第二百九十一夜・ロミー・シュナイダー様・2 | 時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい

巡りあった美しい人達の記憶を重ねます・・・
B面ブログ「扉・鎧戸・宵の口」も始めました。

重要なのは愛すること


今日、一緒に食事をした友人が、ロミー様のお写真に、

「ロミー・シュナイダーが笑っていると辛い」と言いました。

かくも、「不幸」と連動しているとも言える、ロミー様の印象。


時は止まる君は美しい


女優さんなのだから、「素顔」を知る必要はないのですが、

実際はどのようなお方でらしたのか。

先般、嬉しいことに、何と、日本人の著書で出版された、

佐々木秀一様の「Romy Schneider ロミー

映画に愛された女_女優ロミー・シュナイダーの生涯」と、

ロミー様ご自身の日記(瀬川裕司様、訳)の中から、

色々な方のロミー様に関するお話し、

記録された、ご自身のお言葉を、抜粋させて頂きます。  


時は止まる君は美しい

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時は止まる君は美しい

「できるかぎり、仕事も続けていきたい。じっと止まっていてはならない。

先へ進まないといけないのだ。

一瞬立ち止まって考えるのは構わないが、

すぐにまた歩きださなければならない。(略)

年配の女性の役も引き受けるつもりだ。

大事なのは、どんな役かという事だ。

老女役でも、それがよいものなら喜んで受けるつもりである。

もし女優としてだめになる日が来れば、

私ははかり知れない孤独に襲われることになるのだろうか」_ロミー様 

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「ロミーはプレスや一般大衆にしてみれば、

成熟し開花した女性だろうが、実のところは全くそうじゃない。

そうではないし、今後も永久にそうじゃないだろう。

あれは生きながら皮を剥がされた人体標本さ」

「彼女の第三の生は、共犯者の生だ。私たちはそれを共有し、

また大切にしている。私たちは何かを交感することができる二重奏者で、

彼女と一緒だとカップルを構成しているという感じがしないんだ。

私たちは互いに、相手に変身することすらできる。

その証拠に、私たちは全部しまいまで話したためしがない」

_ミシェル・ピコリ様

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「ロミーとは生命力、それも動物的な生命力そのものである。

その表情は急激に変化し、この上なく獰猛な攻撃性から、

最も繊細な優しさに移行する。ロミーは日常性を越えた女優であり、

そのスケールは太陽級である」

「撮影では手を焼いたこともあったけど、それも最終的には

作品の肥やしになった。ロミーとモンタンには強い対抗心があったんだ。

両方とも目いっぱいの注目を要求してくるから、

二人の関係はぎくしゃくしていた。

でも対立場面の撮影になると、がぜん二人は絶好調になる。

まるで奇跡みたいに。(略)

カメラを前に罵り合うのが嬉しくてたまらないみたいだったよ」

_クロード・ソーテ監督

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「ロミーは生来、非現実的な部分をもった人で、

どこか捉えどころがない。

子供っぽいところがあり、それを自分でも保持したがっている。

だからその顔を見ると、深刻な苦悩に裏打ちされる形で

永遠の若さが残っている。ロミーは凡庸なものには興味がない」

_ディーノ・リージ監督

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(1961年、オーソン・ウェルズ監督作品「審判」に出演して)

「オーソン・ウェルズは監督として私の中から

新しい物を引き出してくれた。私は最初から最後まで

ノーメイクで通した。そのせいで必要以上に醜く見えてしまうことも

覚悟の上だった。おかげでスクリーンに映し出された自分を見ても、

最初はしばらく自分だとわからなかったほどだ_だが、

それは女優としての私にとって、深い満足感と、

自分が歩んできた道が正しかったという確信を与えてくれた。

私はレニーそのものだった。私は正しく演じたのだ!」_ロミー様  

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「私たちの関係は、とても美しく、とても純粋なものだった。

ロミー・シュナイダーは私と同年輩、

それまでの私が知っている女たちは、

十歳は年上だった。今度は話が違う。

これは、私の初めての熱愛だった。二十歳の恋。

その後の恋愛なんて、事情が全然違ってくる」_アラン・ドロン様

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「私の存在感のあり方を変えたのは三人。アラン、ヴィスコンティ、

