さんにとっては残念なことではありますが、彼がかか
えるクローン病の症状はこの先、一生続くものです。成田さんは私に、クローン病の合
併症である瘻孔があることを打ち明けてくれました。既存の医薬品のうちでも最新のも
のを試したものの、症状を緩和させるのに十分な効果は得られていないようです。多く
の場合、病気を治すことを期待するよりも進行を止めることの方が最良の結果をもたら
します。
成田賢壱さんの症状や医療記録はクローン病と完全一致しており、私はその診断を疑う
余地はありません。痛みの緩和、腹痛そして異常排便を抑える最良の方法が大麻だった
と成田さんから報告を受けています。今のところまだ試していない療法を試すことを思
いとどまらせることはしませんが、しかしながら、大麻の無害性、許容度、そして鎮痛、
抗炎症、鎮痙および免疫調整特性は別格です。憂鬱と言わざるを得ない状況に精神的安
定と希望を与えてくれるものです。私は彼の大麻使用を医学的見地から必要なものだと
思います。
成田賢壱さんおよび多くのクローン病患者はカンナビノイド療法により効果が得られる
症状を有しています。それ以上に、私は大麻による治療がこの病気に重大な改善をもた
らすことを観察してきました。彼は今、患者として、自らの病気に効果があり古来より
使われてきた薬草を、政府による禁止を前に使い続けるかどうかの選択を迫られていま
す。私は、クローン病に対する大麻の効果を理解しており、彼の政府および私の政府が
それを認めないとしても、医師として使用を推奨します。将来いずれ、カンナビノイド
系の医薬品が開発され、生薬を超える効果が得られる可能性はありますが、現時点にお
いてそうではありません。現時点での最良の治療法の少なくとも一部は、大麻草を利用
して痛みと苦しみを軽減することにあります。
ご理解と慈悲の心にお礼申し上げます。
法廷への意見陳情をご承諾いただき、ありがとうございました。
Jeffrey Hergenrather 医学博士



ああ、ほんとに死にたくなってきますね。