無借金なのに5期連続営業赤字&ゴーイング・コンサーン注記? | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

5/28の日経金融新聞で、驚きの会社を発見!


イトーヨーギョー(5287・大証2部)


無借金だが継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)の注記が付いてしまった」とうなだれるのはイトーヨーギョー(5287)の管家大幸常務。従来主力だったマンホール製品が公共事業の減少と下水道普及率の上昇でじり貧に。前期まで5期連続の営業赤字となった。とはいえ財務は健全で「会計士にも珍しいと言われた」ほど。
今期は収益の柱に育ちつつある道路関連事業の伸びで6期ぶり営業黒字を見込む。公共事業のパイは減る一方だが、道路脇に設置する縁石に排水機能をもたせた製品など「今までにない新機能の製品で生き延びたい」と早期のゴーイングコンサーン解消を誓っていた。


へぇ~~~っ!?


5期営業赤字で、ゴーイング・コンサーンの注記までついているのに、無借金経営なんてビックリ!!


さっそく調べてみました。


■イトーヨーギョーHP

 http://www.itoyogyo.co.jp/


■平成19年3月期 決算短信

 http://www.itoyogyo.co.jp/ir-information/1903ke190525.pdf


(ゴーイング・コンサーンの注記はP.17にあります)


貸借対照表(B/S)を見てみると、2006/3期は関係会社借入金が長・短あわせて9億7,500万円ほどありましたが、2007/3期は確かに有利子負債はゼロですねー。


内部留保はどうかな?


お、エライ!


2007/3期の株主資本は、36億6,200百万円、その他有価証券評価差額金も、しっかり6,000万円のプラス。


一方、2006/3期の資本合計は26億3,800百万円。


あれ?営業赤字じゃなかったっけ?


なのに、なぜ純資産が10億円も増えるの?


秘密は損益計算書(P/L)。


特別利益に、抱合せ株式消滅差益が12億2,000万円も計上されており、これで2007/3期は一気に最終黒字10億円になっています。


財務諸表の注記を見ると、企業結合関係の注記(P.32)がありまして、 完全子会社である恒菱株式会社と合併し、その際に抱合せ株式消滅差益が計上されているようです。


まぁ計算上の利益ですから意味はないのですが、キャッシュ・フロー計算書(P.15)を見てみると、営業キャッシュ・フローが△1,800万円、投資キャッシュ・フローが△3,100万円、財務キャッシュ・フローが+2,300万円で、正味、現金&現金同等物の減少を2,400万円にとどめているのは、立派でしょう。


しかも、前期・当期ともに10円配当を継続しています。


で、上の記事にもあるように、今期は事業計画の必達を誓い、売上高は33億円(43.5%増)、最終損益は3,000万円の黒転を目論んでいます。


公共工事の減少等、経営環境は厳しいかもしれませんが、財務諸表を見ていくだけでも、損益は見た目悪いけど、しっかり財務(ここではキャッシュの意)が廻っていれば、ゴーイング・コンサーンなんて何のその という格好の例ですね。


こういう会社を見ると、がんばれーっ!! と応援したくなります。



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