第8回日経STOCKリーグ結果発表 学生vsサブプライム 勝者は!? | IR担当者のつぶやき

IR担当者のつぶやき

上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

2/29、日経STOCKリーグの結果が発表されています。


■日経STOCKリーグ

 http://manabow.com/sl/index.html


日経STOCKリーグは、日本経済新聞社が主催する中学・高校・大学生を対象としたバーチャルな株式投資コンテストです。

さらに、単にコンテストとして終わらせずに、株式投資にテーマ性を持たせて生徒たちに自主的に取り組ませることにより、現実の経済やポートフォリオ組成についての難しさなど、広く投資教育を促進することを目的にしているものです。


第8回になる今回は、中学・高校・大学あわせて2,113チーム、8,403人(前年は2,065チーム、8,193人)が参加しています。

前年2006年の結果のご紹介は、次のトピックをご参照ください。


■日経STOCKリーグ結果発表 - 個人投資家よ、学生に学べ

 http://ameblo.jp/ir-man/entry-10027748591.html


入賞校は以下のとおりです。みなさん、おめでとうございますクラッカー


それでは、2007年の入賞チームのポートフォリオを見てみましょう。

【最優秀賞】
筑波大学附属駒場高等学校2年
The company of Terrestrial resource

http://manabow.com/sl/result/8/pdf/801646.pdf

1924 パナホーム

3402 東レ

4004 昭和電工

4043 トクヤマ

4186 東京応化工業

4204 積水化学工業

5110 住友ゴム工業

5333 日本碍子

5486 日立金属

5714 DOWAホールディングス

6361 荏原製作所

6472 NTN

6674 ジーエス・ユアサ コーポレーション

6752 松下電気産業

6759 NEC トーキン

6841 横河電機

6995 東海理化電機製作所

7282 豊田合成

8015 豊田通商

8053 住友商事

<パフォーマンス>4,929,774→4,567,515(92.7%)1/11現在


当チームは、社会貢献につながるであろう①環境・エネルギー、②アジア・中国、③グローバル企業、④IT産業、⑤福祉・介護、⑥食品、⑦教育の7つの事業を行っている企業をピックアップして投資しています。
また、銘柄選定にあたっては、会社四季報や日経会社情報などから業績や、割安感、広告、会社の体制、社会的責任、技術力などを点数化して、客観的に評価したうえでポートフォリオを組んでいます。

12/2から運用開始していますが、年初からの日経平均の大幅な下げにも関わらず、7%程度のロスで済んでいるのは、銘柄選定の確かさもあるのではないでしょうか。



【部門賞】
武蔵中学校3年
企業の環境活動に意味はあるのか!? - 環境会計から考える、企業の環境活動の意味
http://manabow.com/sl/result/8/pdf/801285.pdf


6501 日立製作所
6502 東芝
6503 三菱電機
6702 富士通
6752 松下電器産業
6753 シャープ
6758 ソニー
6764 三洋電機
6773 パイオニア
7751 キヤノン
<パフォーマンス>4,632,216→4,629,828(99.9%)1/10時点


こちらも立派な成績です。環境問題に狙いを定め、かつ、業界としては環境意識が最も高いのが電機業界というターゲットで銘柄選定をしています。

個人的には、環境問題でポートフォリオを組むなら、電機業界オンリーではちょっと危ないのではないかと思いました。このときは、運用成績はたまたま横ばいですみましたが、ハイテクないし電機業界でどこかの会社が大幅下方修正を発表して全体にツレ安するとか、円高で逆風になるとか、影響を受ける時には全体的にヤラレになってしまう可能性が高くなるのではないかと感じました。



早稲田大学本庄高等学院1年
中国の環境をどげんかせんといかん!~日本企業の中国環境対策援助~
http://manabow.com/sl/result/8/pdf/801056.pdf


8002 丸紅
8058 三菱商事
5401 新日本製鐵
8031 三井物産
9501 東京電力
9502 中部電力
7203 トヨタ自動車
5007 コスモ石油
6361 荏原製作所
4204 積水化学工業
6856 堀場製作所
7752 リコー
6839 船井電機
6752 松下電器産業
4901 富士フィルムHD
2502 アサヒビール

<パフォーマンス>4,922,344→△約30万円


こちらのチームは、単に環境問題というだけではなく、日本企業で中国の環境問題の改善に役立っている企業をピックアップしようという意図がハッキリしており、着眼点がしっかりしています。とりわけ、中国の環境問題のうち、CO2排出、水質汚染、森林・草地の砂漠化、ごみ問題などにフォーカスしています。

パフォーマンスは残念な結果でしたが、経済大国となった中国の環境問題に絞ったテーマ設定は優れていると思いました。

中国の環境問題に対する貢献企業といえば、先日話を聞いたチャイナ・ボーチーも有力です。

日本での上場企業ということであれば、外国部の企業でもいいのかな?同時期のパフォーマンスを調べてみてはいかが?


