第二百六十八夜・ルチア様 | 時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい

巡りあった美しい人達の記憶を重ねます・・・
B面ブログ「扉・鎧戸・宵の口」も始めました。

「何が望みか聞かれたら」


時は止まる君は美しい


先般の夜で、シャーロット・ランプリング様にご登場頂き、

1973年、リリアーナ・カヴァーニ監督作品「愛の嵐」の話しが、

当然ながら出ましたので。今宵は、それに関連して。

時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい


ランプリング様が演じられるのは、かつて少女時代、ナチスによって、

収容所に入れられていた「ルチア」。


時は止まる君は美しい


時は止まる君は美しい

今は、有名な指揮者の妻となったルチアが、

夫に同伴して訪れたウィーンで再会してしまうのが、

収容所の将校マクシミリアン(ダーク・ボガート様)。


時は止まる君は美しい


蘇る、倒錯した収容所での日々・・・と、

映画はあまりに有名な内容なので、今更、書く必要もない?


時は止まる君は美しい


あくまで、あの監督、あのキャストあって成り立った映画。  


時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい


時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい


周囲全ての人々にとって、迷惑でしかない「再会」。

時は止まる君は美しい

身を潜ませているナチス戦犯と、告発出来る立場の収容者との、

愛の道行の物語、普通なら、道徳的にコテンパンにされておかしくない。


時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい


時は止まる君は美しい


周囲から追い詰められ、食料も手に入れられなくなる中での、

禁断の世界。ジャムの瓶の底をこそげてむさぼる、

ランプリング様の妖艶さは、魔物のようでした。

時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい


♪男と女の間には深くて暗い川がある♪という歌がありましたが、

一緒に深い川に飛び込んでしまった男女の怖さ。

時は止まる君は美しい


時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい


「道行」とは、選んで進む道だから、悲劇的結末も幸福なのでしょう。

時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい


で、何故、つい先日から続けての「愛の嵐」かというと、

その中で、とてつもなく印象的な、ルチアが歌う歌について。

「何が望みかと聞かれたら」

映画での、多少変えてあるらしい歌詞から、原曲へ・・・

という訳詞がありましたので、まずそちらを。  


時は止まる君は美しい

私が愛するのは生きるため そうでなければ楽しむためよ


たまには本気で 愛することもあるわ

きっといい事が あるような気がして


何が欲しいと聞かれれば 分からないと答えるだけ

いいときもあれば 悪いときもあるから


何が欲しいと聞かれたら 小さな幸せとでも言っておく

だってもし幸せすぎたら 悲しい昔が恋しくなってしまうから


時は止まる君は美しい


誰も尋ねたりしなかった あの頃 私たちは何も考えていなかった

生きていたいのか それとも 生きていたくなんか無いのか


今 私は一人で歩いている 見知らぬ町の中を通り過ぎる

この町に 私は馴染んでいるのだろうか


時は止まる君は美しい


窓から私は眺める

扉や窓のガラスを透かして眺めている


そして私は待っている ずっと何かを待っている


時は止まる君は美しい


何が望みか聞かれても

きっと私は戸惑うばかり


時は止まる君は美しい


私は何を望むのだろう

楽しい日々なのか

つらい日々なのか


時は止まる君は美しい


何が望みか聞かれたら

少しだけ幸せになりたいと 答えよう


あまりに幸せすぎると

悲しい昔が恋しくなるから  


時は止まる君は美しい


この曲を、加藤登紀子様がカヴァーしておられる・・・

というのに、びっくりしてくださったお方がいらしたので、

真面目にレコードを探して、私も忘れていた事実にびっくり。

1920年代の曲を集めたアルバム。

プロデュース、アレンジは坂本・教授・龍一様でした。

そちらの訳詞は加藤登紀子様ご自身。


時は止まる君は美しい


「私が何か望んでいいとしたら」

~映画「愛の嵐」より~


何が欲しいのかと 聞かれたら困るわ

何を望めばいいの 幸せ 不幸せ

いつか幸せが おとずれたとしても

哀しい日々をきっとなつかしむに決まってる


あなたの悩みなんて

とるに足りない大げさなだけよ

望みが楽しいのは

それが満たされぬうちだけなのよ


時は止まる君は美しい


生まれて来る時も 聞いてくれなかった

生まれてみたいのか それともやめたいか

一人都会の中 歩いているときも

誰も尋ねはしない 都会が好きかどうか


部屋のあかりを見る

ドアごしに ガラスごしに

私は待っているの

ただ待ち続けるの何かを


時は止まる君は美しい


さすが、相当いい感じに訳されておられる。

しかし、ここにひとつ問題?が。「難破船」現象?

やるせなさが今ひとつ似合われないお方?

「難破船」も好きな歌ですが、普通、作られた方のほうが、

「さすがだなあ・・・」という事が多いのですけど、

加藤登紀子様の、揺るがない行き方が「難破」しそうにない。


時は止まる君は美しい


やはり、この御仁が、震えながら歌われるのがハマる曲?

もう、難破どころか、撃沈しそう。


時は止まる君は美しい


そして、今回調べた事で、全然知らなかった事実に驚愕しました。

この曲を、元々歌われておられたのが、

ナチスに徹底して服従せず、反ナチスを支持し続けた、

マレーネ・ディートリッヒ様だったということ。

時は止まる君は美しい


時は止まる君は美しい


「愛の嵐」のなかに密かに織り込まれた反戦なのか・・・


時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい


信念のディーバ。マレーネ・ディートリッヒ様。


時は止まる君は美しい


色々と考えさせられる、一曲への振りかえりの一夜でした。