恐るべきパワー | *Yippee!* ~いっぴー的ナニワにっき

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大阪を中心に全国各地を旅して遊んで食べまくる日記 with 10年連れ添った相方M崎氏♪ たまにインド・パキスタンの話や妊活の話もしてます。

スラムドッグ$ミリオネア 』を観に行きました。
米アカデミー賞、8冠受賞の作品です。


~あらすじ~

スラム街出身のジャマールは、
ある思いを胸に『クイズ$ミリオネア』に出場。
数々の難問を次々とクリアしていき、
あと1問で番組最高金額の賞金2千万ルピー、
というところまでのぼり詰めた。

しかし、スラム出身という理由から不正を疑われ、
ジャマールは残り1問のところで逮捕されてしまう。
警察に拷問され問い詰められたジャマールは、
その真実を語り始めた。


-----〈以下より、若干ネタバレありなので注意〉-----






まず、最初の回想シーンで流れる音楽
「O...Saya」で、もう何もかも全てに
すっかり圧倒されてしまい、
映画開始10分ちょっとにして、
すでに泣いていた私しょぼん


…早っ!DASH!




いや、だってだって、
本当にすごくてさー…あせる

所狭しと息づくインドスラム街の光景。
複雑に入り組んだ路地を
縦横無尽に駆け抜ける無邪気な少年たち。
そこに、あの、疾走感溢れる曲が
スケール感たっぷりに流れ…。


な、何だコレは!ショック!


表現しようもないものすごい感情が
胸の中に込み上げてきて、
どうしたって涙を抑えられなかったビックリマーク

まさにその時、自分の目の前には、
リアルなインドの街がブワーっと広がったのです。
良くも悪くも、インドの恐ろしいパワーを
ひしひしと感じさせられた瞬間でもありましたキラキラ



ちなみに、最初のこのシーンだけじゃなく、
全編を通して、音楽がどれもすごかった!
この映画のよさの3分の1は
占めていると言ってもイイかも。

音楽監督は、インド映画音楽の巨匠、A.R.ラフマーン
かの有名な『ムトゥ踊るマハラジャ』の
音楽を手がけた人でもあります。
エキゾチックなインドのポップスも、
彼の手によってえらく洗練されて、
鮮烈な映画のエッセンスになってました音譜

(そうそう。途中、『DON』で流れてた
 「Aaj ki raat」のシーンを発見!
 テンションのあがるナンバーです
 ⇒『DON』のレビュー



この物語は、端的に言うと「ラブストーリー」。
幼い頃の初恋の女の子に再会する、という
悪く言えば、ごくごく普通の恋愛ドラマ。

しかし、これをただのラブストーリーじゃなくしてるのが、
ストーリーの軸となっている『クイズ$ミリオネア』。
出題されるクイズに沿って、1つ、また1つと、
ジャマールの過去が明らかになるという流れ。


彼ら(スラム街の子どもたち)は生きるために、
盗みをはたらき、その盗品を売りさばき、
巧みな嘘でお金も騙しとった。

私は、それらを知っていくたびに、
頭がひどく混乱していった。。
常識って一体何なんだろうか、と思い始める。

物乞いしたり手作りのものを売ったりして
お金を得る、というのはアリとしても、
普通に考えれば、彼らの行為は
とても卑劣で、罰せられるべきもの。

だけど、彼らは盗み自体が当たり前で、
むしろ、どこか楽しんですらいて…。

あれ、、これって一体何?
お仕事?遊んでるの?
それとも、誰かを貶めようとしているのか?


いちいちファンタジックで印象的な音楽とも相まり、
「生きるためなんだから悪いことじゃない」
「彼らはたくましく生きているんだ」という気持ちと、
「でもやられた方の身になってみろ」という気持ちが、
頭の中で混沌とし、善悪がごちゃまぜになっていった。

いや、彼らスラムドッグたちは、
そうしないと生きていくことができないんだ。
これを正当化することはしないけれども、
良からぬ考えの大人たちに、
生きる拠り所を求めるしかない状況。