■東証 The IR Day

 http://ameblo.jp/ir-man/entry-10075626324.html



一橋大学3年
カテゴリー・スタンダード ~世界に誇れるグローバルリーダーたれ~

http://manabow.com/sl/result/8/pdf/801474.pdf


2801 キッコーマン
3373 リンク・セオリーHD
4503 アステラス製薬
4523 エーザイ
4653 ダイオーズ
4971 メック
5013 ユシロ化学工業
6273 SMC
6418 日本金銭機械
6506 安川電機
6664 オプトエレクトロニクス
6727 ワコム
6789 ローランド・ディージー
6869 シスメックス
6885 ミヤチテクノス
7936 アシックス

<パフォーマンス>5,000,000→ -


本チームは、狭くても何らかのカテゴリーで世界標準であり、その標準が顧客満足を生み出しているような不動のカテゴリーを有する企業をテーマとしています。そして、そうした仮説に沿う企業を、海外での利益獲得、魅力度の定量的・定性的分析を行って、銘柄選別を進めています。

パフォーマンスが明らかでないのは残念ですが、本チームの仮説とその定量化の試みはなかなか素晴らしいし、図表を多用し説得力のある論文でした。


【敢闘賞】
鹿児島大学教育学部附属中学校2年
ひと粒の大豆から世界へ!大豆ひと粒見てみれば ~大豆関連企業に投資する~

http://manabow.com/sl/result/8/pdf/801276.pdf


2052 協同飼料
2267 ヤクルト
2801 キッコーマン
2811 カゴメ
6310 井関農機
8263 ダイエー
8267 イオン
8574 プロミス
9062 日本通運
9364 上組

<パフォーマンス>5,000,000→ -


身近な食品である大豆をテーマに、大豆を作る、運ぶ、使う、食べる、買うなどの場面別に、10銘柄を選び出しています。発想がとてもユニークです。

ただ、ポートフォリオ生成に関しては、10銘柄に単純平均で投資資金を振り向けていますので、もう少し工夫があればよかったかなと思われました。


秋田市立秋田商業高等学校3年
秋田活性化プロジェクト ~秋田に飽きたなんていわせない~

http://manabow.com/sl/result/8/pdf/801613.pdf


3385 薬王堂
2142 ユー・エス・ジェイ
4661 オリエンタルランド
4680 ラウンドワン
8233 高島屋
8252 丸井グループ
9671 よみうりランド
9681 東京ドーム
9708 帝国ホテル
1801 大成建設
1803 清水建設
1812 鹿島建設
1824 前田建設工業
1860 戸田建設
8905 イオンモール
9008 京王電鉄
9020 JR東日本
9045 京阪電気鉄道
9205 日本航空
7003 三井造船
<パフォーマンス>4,722,365→4,458,802(94.4%)1/9時点


秋田県の活性化をテーマに、サービス業37%、建設業24%、不動産5%、陸運19%、空運5%、輸送用機器5%、商業5%といったポートフォリオを組んでいます。地元にあったらいいなということでしょうか、USJやオリエンタルランド、ラウンドワンなど、アミューズメント銘柄を多く組入れています。

個人的な印象としては、ちょっと建設業銘柄が多すぎかな?という気がしました。商業施設系でいうとイオンモール(駅ナカビジネスでいえばJR東日本もそうかもしれません)くらいなので、もう少し商業・小売系を増やしてもよかったのかな、と思われます(多分ショッピングセンターなんて珍しくもないかもしれませんが・・・)。



中央大学2・4年
PATENT Revolution 2008 ~眠っていた特許が動き出す~

http://manabow.com/sl/result/8/pdf/801115.pdf


4061 電気化学工業
4542 三笠製薬
4554 富士製薬工業
4557 医学生物学研究所
4563 アンジェスMG
4972 綜研化学
4974 タカラバイオ
5105 東洋ゴム工業
6310 井関農機
6367 ダイキン工業
6501 日立製作所
6750 エレコム
6770 アルプス電気
6910 日立メディコ
6988 日東電工
7201 日産自動車
7248 カルソニックカンセイ
7751 キヤノン
8306 三菱UFJフィナンシャルグループ
8374 三重銀行