それにココ・シャネルよ」_ロミー様

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時は止まる君は美しい-ボッカチオ


「『仕事中』のヒロインの「プーペ」という名は、ヴィスコンティが若い日に

破談した婚約者、オーストリアの公爵令嬢イルマの愛称である。

ヴィスコンティの末妹ウベルタによれば、1934年冬の、

生涯唯一のこの大恋愛のあとも、ヴィスコンティは

『ずっと彼女を慕いつづけて』いたらしいが、

この女性は、『体つきが、ロミー・シュナイダーにとても似て』いたという」

_佐々木秀一様

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「ヴィスコンティは『仕事中』の撮影台本の余白に、

ロミーのスケッチを描き残している。表情の異なった顔が四種、

ロミーの特徴的な額や眉間が強調された落書きである。

ヴィスコンティはいったい、何を考えていたのだろうか」

_同


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「ロミーのような存在になら、人は長いこと注意を集中できる。

編集でカットする必要も欲求もなかった。

ただ彼女を追跡しつづけていたかった」_ジャック・ドレー監督

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「自分を国際派スターだと思っているかって?(略)

かのローレンやヘップバーンのような人こそがその名に値するのだ。

なぜなら、アメリカで成功しないことには

「スター」とは言えないからである。

ドロンとは今はどうかって?

終わってしまった恋よりも寒々しいものはない」

_1969年3月17日ロミー様

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(葬儀にて)

「共演が噂されていたジェラール・ドパルデューも姿を見せた。

何者かへの怒りにかられた巨漢俳優は、

廊下の壁に何度か頭を叩きつけた。建物はそのたびに揺れた」

_佐々木秀一様

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1980年、9月28日パリ・オペラ座「ルードヴィッヒ」復元完全版上映時。

「ヴィスコンティは私にとって、大きな力そのものでした。

私は彼に夢中でしたが、当時の私はヴィスコンティもかれなりに

私を愛していたことを理解していませんでした。ヴィスコンティは

周知のとおり同性愛者でしたが、私はその点にこだわって、

好きだと言うのを遠慮していました。今では遅すぎますね」_ロミー様

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「ロミーが崩れ落ちそうになっているのに私は気づきました。

神経がぴりぴりしすぎて、参ってしまっている。

だから私は彼女の手を取り、階下のトイレに駆け込んで

閉じこもりました。彼女は私の肩にもたれて泣いた。ずっと長いこと。

それから彼女が化粧を直すのを手伝いました。

ホールに戻ると、彼女は気丈に堂々と振舞った_ルキノのために」

_同席していたクラウディア・カルデナーレ様

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「ようやく私は、エリザベートという人物に、

自分と無縁ではない特質を発見しているところだ。

だけど、臨もうが臨むまいが、払拭するのに

あれほど苦労したシシーの痕跡が、

その全ての重みをもって相変わらず私にのしかかってくる。

わがエリザベートを真実のものたらしめんとする私の演技に」_ロミー様

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「パート・イシュルで『ルードヴィッヒ』の撮影の開始。

私は初めてこの女性をきちんと演ずることができそうだ・・・。

このシシーという人物を史実のとおりに正しく描くのは

ヴィスコンティが最初である。

スムーズに撮影を終わらせて、三週間ぐらい愛馬ローラに乗って

このあたりを駈けまわりたい!」_1972年1月23日ロミー様

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「『ルードヴィッヒ』はロミー・シュナイダーの勝利である。

彼女をどれほど賞賛しても、賞賛し足りない」

_「ズュートドイチェ・ツァィトゥング」紙


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「君は、私が思い描いたとおりのエリザベートだよ、ロミーナ」

_ルキノ・ヴィスコンティ監督

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デビューされて間もない16歳頃の、日記の一節。

「何もかもが夢だったみたいだった。今、私はケルンの家にいる。  

楽しい事は何だって終わってしまうのも早い。

旅行だって、映画だってそうだ。

はっと気づくと目がさめてしまっていて、

何もかももとどおりになっているのだ。ただ、記録だけは残る。

そしてしばしば、そうした記憶こそが人生でもっとも美しいものと

なっているのではないだろうか」


時は止まる君は美しい

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なんと早熟な少女。その少女が駆け抜けた人生が「残した記録」

彼女が想像だにしなかった、女優としての未来、個人としての未来。

友人の言葉が哀しく響きます。同時に、フィルムに刻まれた、

数々の素晴らしい、演技。

今は、静かに眠るロミー様。万感の思いを込めて、感謝を。