この状況を見ていると、
自分が大学生のときに行ったパキスタンでの
ある出来事をふと思い起こした。
カラフルな髪留めを売り歩く少年のことを。


インドと同様、パキスタンにも、
物乞いの子どもたちはいっぱいいた。
日本人とわかるやいなや、即座に近寄ってくる。

「誰か1人に物を与えてしまうと、
次から次とキリがなくなるから」
という同行の先生の言葉に従い、
周りに寄ってくる子どもがいても、
見て見ぬふりをしてやり過ごした。
すごく心苦しい思いではあったけれども。

すると、そう言っていた先生が、
ある2人の少年から何かを買っていた。
少年たちは、女の子用の髪留めの売り子だった。

物売りならば、という思いで
先生は足を止められたのだろう。
いくらで買ったのかは、私ももう忘れてしまったけど、
彼らに紙幣を1枚、渡していたようだった。
少年2人は嬉しそうに立ち去っていった。

その後少ししてから、先生は、
「かわいそうなことをしてしまったな」とつぶやいた。

いわく、紙幣が1枚だけだったら、
元締めの大人にお金を回収されておしまい。
だけど、紙幣を2枚にして渡してあげてれば、
紙幣1枚は元締めに渡して、
もう1枚をこっそり自分たちのお小遣いにできたのに、と。

髪留め売りの少年2人が、
果たしてそういう境遇にあったのか、
今となっては知る由もないけれど、
少なからず、街中で物を売り、
わずかばかりの小銭を稼ぐことでしか、
日々の生活の糧を得られない状況であるのは
確かだった。(⇒パキスタン旅行記はコチラから



この映画では、そういう現実の子どもたちの状況が
当たり前のように描かれている。
悲惨さの比較など、意味もないし
到底できるものではないけれど、
もしかしたら私の見た子どもたち以上に
辛い状況かもしれないと思った。

こんな状況に、私は愕然としながらも、
そんな中でキラキラと強くたくましく
生きる彼らを目にし、ただただすごい、
としか言いようがなかった。

これこそがインドの本質なのか?
恐ろしいインドのパワーの巣窟なのだろうか?



ダニー・ボイル監督は、実際の撮影も
インドのスラム街で撮影を敢行したとのこと。
す、すごすぎDASH!


インド映画(いわゆるボリウッド映画)は
街中では撮らない。
何故かって、もちろん野次馬の
コントロールが大変だから。
通常は、広大なるボリウッドの撮影スタジオ内で
全て撮影されています。

そういうインドの常識を覆したこのボイル監督は
ホンマに普通じゃないことをやってしまったビックリマーク
(あ、ボイル監督にうまいこと引っ掛けてみました。。)

そりゃ、恐るべきインドの底力を
感じないわけがないのだ。


ラストはもしかして、内容が内容なだけに、
救いようもない終わり方するのかも
と思っていたら、だ、大丈夫でした。

これが果たして、終わり方として
良かったかどうかはさておきですが。


エンドロールでは、インド映画ならではのダンスシーンも音譜
ちょっと緊張の糸がほぐれたわ晴れ
俳優さんがほとんど若手の新人俳優だったから、
ダンスはちょっと拙かったけど、それが逆に◎グッド!
顔は涙で濡れていたけど、自然と笑顔になってしまったニコニコ



最後に、、
さっき「普通の恋愛ドラマ」と言ったけれど、
そんなものはそもそも存在していなくて、
普通じゃないから、こうして映画になってるのよね。

『ダイ・ハード』でブルース・ウィリスが死なないのも、
「何でコイツだけ運良く生き残れるねん!」
じゃなくて、あんな無茶苦茶な事件の中で
運良く生き残れた、という“普通じゃない”奴だったから、
アレが映画になっている。


『スラムドッグ$ミリオネア』も
同じようなことかと思います。

ジャマールは、あんな苦境の中でしか
生きざるを得なかったのに、
初恋の女の子に会うんだという希望を失わず、
ただひたすら懸命に生き抜いてきた。

そういう“普通じゃない”人生・出来事があったから、
映画の主人公たり得たに違いないのです。

だから、『クイズ$ミリオネア』という番組は
重要では歩けれど、単なるエッセンスでしかない。

彼だったからこそ、彼の人生があったからこそ、
このストーリーがとんでもない輝きと
恐るべきパワーで満ち溢れているのだと思います。