<パフォーマンス>4,750,351→ -


本チームのテーマは、特許の流動化と特許管理戦略です。ポートフォリオに大企業・中小企業・仲介企業を組入れ、それら企業の協業が促進されることで、特許流動化サイクルを活用した知的財産経営が促進されるという仮説のもと、銘柄選別をしています。

また、大企業・中小企業のうち既に特許を活用して収益を生み出している企業をモデル企業、有力な特許を保有しているがその活用方法に改善の余地がある企業を見込み企業としていますが、論文最後のパフォーマンス比較を見ますと、モデル企業は日経平均の崩落局面で大きくアウトパフォームしているのに対して、見込み企業はほぼ日経平均並みのパフォーマンスとなっており、彼らチームの仮説というかスクリーニングの確かさが光ります。同時に、論文なかほどの、日米欧各産業における特許出願件数の分析で、米欧が優っている産業と日本が優っている産業が分かりやすくグラフで示されており、なかなか参考になります。

すばらしい論文なのだから、モデル企業と見込み企業をあわせた総合パフォーマンスも恥ずかしがらずに明らかにしてほしかったなぁという印象です。



横浜市立大学2・3・4年
Let's 企業DNA鑑定!! ~次世代型経営インテグリティマネジメント企業を探し出せ~
http://manabow.com/sl/result/8/pdf/800058.pdf


4958 長谷川香料
4519 中外製薬
4547 キッセイ薬品工業
5191 東海ゴム工業
7701 島津製作所
9119 飯野海運
9508 九州電力
5195 バンドー化学
6652 IDEC
6727 ワコム
6005 三浦工業
6140 旭ダイヤモンド工業
6146 ディスコ
7476 アズワン
9843 ニトリ
2454 オールアバウト
4911 資生堂
4240 クラスターテクノロジー
2389 オプト

<パフォーマンス>5,000,000→ -


続発する企業不祥事を問題意識とし、善玉企業のDNAはどのようなものか、CSRやコンプライアンス経営をいかにポートフォリオに反映させるかに苦心されています。その結果、企業DNAを見据えた投資を行うことには、十分投資魅力があるということを、図表を多用してわかりやすく論証しようとしている姿勢が印象的でした。



大阪市立大学4年
人と技とが輝くまち大阪

http://manabow.com/sl/result/8/pdf/800143.pdf


6859 エスペック
4204 積水化学
6753 シャープ
6367 ダイキン工業
4502 武田
5186 ニッタ
4008 住友精化
7278 エクセディ
3101 東洋紡
6473 ジェイテクト
6277 ホソカワミクロン
8127 ヤマトインターナショナル
8087 フルサト工業
5659 日本精線
4202 ダイセル
6652 IDEC
5990 スーパーツール
5809 タツタ電線
3201 日本毛織
<パフォーマンス>5,000,000→ -


商業の町・大阪というだけでなく、モノ作りの町でもある、という点に着目して、大阪の製造業に対して投資するポートフォリオを構成しています。大阪府の総生産や卸・小売・サービス業との関係を分析したり、雇用の安定に着目したりと、多様な分析眼が優れています。また、実際に企業訪問して取材するなど、足を使った調査も行っていますし、大学生らしく超過利益モデルや割引キャッシュフローを計算したりと、なかなかアクティブです。



全般に、1月上旬までのところで論文を書かれていますので、年末・年始の日経平均の急落で、パフォーマンスを掲示するのがイヤになってしまったところが多かったのでしょうか。

せっかくみなさん苦労して作ったポートフォリオなのですから、良くも悪くも実際にどんな運用だったかを見せていただきたかったという思いを強くしました。仮に投資金額を下回っていたとしても、日経平均の騰落率よりも上回っていれば、パフォーマンスとしては優れているといえるわけですし。


また、井関農機など、へぇ~と思うような銘柄が複数のチームに選ばれていますので、もう一度調べてみるとおもしろいかもしれませんね。


さて、お楽しみのパフォーマンス賞


トップは、静岡県立富士高等学校の5,117,228円、上位5番目でも4,910,159円となかなかのものです。

パフォーマンス賞のポートフォリオも気になるところですね。


この日経STOCKリーグ、各チームの論文を丹念に読んでいくと、単純に流行りモノだけでない自分たちのオリジナリティがある着眼点とか分析力とかが評価されているように思われます。

バーチャル投資の手法を用いながら、実際に値動きのあるリアリティのある個別銘柄を選別しなければならないというルールですから、自分たちの仮説の検証にもなりますし、とても勉強になる催しだと思います。


興味を持たれた学生さんは、ぜひ2008年度の日経STOCKリーグにチャレンジしてみてください。

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